珍スポ巡って25年! 「珍寺」を極めた男が明かす「天啓が下った」瞬間と“5つの定義”/小嶋独観・珍寺大道場

文・写真=小嶋独観

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    日本全国の珍スポットを極めた小嶋独観の連載がいよいよスタート! 熱い想いとミステリーに満ちた施設や場所を続々紹介予定。まずは小嶋氏の来歴と基礎情報から学んでおこう!

      私はウェブサイト「珍寺大道場」を25年間運営している。日本全国、あるいはアジアの変わった社寺や宗教に付随する習俗、祭りなどを紹介している。元々は有名な社寺や仏像を巡っていた私が珍寺の道へと足を踏み入れた(踏み外した?)のにはいささか訳がある。少し長くなるが、聞いて下さい私の人生。

    神仏はもっとカッコ悪くてもイイんだ

     私は学生の頃から旅ばかりしていた。当時、建築や美術を学んでいたので日本中の建築物や神社仏閣、美術館、博物館、そんなところを手当たり次第に訪れていた。

     しかし、元々へそ曲がりな性格も手伝って有名観光地には行かなくなり、次第に風変わりなところにばかり赴くことになる。爺さんが独りで作った夢の楽園やこだわりが強すぎる特殊博物館等々。いまでこそ「珍スポット」という言葉で括られるが、当時はそれを表す一般的な呼称がなく、仲間内では単に「物件」と呼んでいた。

     私の周りにはそういった物件が大好きな連中がわんさかいたので、休み明けには狩りの成果を互いに報告し合った。軍艦島、九龍城、恐山…… 刺激的な場所での冒険譚を話し合い、その無茶さ加減を互いに笑い倒したものだった。

    小嶋独観『奉納百景』(駒草出版)

     そんな旅を続けていると、不思議な寺に出会う事が増えてくる。ガイドブックに出てこないような寺の中に、何とも形容し難い不思議なところが時々現れるのだ。住職の思い込みが強すぎて過剰な方向に思い切り舵を切ってしまったような寺に、結構な確率で出会う事になる。そんな寺に対して、最初は戸惑うばかりだった。

     ところが香港に行った際に、そのモヤモヤが一瞬で解消したのだ。それは今は無きタイガーバームガーデンという庭園を訪れた時の事だった。そこには、コンクリートで造られた人工洞窟の中に派手な仏像や神像などが所狭しと並んでいたのだ。

     それまで私は神社仏閣というものは荘厳で畏怖の念をもって接しなければならない、と頑なに信じていた。ところがそこにはカラフルで、キッチュで、フランクな神仏がいた。その時、天啓が下ったのだ。尊いばかりが神仏ではない、身近で下品な神仏があったって良いじゃないか。そう思えるようになったのである。

    小嶋独観

     そこで気付く。これまで勢いだけは凄いけど未熟でゆるいお寺や神社を数多く見てきたが、実はそれらの社寺には文化財としての価値はないが別の価値があったんだ、と。神仏はもっとカッコ悪くてもイイんだ、という事に気付いたのだ。

     いや、むしろ美術品の様な端正な仏像や社寺よりも不細工で完成度の低いものの中にこそ作り手の過剰な愛や前のめりな情熱が込められているはずだ、と確信したのである。そのような世間的にあまり認知されないような一風変わった寺社を「珍寺」と名付けて、それに特化した旅をするようになったのである。

    「珍寺」を定義する5つの概念

     さらに旅を続けていくうちに、自分で造った珍寺という概念は幾つかに分類されることに気付いた。

    1. 仏像が大きすぎる。つまり度を超えた巨大仏の事。
    2. 仏像が多過ぎる。同じ種類の仏像が延々と並んでいたりたくさんの種類の仏像が林立している。
    3. 装飾が派手すぎる。これは一般的な寺社彫刻だけでなく独自のペイント等も含む。
    4. 下手過ぎる神仏。思いが前のめり過ぎて技術が追いつかない仏像。
    5. 過剰すぎる習俗や奉納物。

     この5つが珍寺の主な特徴である。いずれも「やり過ぎ」なところが特徴だ。そこには現代社会における宗教のあり方の本質が隠されていると私は睨んでいる。

     まあ、堅苦しい話は抜きにして面白がっていただけたらオッケーです。私が若い頃、友達と話していた与太話をウェブ上で再現して読者諸氏と一緒に笑いあえたらこれ以上の喜びはないのである。

     さあ、深淵なる珍寺の世界へ出かけよう。

     私が取材してきた珍寺の中から「ベスト・オブ・珍寺25選」を、一日一件、紹介していく。お楽しみに。

    珍寺大道場

    小嶋独観「ベスト・オブ・珍寺25選」リンク集

    第1回 岩城修弘霊場(秋田県由利本荘市)
    第2回 橋場のばんば(福島県南会津郡檜枝岐村)
    第3回 高鍋大師(宮崎県高鍋町)
    第4回 石手寺(愛媛県松山市)
    第5回 伏見稲荷(京都市伏見区)
    第6回 金剛山(岩手県宮古市)
    第7回 犬の宮・猫の宮(形県東置賜郡高畠町)
    第8回 大国寺(鹿児島県枕崎市)
    第9回 賽の河原(青森県津軽地方)
    第10回 野芥縁切地蔵尊(福岡県福岡市)

    第11回 鎌八幡(和歌山県かつらぎ町)
    第12回 弓削神社(熊本県熊本市)
    第13回 松園観音(岩手県盛岡市)
    第14回 清水滝(熊本県南阿蘇村)
    第15回 中風寺奥の院(京都府美山町)

    小嶋独観

    ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
    珍寺大道場 http://chindera.com/

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