手首に「690452」と書いて寝るとパラレルワールドへ行ける!? 命がけの異世界チャレンジが欧米で再び流行中
欧米でブームを巻き起こしている、寝る前に自分の手首に「690452」という“謎の数字”を書き記すネットチャレンジ。一歩間違えれば命を落としかねない、危険な行為だった!?
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この国にはたくさんの〝ヌシ〟がいる──。 全国の巨樹を訪ね、拝していく旅で出会ったのは、偉大にして恐ろしく、想像を超えた「ちから」に満ち、存在の奇跡を思わせる驚異の御神木群だった。
目次
日本的な霊性のあり方を探る旅のなかで、筆者がたどりついたのが「木」だった。それも、尋常ではない存在感を放ち、われわれの精神の深いところを震わす「御神木」である。
今、巨樹が静かに、ときに熱烈に人人を惹きつけている。
そのことをまさに実感したのは、来宮神社(静岡県熱海市)の「大楠」を詣でたときだ。
当社は古来、「木の宮」とも呼ばれ、祭神イソタケルは、父神スサノオとともに樹木の種を手に天降り、各地に木を植えた神である。
社伝によれば、熱海の海で漁師の網に木像がかかり、童子の口を借りて「この地に波の音の聞こえない7体の楠の洞があるから、われをそこで祀れ」と命じたいう。
そんな由緒を伝える高台に鎮座する来宮神社は、近年、熱海の人気スポットの筆頭である。モダンなデザインの参集殿には、シティーホテルのフロントのような授与所があり、カフェも併設。そんななか、次々と引き寄せられた人々が本殿参拝もそこそこに向かう先は、境内奥の「大楠」である。
江戸・幕末の嘉永年間(1848~55年)、熱海村では漁業権をめぐる隣村との訴訟費用の捻出のために、境内7本のクスを伐ることになった。すでに5本が伐られ、残された大楠に 大鋸を当てようとしたところ、白髪の老人が忽然とあらわれ、両手を広げてこれを遮るや、大鋸が手元から折れてしまった。結果、いまある「大楠」と「第二大楠」が残されたという。「大楠」の参拝は、そのまわりに巡らされた歩道を一周するのが作法である。
「古くからそのまわりを一周廻る毎に一年間生き延びると伝えられ、廻った人は医者いらずといい、一名不老の楠とも呼ばれている」という。今日では、それが転じて「心に願いを秘めながら1周すると願い事が叶う」(公式HP)ともいわれている。
これを受け、ネットでは「大楠パワーでご利益倍増」、「 縁結びのパワースポット」といった言葉が躍っている。
類い稀な存在に秘めたるパワーを見出し、ご利益に結びつける信仰が発生するのはこの国特有の現象だが、巨樹がわれわれを惹きつける理由は、それ(ご利益)だけだっただろうか。
そうではあるまい。もとより日本人にとって、気の遠くなる時間をその身に刻みつつ、なおも生命を更新しつづけている〝存在の物凄さ〟を眼前で拝し、思わず手を合わせてしまうのは、ごく当たり前の反応なのである。
かつて国学の大人・本居宣長は、「カミ」についてこう述べている。
「尋常ならずすぐれたる徳(こと)のありて、可畏(かしこ)き物を迦微(かみ)とは云なり」
本居大人によれば、「すぐれたる」とは、尊き善きものばかりではなく、悪しき奇しきものも、世にすぐれて「可畏き(畏れ多い)」ものはすべてカミ(神)なのだという。
その大きさのみならず、尋常ではない容貌ゆえに畏れられ、崇められた樹木がある。その代表例が、「十二本ヤス」である。
その木は、青森県五所川原市のJR金木駅からクルマで20分ほどの場所にある。もし独りだったら、途中で不安になり引き返しただろう。そんな山道を進むと、道端に崩れかけた鳥居があり、〝参道〟を進むとほどなくして怪物がその姿をあらわした――。
「十二本ヤス」のヤスとは魚を突く漁具のことで、分岐した枝がそれに似ていることから名づけられたらしい。
確かに、幹の途中から突然変異に見舞われたように枝を多数分岐させ、それぞれ天を突いている。鳥居の裏側にまわってみると、ゴツゴツとした突起は地上から生えた神の手の関節のようでもあり、根元の洞(うろ)は化け物が大口を開けているようにも見える。
こんな話が伝わっている。
「その昔、弥七郎という臆病者の若者がいた。山に入るたびに怖気づいていたため、山の魔物まで彼の名前を覚えてしまった。腹を立てた弥七郎は、魔物にひと泡吹かせようとマサカリを手に山に入った。すると夜も更けたころ『弥七郎、弥七郎』と呼ぶ声がした。弥七郎は声のするほうへマサカリを一撃すると、『ギャーッ』という悲鳴が聞こえ、魔物が転げ落ちてきた。それは白い毛の大きな老猿だった。村人らは大猿の祟りを恐れ、ヒバの若木を植えて供養した」
「その木は生長すると12本の枝を直立させる異様な姿となった。新しい枝が出ても代わりに古い枝が枯れて、12本以上になることがないという」
12の数字は、12か月や十二支といった暦のサイクルを想起させるが、実は山の神のキーナンバーでもある。その祭礼は12にまつわる日が選ばれ(12月12日や1月12日など)、この日に山にはいるのはタブーとされる。
このため、ぴったり12本の枝をキープする「十二本ヤス」は、山の神そのものとして祀られた。その異形はすなわち畏るべき神の神威のあらわれとして認識され、崇められたのである。
その存在そのものが奇跡であると思しき木もある。たとえば、千葉県勝浦市の高照寺の「乳公孫樹」である。
敷地の大部分が墓石で占められている境内の奥に、まるで巨大なモップのような木の塊が墓地を覆っていた。樹高は10メートルほどといい、V字形に分岐した主幹らしきものも確認できるが、それより何より、北東側と西側、横に横に伸びている大枝の存在感が尋常ではないのだ。
墓石の間を抜けて木に近づいてみると、大枝のひとつは大人の背丈を超えない高さに横たわり、石の柱に支えられていた。それを潜りながら奥へ進み、無数の「乳」が垂れ下がっているさまを拝観する。
大小の乳房状、あるいは巨大なつらら状……その数は100以上という。まるで鍾乳洞の内部の中に入りこんでしまったような景観だ。
こんな伝説がある。
「何度も台風に遭い、洪水にも襲われ、ひと粒の米も採れなかったある年、乳も出なくなったおよねは、乳飲み子を抱えて海に身投げしようと歩いていた。それが高照寺の和尚の目に留まり、和尚はおよねを本堂に上げ、お経をあげると、およねのおっぱいが重く膨らみ
だした……」
その和尚の墓のそばに植えられたのがこのイチョウで、やがて「この〝乳〟に触ると、母乳の出がよくなると噂されるようになった」という。
実は、イチョウの乳根に由来する〝乳イチョウ信仰〟は全国で見られるのだが、この木は別格の存在感である。
存在の奇跡を思わせる木はほかにもある。大阪府八尾市・玉祖神社のクスノキは、その根元から石棒が〝成り出た〟ような奇態であり、熊本県小国町の「水源の大ケヤキ」は、末広がりの幹の真下から清らかな水をこんこんと湧き出している。
もちろん、自然現象としてはそれなりの合理的科学的な説明が可能かもしれない。しかし、その場にそのような木が存在することに、何らかの意味を見出したくなるのがわれわれ日本人の思考回路である。
その結果、奇跡の場は聖別され、信仰的景観が生まれた。
われわれは神木と呼ばれる木に、究極の生命のありようを見、内に潜む「ちから」を発見し、過去と未来をつなぐ証を見出してきた。そして、カミもホトケもその内に見てきた。
そのような存在がこの国にはたくさん残されている。それはとても素敵なことだと筆者は思う。
<引用>
「神木探偵 神宿る木の秘密」 本田不二雄 著 https://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=149613889
本田不二雄
ノンフィクションライター、神仏探偵あるいは神木探偵の異名でも知られる。神社や仏像など、日本の神仏世界の魅力を伝える書籍・雑誌の編集制作に携わる。
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