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格差が固定される資本主義社会を変えるのは、ウイルスだった!? 思考実験を孕んだパンデミック映画が公開!
富裕層だけが感染して死に至る謎のウイルスのパンデミックが突如起こったら、世界はどうなってしまうのか? そんな驚きの設定で、資本主義社会が一気に崩壊していく様をリアルに描いた映画が公開される。2019年に格差社会を鋭く風刺したSFスリラー『プラットフォーム』で監督デビューし、一躍脚光を浴びたスペイン出身のガルデル・ガステル=ウルティア監督の新作『億万長者の不都合な終末』だ。
Netflixのような大手ストリーミング・プラットフォームの重役プロデューサーであるローラは、家庭を顧みず、自身のキャリアにすべてを捧げてきた。しかし、夢だった成功を手にしようとした矢先、裕福な人々が感染して命を落とす奇病「リッチフルエンザ」が発生し、この世界は瞬く間にカオスへと陥る。ローラは、別れて暮らす愛娘を救おうと、空港が閉鎖されたなか、秘書が手配したチャーター・ヘリでロンドンから故郷のスペインへ向かう……。
公開を前に、急遽ズームインタビューに応じてくれたウルティア監督に、まずは「リッチフルエンザ」のアイデアについて聞いた。
──億万長者のみが感染して命を落とすウイルスが蔓延する物語を思いついたきっかけは、やはり2020年に世界を震撼させた新型コロナウイルスですか?
ウルティア監督 じつは、コロナ渦が始まる前、2019年に脚本を書きはじめていました。私は、幸運なことに、仲間に非常に優秀な脚本家たちがいます。そのうちのひとり、ダビド・デソーラが、世界でもっとも裕福で権力を持つ者だけを襲うウイルスが発生するというアイデアを持ってきました。同じころ私は、逆移民、今まで差別されたことがないグローバル・ノースの豊かな人たちが移民せざるを得なくなる状況に陥るという話を考えていました。このふたつのアイデアを合わせて脚本のラフを書き、もう一人の脚本家のペドロ・リベラにも協力してもらい、最終稿が完成しました。
──では、脚本を仕上げていく最中にコロナ渦が始まったのですね。
ウルティア監督 そうです。ロックダウン中は、とても現実離れした不思議な感覚を味わいました。自宅にいながら、リモートでみなと打ち合わせをして脚本に書いたことが、翌日には現実世界で起きているんです。もちろん、私たちは、そこから多くを学びました。人々があのような状況でどんな反応を示すのかを実際に見たことで、脚本の多くの部分を調整していきました。

──映画は、リッチになることを目的にしていた女性ローラの視線で、混乱していく世界を巧みに見せていきます。周囲のただならぬ雰囲気に焦るローラは、スマホでチェックするニュースの断片と警察の動きなどから世界規模で起こっている異変を知ります。それは自然にコロナ渦当初の各国の状況を思い出させ、じつに臨場感がありました。
ウルティア監督 でも、根本は変わっていません。私にとって、この映画のアイデアの出発点は、現代社会では、富を持つ者はさまざまな災難から逃れられるという事実です。ウイルスであれ、天災であれ、お金を持っている人たちは、いつも受ける被害を一般の人たちよりかなり少なくすることができる。これが、もし、お金を持っていることが“悪“となってしまったら、世界はどうなるのか? そういう実験を、この映画で試みたのです。

──それにしても、一気に世界は混沌として驚かされます。そんなにも現代社会はもろいものなんでしょうか?
ウルティア監督 誰もが、もうお金はいらないと思うようになったら、資本主義経済は崩壊します。リッチフルエンザに感染したくない富裕層は、まず、放棄できる財産を処分しようとしますが、誰もそれを得ようとはしません。そして、金持ちも貧しい人も関係なく、世界中の人たちが働かなくなってしまうでしょう。なぜなら、今ほど人類がエゴイストになっている時代は、これまでになかったからです。人類はもともと、みな多少なりともエゴイストなので発展し、資本主義が生まれました。この映画は資本主義を批判していると言われますが、その資本主義だって人類が作ったものなんです。自分たちがエゴイストで、もっと欲しいと思うから、資本主義が生まれた。それを認めたうえで「じゃあ、こうなったときにはどうするのか?」という問いかけをしたかったのです。


──その一方、どれくらいの金持ちが感染するのか、感染後の潜伏期間はどれくらいかなど、ウイルスについての詳細は最後まで示されない。その狙いを教えてください。
ウルティア監督 私は、そういうことはまったく考えませんでした。おそらく、世界の全人口の1パーセントの超富裕層が次々と亡くなっていくと、その下の99パーセントの人々は、大金持ちの嫌な奴らがいなくなったと喜ぶでしょう。ですが、その1パーセントがいなくなったら、世界でもっとも富める者たちは次の階層に落ちてくるわけです。すると、ウイルスも感染範囲を変えるかもしれません。問題は、自分は相対的にどれくらい金持ちなのか、ということです。それとともに、富や財産というものの価値や意味を再考してほしいのです。
──さて、ローラと夫、娘、そしてローラの母の4人は、ローラが金持ちであることを理由に、実家がある町を追い出されてしまう。こうして4人は、アフリカに住むローラの母の友人の元へ行こうと決意し、小型の船で旅立ちます。4人は移民になったわけですね。
ウルティア監督 そうです。ローラたちは逆移民になるんです。今、世界中に、反移民の潮流があると思います。日本にもおそらく、欧米と同じように移民排斥の傾向があるのではないでしょうか? 私は、それが非常に不公正だと思っています。この社会でもっともひどいことは、人種差別とともに、先進国の人々が、自国の問題を、政府のせいではなく移民のせいに転嫁することです。生まれた国で生きていけないから、やむなく出てきた人たちを、政府が受け入れを決めたにもかかわらず、その国に生まれた一般大衆が排斥する。弱者が弱者を攻撃するという形になっていることが、一番の問題だと思います。今まで差別されたこともない豊かな国の人たちが、価値が逆転して自分たちが国を出ないといけなくなった。この映画を観て、ローラたちとともに、移民が訪れた国々で受ける仕打ちや苦難の数々を体験し、移民問題をきちんと考えてくれれば幸いです。


ガルデル・ガステル=ウルティア監督
1974年1月30日、スペイン生まれ。2019年に発表した監督デビュー作『プラットフォーム』でトロント国際映画祭の「ミッドナイト・マッドネス部門」観客賞を受賞。また、シッチェス映画祭では最優秀作品賞、観客賞ほか計4部門で受賞するなど、世界中のジャンル系映画祭で高い評価を得る。作品に惚れ込んだNetflixが、北米をはじめ各国の配信権を獲得すると、その独創的な世界観と鋭い社会風刺で話題となり、非英語圏の作品では歴代2位の視聴者数を記録した。続く『プラットフォーム2』はNetflixが製作し、2024年10月に全世界で配信リリースされた。


映画『億万長者の不都合な真実』
6月19日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:シンカ
https://synca.jp/richflu/
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