アイルランド版“因習村”! ケルト神話と融合したホラー映画「FRÉWAKA/フレワカ」が描く北の異界
アイルランドの民間伝承とケルト神話、そして国家が抱えてきた歴史の影を融合させ、異界が日常に滲み出す瞬間を描く映画「FRÉWAKA/フレワカ」。アイルランド版“因習村”とも言える、美しい悪夢のフォークホ
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7月より放送がスタートしたアニメ『令和のダラさん』。おそろしい姿と凄惨な過去をもつ異形の“祟り神”をとりまく物語……なのだが、そこには読者を考察沼に引き入れる巧妙な仕掛けが張り巡らされていた!?
目次
とある片田舎の、豊かな山。
その山の奥には厳重に立ち入りが禁じられた一角があり、ひとつの祠が祀られている。
祠を取り囲む「禁足地」にうごめくのは、6本の腕と女の上半身、蛇の下半身をもつ異形のナニか。山が集中豪雨に襲われ土砂災害で祠が崩壊してしまったその夜から、すべては始まった……。
六臂蛇身の異形の祟り神・屋跨斑(ヤマタギマダラ)の復活と、そのおぞましき過去の出生譚が描かれるマンガ『令和のダラさん』がアニメ化された。
祠の破壊から始まる邪神の物語とくれば、これは一世を風靡した因習ホラー––––と思いきや、どうも様子がおかしい。原作愛読者はもちろんご存じだろうが、この作品、怖いのに笑えるのである。さらに、屋跨斑をめぐるおぞましき過去の物語は当然フィクションであるにもかかわらず、なぜか生々しいリアリティを感じずにいられないのだ。


あらためて『令和のダラさん』のあらすじをまとめると、物語は数百年のあいだ山の祠に祀られ恐れられていた“邪神”屋跨斑の復活からはじまる。
この山に住み、代々祠を管理してきた三十木谷(みそぎや)家にうまれた日向(ひなた)、薫(かおる)のきょうだいは、祠の崩壊によって現代に姿を現した屋跨斑に遭遇してしまう。
身内に裏切られむごたらしい殺され方をした巫女と、一帯の山のヌシであった大蛇が禁呪により融合し誕生した祟り神・屋跨斑。「見れば障り 穢せば祟る」というおぞましき怪異にでくわしてしまった因縁の子供たち、ときたらどう考えても因習的猟奇ホラーの導入だが、三十木谷きょうだいは異形を少しもおそれることのない胆力(鈍感力?)を発揮し、「山田さん」「ダラさん」とニックネームでよぶほど仲良くなっていくのだ。
原作者のともつか治臣氏は「『令和のダラさん』はストーリー漫画じゃなくギャグ漫画です!」と語るが、オカルト部分はギャグに負けない強烈なインパクトを放っている。
「ダラさん」のオカルトパートは、もっぱら祟り神「屋跨斑」誕生にまつわる過去編が担っている。
邪神、あるいは邪霊たる屋跨斑が誕生したのは、中世(平安後期〜戦国期)のとある山間地域。人里に災いをもたらす巨大な大蛇を退治するべく現地を訪れた双子の巫女姉妹とその父母、そして山里の村人たちの思惑が陰湿にからみあう凄惨な物語が展開される。その物語は、本当にどこかの地域で言い伝えられていた話なのではないか、恐ろしい口伝がどこかに残っていたのではないのか……と思わされるような不気味なリアリティを帯びているのである。
ダラさんに散りばめられたオカルト的な要素に「元ネタ」はあるのか? 散りばめられた民俗学的コードの意図は? 原作者・ともつか治臣氏にじっくりと話をきかせてもらった。


ムー編集部:『令和のダラさん』にはムー的にもとても興味深くみえる深い設定がたくさんうかがえます。
まず屋跨斑、ダラさんの素体となった巫女は人間時代には双子だったという設定です。そしてもう一方の主人公である三十木谷きょうだいも、姉の日向はボーイッシュ、逆に弟の薫は一見女の子のよう。「とりかえばや」のような男女逆転設定が施されています。さらにいえばふたりの父はオーストラリア人。日本と外国、いわばウチとソトというふたつのルーツをもつ設定です。
『令和のダラさん』には、ダブル、鏡像、反転……といった意味深な設定が幾重にもちりばめられていますね。これはやはり民俗学的なモチーフであり、なにかのちのちの大きな伏線につながるものなんでしょうか?

ともつか治臣:いやー、実はこのふたりの設定は、単純にその場でウケればいいや!ということでつくったものなんですよ。
というのも、「ダラさん」はもともとは商業連載ではなく、個人ではじめた短編ショート漫画だったんです。短編漫画はインパクト勝負。インパクトといえばギャップ、ギャップがあってみんなが好きなものといえば……「おとこの娘」だろ! ということで生まれたのが薫でした。まあみんなというか自分が好きだったんですが(笑)。で、じゃあお姉ちゃんはその逆張りで男の子みたいな女の子にしよう、となったのが日向です。

ムー編集部:そんな経緯だったんですか? ものすごく深い意味づけがされているのかと考察してしまいました……。では、三十木谷一族をはじめ、屋跨斑に関わるキャラクターたちはみな苗字に「十」がついていますよね。「十」は過去編の重要人物である十太郎にも関わっています。「十」「バツ」といえば屋跨斑を封じる、あるいは弔うという意味で十字架が隠喩されているんでしょうか。あるいはもしかしたら、この先の展開で隠れキリシタンや外来のエクソシストが関わってくる……?


ともつか治臣:これはもともと「三十木谷」という苗字を主人公の名前に使おうと思ったんです。じゃあその祖先のキャラクターは三十木谷から「十」をとって十太郎にしようと。最初はただそれだけだったんですが、その後いろんなキャラがでてくるなかで、全員苗字に十を入れていったら面白いかもな、と。それで平尋神社の宮司一族には「二十尋」、東の山の地主一族は「十御田」などとつけていきました。けっこういきあたりばったりですね(笑)。
ムー編集部:じゃあ「十」もわりと流れというか、思いつきで……。
では物語の重要な舞台について。「東の山、西の山」の正式名は酉貴山と卯駒山とされています。これは信貴山と生駒山ですよね。とすると村のモデルは奈良県の生駒山地と矢田丘陵にはさまれた平群谷あたりになるはずです。信貴山、生駒山は修験霊場として知られる霊山で、かつ生駒地域は今も拝み屋などの民間宗教が根強く残る地域として知られます。さらに矢田丘陵をこえた北東にはあの富雄丸山古墳がある。世紀の大発見として報道された、4世紀の巨大蛇行剣が眠っていた古墳です。
巫女と大蛇が融合した屋跨斑の出生譚を描くのに、こんなマジカルで最適な土地はないようにも思います。

ともつか治臣:実は……僕があの辺の生まれなんですよ。母がこのあたりのお寺の家系で、僕も王寺町っていう信貴山のふもとにある街の小学校に通っていました。それで「ダラさん」の設定を考える時に、あまり片田舎すぎても困るけれど、広すぎても困る。どうしようかなと思ったときに、信貴山と生駒山のふもと一帯をぎゅっと凝縮して応神町という架空の町をつくったんです。
本物の信貴山生駒山は大きすぎるので、あれを何分の一かに小さくしたのが酉貴山と卯駒山というイメージです。これは読者さんのなかにも察知して「聖地巡礼」してくれる方もいるみたいですね。

ムー編集部:マジカルな意味合いでなく、本当にご自身にゆかりのある土地だったんですね。舞台にリアリティがある理由がわかりました。
ともつか治臣:作中に登場する神社とお寺も実際のモデルがあります。あと三十木谷という苗字についても、東の山に禊をする谷があってそこから「みそぎや」という苗字がうまれたという設定なんですが、そのモデルになった水場も実際に山中にあるんですよ。名前は違いますけどね。
ムー編集部:ともつか先生のお話を聞いていると、意味深な設定がすべて「思いつき」「流れ」で生まれたんだと肩透かしをくらってしまいます。即興劇のような。
ともつか治臣:そうですね、昔から趣味で『妖魔夜行』などテーブルトークRPGを遊んでいたりしていまして、「それっぽいウソ」をつくのが好きでしたね。公式にない設定を勝手につくって「え? もともとそうだけど?」と仲間内でシラをきったりするような遊びをしてました(笑)。
だからインチキな過去の伝承を“捏造”したり、「謎の古文書が出てきたぞ!」って話を考えるのは性に合ってるのかもしれません(笑)。
ムー編集部:連載しながら「思いつき」で設定を考えるという流れはまさにTRPG的かもしれません。しかし“捏造”とおっしゃいますが、『令和のダラさん』のなかにはとてもただの捏造とは思えない生々しさもあります。

ともつか治臣:僕は漫画を描くとき新たに資料を買うことはないんですが、でも昔から伝説や神話などいろんなジャンルが好きで読んでいました。ウソか本当かわからない何百もの話のなかに、ひとつでも本物がまぎれていたら怖いよね、という楽しみ方をしてまして、「ダラさん」もそうやって脳内に積み重なったもののなかから作り上げています。
実は、中学生の頃には友人とお金を出しあって「ムー」も買ってたんですよ。そういう10代20代で仕込んだ情報のうち脳内から染み出してくるものでネタをつくっているので、適当な設定ですがそこには本当にあった民話や伝説の要素が入っているかもしれません。もちろん自分ではウソをついてるつもりですが、100%のウソになってるかどうかはもはや自分でもわかりません(笑)。
ムー編集部:深読み、裏読みをしたくなる理由が見えてきました。
ともつか治臣:読者さんにも考察をしてくれる方はいて、逆にこちらが「なるほどねー」と思うこともあります。また読者さんの反応といえば、ダラさんのライバルとなるおろちことヤサカ。早めに退場させるつもりだったんですが意外に人気がでたのでたびたび登場することになりました。

ムー編集部:ウケのいい部分が広げられて、リアルタイムであらたな設定、伝承が加えられていくとは。語り手と受け手のコールアンドレスポンスというその構図はまさに「長老が民話のなかのウケた場所をふくらませて語った結果、新しい民話が生まれる」という口承文芸のつくられかたそのものです。ますます『令和のダラさん』がリアルな伝承めいてきました。
ともつか治臣:でも、正直あまり難しいことを考えて読むものじゃないですから。ダラさんはギャグ漫画ですからね! ただ、「でも、もしかしたらこの伝承は……」と思いながら読んでもらえるなら、こちらも捏造のしがいがありますね。
ムー編集部:「捏造のしがい」! 今後ダラさんはアニメ化されて全世界に発信されるわけですが、そうなると5年後には「日本にはこんな伝説があるんだぜ」と海外で「本当の話」になっているかもしれませんね。これからの展開が楽しみです。

過剰考察に公式肩透かしをくらったが、これも『令和のダラさん』がもつ緊張と緩和の高等テクニックなのかもしれない。
『令和のダラさん』では三十木谷きょうだいとダラさんの交流が描かれる日常編と、屋跨斑出生に関わる過去編が交互に描かれるが、ポップな現代と凄惨な過去の反復という構成そのものも、緊張と緩和を生み出している。
またある意味では、このシステムによりオカルトが強くなりすぎない、怖くなりすぎないから安心して楽しめるという一面もあるだろう。「これはギャグ漫画ですからね!」という最強のお守りがパッケージされているからこそ、安心しておどろおどろしい場面も楽しめる。このシステム、狙って構築していたのだとしたらなんと巧妙な仕掛けだろう。
ともつか氏に質問したら「いや、たまたまですよ(笑)」と華麗に肩透かしをくらいそうだが、果たして……。

「令和のダラさん」
TOKYO MXほかにて放送中。dアニメストア、ABEMAにて毎週木曜22:00より地上波先行・最速配信中。
TOKYO MX 毎週木曜22:30〜
カンテレ 毎週木曜25:45〜
B S日テレ 毎週木曜23:00〜
※放送日時は変更となる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
https://darasan-anime.com/onair/

原作者・ともつか治臣先生の公式Xはこちら!
https://x.com/TomotukaHaruomi
webムー編集部
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