7つ以上ある!? 下町を騒がせた江戸怪談「本所七不思議」の基礎知識

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    現在の墨田区、本所は怪奇現象が続発していた…? 「本所七不思議」を解説!

    墨田区に息づく怪談文化

     お岩さんの「四谷怪談」、お菊さんの「皿屋敷」、お露さんの「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」という三大怪談が生まれた江戸時代。それぞれ歌舞伎や浄瑠璃、落語や講談になって大流行。

    左から 『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』(歌川国芳)、「百物語・さらやしき」(葛飾北斎)、「ほたむとうろう」(月岡芳年)。

     そんな時代に江戸の本所で怪談が語られていた。
     本所とは現在の墨田区南部、錦糸町・両国・押上の地域。明暦の大火を機に開発され、両国橋がかかってからは繁華街として急激に発展した。今でもこのあたりは繁華街としての賑わいと、お寺や職人さんも残る下町の暮らしが同居する江戸らしさを残した地域である。

     そんな本所で目撃された数々の怪現象をまとめたのが「本所七不思議」。
     数え方に諸説あるため合計すると七以上になることも不思議なのだが、それだけ本所は怪異の多発地帯だったらしい。

    本所七不思議

    左から「馬鹿囃子」「送り拍子木」「送り提灯」。

     ここでは、本所七不思議の中でも、三代目歌川国輝の絵になっているものを紹介していこう。まずは、音や明かりだけの、ちょっとした不思議現象の3つ。

    • 馬鹿囃子(ばかばやし) 夜中に歩いているとどこからともかく祭り囃子が聞こえてくるが、音色を目指して歩いても一向に近づけない。
    • 送り拍子木(ひょうしぎ) 夜回りの男が拍子木をカチカチ打っていると、別の方向からカチカチ聞こえてくる……でもだれも鳴らしていなくて、音だけが聞こえる。
    • 送り提灯(ちょうちん) 夜道で提灯の明かりが見えるが、追いかけても消え、またどこかに灯って追いつけない。

     続いて、もう少し具体的な出来事が起こるのがこの2つ。

    左から「置いてけ堀」「消えずの行灯」。
    • 置いてけ堀 釣りの帰りに「おいてけ」と謎の声がして、帰ったら釣ったはずの魚が消えていた……河童や狸の仕業なのか、なんなのか?
    • 消えずの行灯(あんどん) 蕎麦屋の屋台を見つけたが、行灯だけで誰もいない。この行灯の火を消そうとしてもなかなか消えず、無理に消した者は災いにあったという。

     

     奇妙な出来事だけでなく、今でいう人怖にも通じる事件モノもある。

    「片葉の芦」
    • 片葉の芦 町娘にフラレたならず者が逆ギレして町娘を殺害。片手片足を斬り落として死体を堀へ投げ捨てた。以来、そこに生える芦は葉っぱが片いっぽうしかなくなったという。

     

     そして最後に紹介するのはこんなお話。

    • 足洗い屋敷 旗本屋敷で毎晩、血まみれの巨大な男の足がさがってくるという怪奇。たらいで足を洗ってあげるとひっこむが、面倒なので結局引っ越した。

    詳細も現場もハッキリしない

     このように、ふんわり怪奇現象もあれば事件ものもあり、わけのわからない足が出てくる話もあり。「本所」という地域以外はこれといった共通点はないが、ともあれ開発が急速に進んだ本所はいろいろな地域から多様な職業の人が集まり、賑やかで混沌とした場所だったのだろう。

     東京都になった現在、墨田区は「本所七不思議」を観光情報として打ち出している。しかし、「ここで馬鹿囃子が聞こえた」とか「ここが片葉の芦の現場だ」という現場まではハッキリしていない。今と江戸では風景が変わりすぎていることもあるが、そもそも場所が判明していない怪談たちなのだ。

    解説動画はこちら

     ただ「このへんかな~」と散策を楽しめる「本所七不思議マップ」は墨田区が配布している。実は「ムー」が制作協力したバージョンもあるので、機会あればぜひ手にしてほしい。

    配布場所
    ・両国観光案内所(墨田区横網1-30-20)
    ・観光プロモーションカー「すみーくる」
    https://visit-sumida.jp/about/promotion-car/
    ・街あるき案内処(出店場所については墨田区観光協会HPで)
    https://visit-sumida.jp/about/information/
    ・スクウェア・エニックスカフェ 東京(千代田区神田佐久間町1-6-1 秋葉原東西自由通路)
    ・ARTNIA-アルトニア(新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア1F)

    ※ 各所において用意した部数が無くなり次第、配布は終了

    すみだ観光サイト▶︎https://visit-sumida.jp/

    webムー編集部

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