ケニアにもターボばあちゃんがいた!? 深夜の村を全裸疾走する怪人「ナイトランナー」の恐怖
アフリカ・ケニアの村では暗闇の中を裸で疾走する“ナイトランナー”が出没するという。いったい誰が、何のために、深夜の村を駆けまわっているというのか――。
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ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々(ようかいほいほい)」! 今回は、どこからか現れる正体不明の「ひとたち」を補遺々々します。 (2020年2月26日記事)
私たちは身の安全と財産を守るため、個人情報をできるかぎり漏らさぬように暮らしています。
それでも完璧などありません。むしろ、パソコンやスマホに大切な情報を詰め込んでいる私たちは、知識や技術を持つ者がその気になれば、いとも簡単に、丸裸にされてしまいます。
――どこから来た、だれなのか。
この現代社会では、その素性をヴェールに包んで隠し通すことのできる者は、それほど多くありません――と、この記事を書いているまさに今、このようなネットニュースが流れてきました。
「30年ともに暮らした妻が、どこのだれなのかがわからない」
どうやら、現代でもそのようなことが起こりうるようです。
ここでご紹介する例は宮城県に伝わる、いっさいがヴェールに包まれたものたちの話です。
【童子林の童子】
宮城県黒川郡粕川村(現・大郷町)の前沢田と後沢田の境のあたりに丘があります。
そこではときどき、どこからか5、6歳の可愛い子供がやってきて、村の子供たちと遊んでおりました。
この子供、かけっこ、木登り、相撲、何をやらせても年上の子供に負けません。
まったく身元の知れぬ子供であるらしく、気がつくといなくなっていたといいます。
そんな不思議な子供の来るその丘は、童子林と呼ばれていたそうです。
【辻に立つ童女】
仙台市青葉区堤通と北五番丁(同区柏木のあたりか)の横丁で、14、5歳の少女が辻番所(警備のために設けられた所)の前に立っているのを、よく見られたといいます。
正徳2年(1712年)の正月24日の夜。
ある者がその辻を通りかかったとき、小盆を持った少女が佇んでいるのを見ました。
とても暗い夜でしたが、目の白い部分と黒い部分がはっきりと光って見え、それがとても気味悪いのです。
持っていた杖で打ちつけようとしましたが……いや、もしかすると宿守(家の番)の娘なのではないかと躊躇しているうちに、少女は姿を消してしまったそうです。
やはり、怪しのものだったのでしょう。
【道塞ぐ姥】
台町一番丁から二番丁へ抜ける横丁通りの西裏のあたりには、大きな皀莢木(さいかち)が生えていました。
夜になるとその木の下に、白髪の老婆が現れ、横丁を塞いで立っていたといいます。
ある武家の仲間(奉公人)がこれに遭い、慌てて逃げたという話が伝わっています。
このお婆さんの目的はわかりません。生あるものなのかそうでないのか、それさえもわからないのです。
【お花女】
正体はわかりませんが、名前だけはわかるものもあります。
青葉区宮町にあります、清浄光院万日堂の東に、北へ割れた道があります。この道は六道の辻へと通じる道で、その道の土手には穴があり、このあたりで不思議なふたりの姿がときどき見られたというのです。
あるときは男が立ち現れ、「支度はよきか、お花、お花」と呼びました。
あるときには、その呼びかけに応える声もあり、華やかに着飾った27、8の美しい女性が穴から現れ、ふたり連れだってどこかへと行くのを見た人もいました。
また、この美女が塀笠(びんかい)の上に立って笑いかけてくることもあったそうです。
おそらく正体は狸か狐で、道の穴は「お花」の住処なのではないでしょうか。
旅に行ったのなら、やっぱり寄りたい、お土産屋さん。
こういう場所でも、妖怪的なものを見つけることができます。
妖怪を題材に手作りされた民芸品は昔からありますが、最近でもストラップやキーホルダー、文具、ステッカーなど、より馴染みやすくキャラクター化され、グッズ化された妖怪たちがお店に並んでいるのを見かけます。
書籍コーナーでは、その土地の出身作家の本、写真集、ポストカードブックなどと一緒に、民話・伝説の本が置かれていることもあります。
お土産屋さんに売っている「小さな本」から見つけた妖怪をご紹介します。
永岡治『伊豆の昔ばなし』に収録されているお話です。
静岡県の沼津市と伊豆市の境にある達磨山。その中腹に広尾戸という所がありました。ここには昔、【桜衛門(サクラエモン)】という化け物がいました。
この桜衛門、化け物といっても、悪事ははたらきません。それどころか、夜道で迷っている人がいれば道案内をしてあげますし、赤ん坊が泣いていれば、その子をあやしにわざわざ里まで下りてきます。困っている人を見過ごせない、優しい心の持ち主だったのです。そんなお人好しな性格ですから、呼ばれたらすぐ助けにきてくれます。
修善寺のほうから来た村人が、達磨山を通ったとき。
「おーい」と、この化け物の名を呼ぶと、どこからともなく桜衛門が現れ、一緒に歩いてくれたといいます。
夜の峠越えは暗くて怖いもの。そんなときにだれかが同行してくれたら、どれほど心強いでしょうか。
こうして助けてもらった村人は、お礼におむすびを2、3個、家の前に置いておいたそうです。すると、桜衛門はそれを黙って食べて、山へ帰っていったといいます。
『伊豆の昔ばなし』には、白装束を着た人間の姿をしている桜衛門が描かれています。
小原剛太郎『雪国夜話』に収録されている、「雪まき爺さん」というお話です。
木枯らしの吹く夕方のことです。
ある家族が家の炉端で食事をしていますと、
「おばんです」
そういって、貧しそうな身なりのお爺さんが訪ねてきました。
一晩、泊まらせてほしいといいます。
優しい家族は、この突然やってきたお爺さんを火にあたらせてあげます。そして、粥を与え、寝床に馬小屋の隅を貸してあげました。
この晩はとくに冷え込み、家族は身を寄せ合って眠りました。
翌朝。
その家の子供が、お爺さんを起こしに馬小屋へ行きました。
びっくりです。
馬小屋に、お爺さんの姿がないのです。
お爺さんの寝床には代わりに、白い綿のようなものが丸まって置かれています。
その白いものは庭へと続いており、畑へ、森へと広がっています。
あたり一面、銀世界でした。
翌晩、このお爺さんは隣村にも現れました。そして、どこかの家を訪ね、そこでひと晩、泊まっていきました。
すると、その村もたったひと晩で、真っ白になったのです。
こうして、おじいさんは南下していきながら、その行く先を真っ白にしていきました。
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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