敗戦に不服の大統領が相手国へ宣戦布告! 判定騒動が戦争へと発展した悲劇/サッカー都市伝説(2)

文=中野雄二

    世界最大のスポーツの祭典にまつわる、ウソのような本当の話。

     W杯という祝祭空間は、ときに人人の理性を吹き飛ばすほどの魔力を秘めている。なんとW杯予選の判定をめぐって、国同士が戦争を始めてしまったことがあるのだ。

     1969年7月、W杯出場権をかけた地区予選でエルサルバドルとホンジュラスが激突。互いに1勝1敗となり、プレーオフを争うことになった。最終戦は2対2のまま互いに譲らず、ついには延長戦へ。死闘の末、最後の力を振り絞ったエルサルバドルがゴールを決め、出場権を手にした。

     ところが……。
     試合をテレビ観戦していたホンジュラスの大統領が、自国に不利な判定があったと激昂。即座に国家非常事態法を発令しただけでなく、対戦国のエルサルバドルに対して宣戦布告をしてしまったのだ。
     一方、エルサルバドルの大統領も、負けず劣らず冷静さを失っていた。「負け犬の遠吠えなど、ちゃんちゃらおかしい‼」とばかりに軍隊に出撃を命令。以後、両国の軍隊は国境を挟んで激しい軍事衝突を繰り返した。
     後に「サッカー戦争」と呼ばれるこの愚かな戦いは、完全な終結までにおよそ1か月近くもかかった。
     この戦争における両国の犠牲者数は約2000人。
     ただし、国境を接する両国の間には、領土問題、移民問題、貿易摩擦、さらには国内政情の不安定などさまざまなトラブルが横たわっており、必ずしもサッカーだけが原因ではなかったことは、両国の名誉のために付け加えておきたい。

    メキシコシティにあるエスタディオ・アステカで行われた試合が「サッカー戦争」のきっかけに……。画像=Wikipedia
    エルサルバドルのフィデル・サンチェス・エルナンデス大統領による、戦争に関する声明。画像=Wikipedia

    月刊ムー 2018年7月号より

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