霊の作用を具体化しながら、それは来る! 由乃夢朗の「呪物怪談」

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    「視える」系呪物コレクター、由乃夢朗さん。後編では一室をうめつくすほどのコレクションのなかから選りすぐりの呪物を紹介してもらう。

    前編はこちら

    東南アジアの呪物人形「クマントーン」各種

     夢朗さんコレクションの多くを占めるのが東南アジア系の呪物。なかでも特に、子供の魂を込めてつくられるという、呪物人形「クマントーン」と、クマントーンによく似た「ルッククロック」は夢朗さんが最も力を入れて収集研究している呪物だ。

    夢朗 僕がいちばん持っている呪物は、収集のきっかけにもなったクマントーン類です。いろいろ集めて20体近くありますね。人体の一部を使って人形をつくり、そこに子供の霊魂を込めるという呪物ですが、最近は割と見かけるようになったものの情報が混乱しています。正確には「クマン(少年)+トーン(金)」という言葉の通り、金箔が貼られて神様のように祀られてるのがクマントーン、ミイラのような見た目で全体的に黒ずんでるのが死霊として祀られるルッククロックと呼ばれます。
    クマントーンを作るには妊婦の腹を裂いて取り出した胎児を使う……といったグロテスクな話もありますが、その発祥は東南アジアに伝わるサイアサ魔術という信仰からでたもの。戦争などで死んでしまった子供を霊的に育てたいという願望を叶えるために生み出された呪術と考えられています。
    日本で言えば座敷わらしのようなものですが、やがてクマントーンの強い霊力を戦争に使おうと悪用を考える人間たちがでてきた、という流れがあります。

    クマントーン。双頭型のものも。

    夢朗 ルーツとなったサイヤサ魔術は600年は遡れる古い信仰で、クマントーンのほかにもトヨールとかコンクロとか、東南アジアにはよく似た呪物が広く存在しています。中国にはヤオシャングイという呪物があり、この辺りは作られる経緯が闇深い場合がありますし。
    また、ちょっと面白いのが、タイ語でクマンは少年という意味なんですが、その語源に「宇宙を歩くもの」という意味もあるらしいんですよ。それを想像しながらクマントーンを眺めていると、リトルグレイにみえてきません? もしかしたらスターチャイルドのような、宇宙的なものが関係しているのかも……と考えるとさらに調べたくなりますよね。

    ーークマントーンとサイアサ魔術についてはまだ日本で知られていない部分がありますね。

    夢朗 そうなんです。姿も多様で、この大きな像はミャンマー王族に伝わっていたというクマントーンで、現地語ではNATとかいて「ナ」「ナット」などと呼ばれているそうです。いかにも福を招いてくれそうじゃないですか。この人差し指は「ひとつだけ願いを叶えてあげる」というポーズと言われてます。

    ミャンマーのクマントーン。髪は本物の人毛だそうだ。その見た目とNATという名前から中国の少年神・哪吒太子も連想してしまうような縁起のよさ。

    土地全体を呪う「釘打ち人形」

     呪物の力にあやかりたいという思いもあって収集をはじめたため、夢朗さんは「悪い呪物」はあまり持っていないという。しかしなかには、偶然手に入れた結果体によくない影響を引き起こしているものもある。

    夢朗 これはすごくシンプルな呪物ですよね。木の人形に釘が打ち付けてあるだけ。買ったものじゃなく偶然見つけた、拾ったものなんですが。
    近所に、ネットで「呪術で有名な神社」と噂される神社があるんです。検索すると生木に人形が打ち付けられている写真がでてきて、それを見たくて神社近くの森まで探しに行ったんです。何しろ、その近くの別の神社も呪いの達磨などで有名で、この辺り一帯がちょっとオカルト的に香ばしい。神社の由来も呪術使いとして有名な源頼朝にある。
    そしたらその森のなかで落し物をしてしまって、結局翌日から今度は落し物探しに通う羽目になってしまったんですが、その捜索中に偶然、木の根に置かれたビニール袋をみつけたんです。その袋を開いたら、中から出てきたのがこれです。その土地を管理している方に確認して持ち帰らせてもらったんですが、置かれ方からして奇妙ですよね。
    そもそも、呪いの人形であればふつうは藁人形とかにしそうなところを、これは木彫りの人形をつくっている。ある程度知識のある人間がつくったのかもしれない。またこの方面に詳しい方に聞いたところ、これは土地を呪うための人形じゃないか、そして釘は最初からあったものではなく、呪われている側が気づいて、人形の呪力を無効化するために打ち付けたものかもしれない、とのことでした。

    ーー素朴な作りですが、釘がしっかり打ち付けられている…

    夢朗 それで、僕この人形を拾ってきてからうまく息が吸えないんです。深呼吸ができない感覚で、この釘もちょうど人形の胸に打たれてますから何か関係があるのかも……。貴重な資料なので手放す気はないですけど。

    大きさはてのひらにおさまるほど。

    「おびんずるさま」がやってくるときに……

     夢朗さんは「視える」人だが、コレクションのなかには常時奇妙な姿にみえているものもあるそうだ。

    夢朗 なんの変哲もない古い仏像ですよね。でも僕にはこれ、ひゅっひゅっと常に煙が出ているように見えてるんですよ。
    これは「竈神」として祀られていた為に降り積もった煤が固まった姿の「おびんずるさま」です。釈迦の高弟で、撫でると体の悪いところがよくなるといって各地のお寺に木像が置かれている、あのおびんずるさまです。こういうコンディションの竈神は東北でよく出てきます。
    左の仏像は解体業者の方から連絡をもらい入手したものですが、その際に不思議なことがありました。
    最近の解体業者は古い古民家の解体をすることが多く、作業中にでてきた古物を副業的に販売されてる例も少なくないんですが、この仏像もそういうものです。
    業者さんと配送についてやりとりをして、届くのを待っていた期間のことなんですが。ある朝、玄関のチャイムが鳴ったのに、誰も来ていないし、何も届いていない。そこからどれだけ待っても仏像は届かず、業者さんとも連絡がつかない。どうしたんだろうと心配していたんですが、しばらくして業者さんから電話があったんです。
    なんと、僕に仏像を送ろうとしたその道で交通事故に遭ってしまったそうです。なんでも急にハンドルをきったトラックにぶつかりそうになり、土手から落ちてしまったとか。トラックの運転手いわく、道路に急におじいちゃんが飛び出してきたので慌てて避けたら落ちてしまったと。でも、現場検証してもそんなおじいちゃんなんていないんですよ。
    証言では坊主のおじいちゃんだったそうなんですが、おびんずるさまって、まさに坊主のおじいちゃんですよね。さらに、話を聞くと事故があった時間帯と家のチャイムがなったタイミングが重なってるんです。もしかしたら、おびんずるさまの魂的なものだけが先にこちらに来ちゃったんじゃないか……と、そんなことを思いました。

    ちなみに、初めて写真に撮った写真を画像補正していたら、「赤いオーラ」のようなものが見えてきたとか。

    何かが入った「千手観音像」

     もうひとつ、仏像にまつわる怪現象があるという。

    夢朗 仏像というと千手観音があるんですが、これもちょっと妙なことがあって……。
    仏像は魂抜き、閉眼供養という儀式をしたあとは信仰対象ではなくいわゆる骨董品として扱えるんですが、一時期、毎晩のように何かに手を引っ張られる感覚で目を覚ますという体験が続いたことがあったんです。感覚だけでなく、実際に引っ張られた手が上に上がってしまっていて、握られた手には痣のように黒ずんでる。ただの夢ではない気がした。
    でも、もし呪物が原因だとしてもこれだけ量があると何のしわざなのかわからない。あと、今住んでる家が事故物件なので、そっちが原因の可能性もあるかもしれない。
    そこである日、「あなたは誰なんですか、なぜ手を引っ張るのですか」と紙に同じものを3枚書いて、1つは燃やし、1つはテーブルに起き、1つはいつも引っ張られる左手に握って寝た。
    そうしたらその晩、ものすごい大量の手に引っ張られる感覚で目が覚めて、起きた途端にガタン、と呪物部屋のほうから物音がしたんです。そしていってみると、この仏像だけが倒れていたんです。
    閉眼供養されているので、仏様はここにおられないはず。でも、もとは魂が入った仏様なわけで、そういう何かが入っていて今は空になったものって「器」としてその後も別のものが入り込みやすいんじゃないかと思うんです。
    その後、ある心霊番組にこれを紹介するために持って行ったことがあるんですが、番組前に霊媒師さんが全員のお祓いをします、という流れになりました。そしたらいつも引っ張られてる左手だけが急に冷えて、手から何かが抜けていく感覚がしたんです。それっきり、この像は全く何もおこさなくなったんです。
    多分、入ってたものが祓われちゃったんでしょうね。僕としては今後の経過も観察したかったので、なにしてくれるんだって気持ちもあったんですが(笑)。

    顔も手も欠けているが、では掴んだ「手」の正体は?

    タイの殺し屋ご用達のお守り「ジンジョクカオハン」

     最後は、タイで信じられている呪物。「お守り」だというのだが、その話はいかにも呪物じみている。

    夢朗 これはタイの殺し屋たちがもつジンジョクカオハンというお守りで、九尾の狐を表しています。殺し屋のお守りってすごいですよね、何から何を守るんだよと……。九尾の狐はタイでも有名で、日本の伝説では残酷な美女として朝廷に侵入していますが、伝説では中国やインドでもたくさんの人間を殺した魔物です。
    「殺し」を容認している九尾の狐ならば、殺し屋を「いくべきところ」に連れていってくれるんじゃないか、と考えられてお守りとして持ち歩かれることになったといいます。ところが2000年代の後半あたりから、殺し屋たちが気付くんですよ。
    どうもジンジョクカオハン持ってるやつらのほうが、変死率が高いんじゃないか……と。

    裏面にもさまざまな呪術がこらされている。

    ーー危ない稼業の方々が信心深いものですよね。

    夢朗 今では、あまりにその力が強すぎるからだろうということで、こうした立体的なジンジョクカオハンは作られなくなってしまいました。最近は絵を印刷しただけの紙になっているそうです。この僕の持ってるジンジョークカオハンにはナムマンプラーイという人間の死体由来の魔術油が入ってますが、ジンジョークカオハンが強力に作用しすぎるという事で最近作られてるものには入ってないそうです。
    九尾の狐は韓国でも人気でドラマにまでなっていますし、そうやって人々の関心を得ることで今でも力を保っているんじゃないかと思うんですよね。
    それにしてもタイの殺し屋はすごいですよ。最低価格7000円とかで仕事を請け負ってしまうそうです。警察が顔を把握してるだけで100人は超えるといいますから、「微笑みの国」といっても怖い部分がありますね。

     東南アジアの呪物を中心に、研究と収集を続ける由乃夢朗さん。ここで紹介したものはコレクションのごくごく一部で、ほかにもひとりでに動く日本人形、イエティとコンタクトするための仮面、炭を食う五つ目の霊獣の仮面などが壁一面を埋めるほど並べられている。現在は「日本で一番詳しいクマントーン解説」を目指して調査結果をまとめているそうで、完成が待たれるところだ。

    取材動画「人骨笛カンリン」の実演

    webムー編集部

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