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これは今から30年以上前の、私がまだ小学校3年生のころに体験した出来事です。
その日、私たち家族4人は遊園地へ行きました。30年以上も前のことなので、今となっては遊園地の名称も詳しい場所も覚えていません。ただ、その日の天気が快晴だったことだけは鮮明に覚えています。
ジェットコースターに乗ったり食事をしたりと、存分にその日を楽しんでいた私たち家族は、だれがいいだしたのか、つぎはお化け屋敷へ入ることになりました。
ところが、お化け屋敷へ入る直前になり、「怖いから行きたくない」と、姉が急にいいだし、ついには泣きだしてしまったのです。あまりのパニック状態に、父はお化け屋敷に入るのをやめて、姉と外で待つことになりました。
つまりお化け屋敷に入るのは私と母のふたりだけ。
入ってみて思いましたが、このお化け屋敷は非常にリアルで迫力があります。そのさまは他の遊園地では考えられないほどです。
わくわくしながらいくつかの部屋を通過しました。どの部屋も怖さはあるものの楽しくもあります。
やがて奥まで進むと、畳が敷かれた和風の部屋がありました。
ふとあたりを見わたしたところ、母の姿がありません。どうやら私は母とはぐれてしまい、ひとりになってしまったようです。
和風のその部屋は、具体的にどう違うかは言葉にするのが非常に難しいのですが、今までとおってきた部屋と何かしら空気が違います。
また、その部屋はかなり薄暗く、障子だけが青白く発光しています。
不思議に思った私は、障子に近づいてみました。
そのときです。それまで見てきたものとはまったく雰囲気の違うお化けが私の目の前に現れたのです。
鬼の形相をしたそのお化けは、ライオンのように大きな顔をしています。しかし、怒っているふうではありません。
髭が濃く、口はまるで魚の鯉のようでした。全身が赤く、だら~っと下に向けた両手とも指がありません。そればかりか足もありません。口だけでなく体全体も魚のようで、とても中に人間が入っているようには見えませんでした。

つぎの瞬間です。私は金縛りに遭ったかのように全身が硬直し、動けなくなりました。
どれほどの時間がたったでしょう。それまで私は畳の部屋にいたはずなのに、気づけばまるで異なる空間にいます。ただ、お化け屋敷の中であることには変わりありません。
和風の部屋に出現したお化けは、中に人間が入っているようにはとても見えませんでしたが、今、目の前にいるお化けは、一目でわかるほどありきたりのお化けです。
お化け屋敷から出たのち、私が体験した不思議な出来事を家族に話してみましたが、まるで相手にされませんでした。しかも母がいうには畳の部屋などなかったと……。
私があの空間で体験したことは、単なる気のせいだったのでしょうか。ほんの一瞬、異空間へトリップしてしまったのではないか。そんなふうに思えてならないのですが。
あのとき体験した出来事は、今でも不思議でなりません。
◆戸野本玄太/大阪市
(本投稿は月刊『ムー』2026年01月号より転載したものです)
<編集部より>
お化け屋敷の仕掛けとしては定番、古典的なものに思えますが、恐怖のあまり、意識が別次元に避難したのでしょうか。サイキック回避?
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