アブダクション事件とMIBの関連は? 英国トッドデーモンの連鎖UFO怪事件/忘れじのUFO事件史

文=オオタケン(UFO手帖)

    飛ぶ円盤という言葉が世に飛び出して約80年。数々の遭遇の中から忘れられない――忘れたくない事例を振り返る。 今回は1980年のイギリスで発生した、ふたつのUFO事件について。謎のアブダクションを捜査した警察官を襲った悲劇もまた、不可解だった。

    英国の片田舎で起きたアブダクション殺人事件

     1980年6月6日、イギリスのウエスト・ヨークシャー州ティングリーに住んでいた56歳の炭鉱夫ジグムント・アダムスキーは、自宅に妻を残して買い物にでかけた。それは何気ない日常の一場面であるはずだった。
     だが、彼が二度と家に戻ることはなかった。5日後、彼は自宅から20マイル離れたトッドモーデンの町にある、高さ10フィートの石炭の山の上で遺体となって発見されたのだ。

     第2次世界大戦で故郷のポーランドを追われたアダムスキーは、定住したティングリーでは「ジギー」の愛称で知られ、評判もよかった。ゆえに不可解な彼の死は、町を混乱に巻き込んだ。
     地元の警察官アラン・ゴッドフリーは事件の発生を聞き、同僚とともに現場に向かった。彼が目にしたアダムスキーの表情は、目は大きく見開かれ、死してなお恐怖に怯えているようだったという。

     遺体には奇妙な点が複数あった。
     茶色のスーツを着ていたにもかかわらず、シャツは着ていなかった。そしてボタンはズレて留められ、ズボンも乱れており、靴の紐も不自然に結ばれていた。髪は切りたてに見えたが雑に刈り込まれており、髭も一日分しか伸びていなかった。頭部や首、肩には酸による複数の火傷の跡があったが、それらは奇妙な軟膏のような物質で治療されているように見えた。また、衣服に石炭がほとんど付着していなかったのも謎だった。
     遺体の検死を行った医師は、アダムスキーが強い恐怖の中で亡くなったことを示唆し、心臓発作の可能性を上げたが、直接の死因は謎のまま、事件の捜査は終了となった。

     彼の死の原因にはさまざまな説が唱えられた。タブロイド紙は、アダムスキーが異星人に誘拐された後に殺害され、石炭の山の上に捨てられたと報じた。この説は遺体発見時の不自然さから、どこか説得力を持って世間に受け入れられた。そして、警察官ゴッドフリーもそう感じていたのかもしれない。彼は実際、集まった記者たちに対し「私はあらゆる可能性を否定しない」と述べ、アダムスキーが異星人に誘拐された可能性を口にしていたのだ。

     このアブダクション疑惑はティングリー周辺で今でも忘れられておらず、2000年代に入ってからもイギリス人UFO研究家によって再調査が行われている。それによれば、アダムスキーは自身の健康と夫婦関係に問題を抱えていたようだ。また夫妻と同居していた家族とも揉め事を起こしていたことが判明した。研究家らは、アダムスキーの失踪は誘拐事件である可能性が高いと結論づけている。
     だが前述した検視官のジェームズ・ターンブルは、後年のインタビューにおいても「彼が亡くなる前にどこにいたのか、なにが彼の死につながったのかという疑問には、どうしても答えが出せなかった」と述べている。

     アダムスキーの遺体は事件後に生まれ故郷のポーランドに送られ、埋葬された。

    アブダクション事件を捜査した警察官ゴッドフリーは、自身もUFOを目撃してしまう。ふたつの事件は連鎖しているのか?(「Spooky Isles」より)。
    ジグムント・アダムスキーの怪死事件は一部メディアでUFOのしわざとして報じられた。「サンデー・ミラー」1981年9月27日。

    捜査した警察官がUFOに襲われる

     この奇妙な事件から5か月後、田舎町トッドモーデンは再びメディアの注目の的となった。驚くことに、今度の騒動の中心は、だれあろう警察官ゴッドフリーだった。

     ある日、住宅地で牛が逃げ出したとの通報を受けパトカーで出動した彼は、現場に向かう道路上で、回転する菱形の光り輝くUFOと遭遇した。ゴッドフリーは警察無線で事件を報告しようとしたが、無線はなぜか使用不可能となり、エンジンも止まってしまった。彼は慌ててノートにUFOのスケッチを描き残したが、それは閃光を放つと、一瞬で消えてしまった……という。
     ゴッドフリーがわれに返ると、乗っていたパトカーは道路を90メートルほど移動していた。時計を見ると、25分がたっていたが、彼はその間の記憶を失っていた。また、逃げ出した牛たちは、彼がUFOを目撃した現場の道路脇にいたという。ゴッドフリーは困惑した。

     彼は後日、弁護士の友人からの助言を受け、退行催眠を受けている。そこでUFOの光を受け意識を失ったこと、気がつくと見知らぬ部屋で数体のエイリアンと、髭を生やした背の高いヒューマノイドから身体検査を受けたことを思い出した。
     しかし、この主張は警察にとってやっかいなものだった。数週間後、彼は警察署のオフィスに呼び出され、黒のスーツ姿の謎の男と対面した。男はゴッドフリーに「見たことをだれにも話さないと誓うように」と迫った。ゴッドフリーはしぶしぶ同意した。
     彼はその後しばらくの間、男に監視されていたと証言する。あるとき、ついに彼は地元のパブで男に詰め寄り、立ち去るように告げた。男は姿を消し、二度と目撃されることはなかった。 ゴッドフリーは男がMI5(英国の軍情報部第5課)のエージェントだったと確信していた。
     だが実際はウエスト・ヨークシャー署の人間であり、ゴッドフリーに不用意な発言を控えるよう警告するために派遣された可能性が高い。当時のイギリスの警察は連続殺人事件(ヨークシャー・リッパー事件)の捜査ミスで信頼を失っており、これ以上の「問題」を起こされることを嫌っていたのだ。

     だがゴッドフリーは後に、UFO事件が原因で警察を追われたのだとも主張しはじめた。さらに彼は以前、喧嘩で股間を蹴られて以来、子供を設けることができなくなったと語っていたが、ある日、妻が謎の光を目撃した直後に妊娠したなどともいいだし、混迷をさらに深くした。
     後年、彼は「UFOを見なければよかった」と発言している。事件は長く語り継がれ、彼の子どもたちにも悪影響を与えてしまったのだという。ゴッドフリーもまた、UFO目撃以後に人生が変節してしまった被害者なのだ。
     1980年の2件の事件以来、ウエスト・ヨークシャーのトッドデーモンはUFOタウンとして知られ、有数の目撃スポットとなっている。

    ⬆事件を捜査した当時の警察官ゴッドフリー(「TheSUN」より)。
    ゴッドフリーによるUFOスケッチ(「The SUN」より)。
    ジグムント・アダムスキー。アブダクションの末に殺害されたの?(「YorkshirLive」より)。

    ●参考= https://www.examinerlive.co.uk/news/local-news/unexplained-death-yorkshire-market-town-21657404.amp
    https://www.history.co.uk/articles/the-todmorden-ufo-mystery-a-closeencounter-in-west-yorkshire
    https://www.discoveryuk.com/mysteries/the-unsolved-death-of-zigmund-adamski-ufo-abduction-or-foul-play/
    https://www.the-sun.com/news/1871818/pcalan-godfrey-famous-ufo-ordeal-40-years-on/
    https://jasonrobertsonline.com/who-killed-zigmund-adamski/
    https://www.spookyisles.com/alan-godfrey-alien/

    (月刊ムー 2026年11月号)

    オオタケン

    イーグルリバー事件のパンケーキを自作したこともあるユーフォロジスト。2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」が年一回発行している同人誌『UFO手帖』の寄稿者。

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