“円”と“水”の禁忌儀式… A24最新ホラー「ブリング・ハー・バック」に仕掛けられた呪術コードを深読みする

文=杉浦みな子

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    ダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟監督が手がける、A24最新ホラー映画「ブリング・ハー・バック」。この禁忌の儀式体験ホラーに仕掛けられたオカルト・コードを、ムー目線で深掘りしていこう。

    鬼才の双子監督の最新作は、憑依系から儀式系へ

     世界中のホラーファンを震撼させた「TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー」から約3年。あの双子の鬼才監督、ダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟が気鋭のスタジオ「A24」と再びタッグを組んだ最新作「ブリング・ハー・バック」が、2026年7月10日(金)より劇場公開スタートした。 

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     ⽶映画批評サイト「Rotten Tomatoes」でフレッシュ89%の⾼評価を獲得したほか、「IT/イット」「シャイニング」などで知られる“ホラーの帝王”スティーヴン・キングも「奥⾏きのある展開に考えさせられ、とてつもなく怖い映画だ」と絶賛しており、⼤きな注⽬を集めている一作である。

     前作では「手首の置物」という物理ガジェットを媒介にした「憑依の恐怖」を描いたフィリッポウ兄弟だが、本作では、より精神的な深淵へと観客を引きずり込む「禁忌の儀式体験」に挑んだ。

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     そこに潜む狂気と呪術的モチーフは、我々ホラーファンの好奇心を刺激する。本作を鑑賞する上で知っておくとより良い「2つのオカルト・コード」に焦点を当てながら、その魅力を紹介しよう。 

    “里親の愛”がじんわりした違和感で襲ってくる

     まずは、本作の導入となるあらすじを簡単に振り返っておこう。 
     主人公である10代の少年アンディ(ビリー・バラット)と、その義理の妹である目の不自由なパイパー(ソラ・ウォン)は、父親を亡くし身寄りがなくなってしまう。そんな絶望の淵にいた兄妹を引き取ったのが、里親のローラ(サリー・ホーキンス)だった。

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     豊かな自然に囲まれたローラの家で、兄妹は穏やかな日々を過ごせるかと思いきや……。なぜか言葉を話さないもうひとりの里子・オリバーの存在、そしてローラが「パイパーだけに見せる過剰な愛情」に、アンディは言い知れぬ違和感を抱き始める。

     不気味な儀式映像が記録されたビデオテープと、繰り返し登場する不可解な「円」、それら謎のモチーフの中心にいる里親ローラ。献身的で狂気を孕んだ彼女の母性が、恐怖の物語を牽引していく……。

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    オカルト・コード1:繰り返される「円(サークル)」の魔術的意味

     本作を観る者がまず強烈な違和感を覚えるのが、作中に繰り返し登場する「円(サークル)」のモチーフだ。主人公兄妹が引き取られたローラの家の周囲には、大小さまざまな「円」が点在する。 

     そう、オカルトや魔術の歴史において、「円」という図形は特別な意味を持ってきた。ある時は外敵や悪霊の侵入を防ぐ「結界」であり、またある時は、異界の存在をこちら側に呼び出したり魔術を発動するための「魔法陣」として機能する。

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     本作に登場する「円」は、一体誰が、何のために配置したものなのか? 里親のローラが仕掛けたまじないなのか、それともこの土地、あるいは家そのものに刻まれた何らかの刻印なのか。画面に映り込む「円」の輪郭を追うごとに、観客は奇妙な精神的圧迫感を覚えるはずだ。
     このシンプルな幾何学模様が持つ呪術的な意味を、ぜひ劇場のスクリーンで深読みしてみてほしい。

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    オカルト・コード2:異界との境界線を物質化する「水」の演出

     さらに「円」のモチーフと並び、本作の全編に漂うジメジメとした不穏さを決定づけているのが、シャワー、降りしきる雨、そして庭のプールといった「水」の存在である。 

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     民俗学や霊能の分野において、川や海などの水辺は「あの世(異界)」と「この世(現世)」を繋ぐ境界、あるいは霊的なエネルギーを伝導・増幅させる媒体となる。 

     いわば、怪異の発生する場所に湿気や水のエレメントがつきまとうのは、オカルト界隈ではお約束なわけだが、本作における「水」の使い方もまた巧妙なのだ。 

     激しい雨やシャワーなど「水」のサウンドが登場人物の精神を追い詰めていくシークエンスは、視覚だけでなく聴覚からもこちらの防衛本能を削ぎ落としてくる。観客の肌に冷たい湿気がまとわりつくような生々しさも、本作がもたらす儀式体験のひとつと言えよう。 

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    張り巡らされた「円」と溢れる「水」が浮かび上がらせるモノは…

    「ブリング・ハー・バック」は、前作「TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー」が見せたスタイリッシュなカットワークや容赦のないショック描写を継承しつつも、より「人間の精神の壊れゆく様」が重厚に描かれた一作となっている。 

     張り巡らされた「円」と、溢れる「水」が浮かび上がらせるモノは何か? ぜひ映画館という閉ざされた暗闇の中で、この禁断の儀式の全貌を目撃してほしい。 

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    【作品概要】 
    タイトル:「ブリング・ハー・バック」7⽉10⽇(⾦)より新宿ピカデリーほか全国公開 
    監督:ダニーフィリッポウ&マイケル・フィリッポウ 
    脚本:ダニー・フィリッポウ、ビル・ハインツマン 
    出演:ビリー・バラット、ソラ・ウォン、サリー・ホーキンス、ジョナ・レン・フィリップス ほか 
    2025|オーストラリア|104 分|英語・ロシア語|5.1ch|英題:BRING HER BACK|字幕翻訳:佐藤恵⼦ | R15 
    配給:ハピネットファントム・スタジオ
    コピーライト:© 2025 RACKAWAY PTY LTD All Rights Reserved 
    公式サイト:https://happinet-phantom.com/bhb/ 
    公式X:https://x.com/bhb_movie?s=20@bhb_movie

    杉浦みな子

    オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
    音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
    https://foriio.com/minako-sugiura

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