ホラー映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』監督が描く“現実に起こり得る恐怖”とは!? 日本での恐怖体験も激白!

取材・文=ラリー遠田

関連キーワード:

    今注目のホラー・オムニバス香港映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』をどう読み解くか、フルーツ・チャン監督に直撃インタビュー!

    香港発の注目ホラー映画が日本上陸!

     12月1日(金)、注目の映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』が公開される。香港を舞台にした怪奇現象を描くサスペンス・ホラー・オムニバス映画だ。

     オムニバス3作品のうちの1本である「デッド・モール」の監督を務めたのが『メイド・イン・ホンコン』などの作品で知られるフルーツ・チャン監督である。そんな彼に作品について詳しく聞いてみた。

    映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』予告編

    コロナ禍を経て生まれた“現実に起こり得る恐怖”

    ――今回の映画の舞台としてショッピングモールを選んだ理由を教えてください。

    フルーツ・チャン監督(以下、チャン)  この映画のプロジェクトが立ち上がったときに、どういう作品を作るのかということについて、スタッフの間で話し合いをしました。この映画は中国で公開されることが決まっていたのですが、そこに1つの問題がありました。

     というのも、中国ではお化けや幽霊のように実在が疑われる存在を題材にした映画を上映することが認められていないのです。だから、私たちがこの映画を作るときにも、幽霊のようなものは登場しない形にしなければいけませんでした。そこで、実際に起こりうるようなことを物語にしようと思ったのです。

    フルーツ・チャン監督

     二十数年前、香港のショッピングモールで実際に火災が起きて、何十人もの人が亡くなったことがありました。そこで、この事件から着想を得て、ショッピングモールを作品の舞台にすることにしました。

     もちろん、必ずしもそこを舞台にする必要はなかったかもしれません。たとえば、家の中の話にすることもできたでしょう。しかし、家を舞台にしたホラー映画というのは、すでに香港でもたくさんあります。その点、ショッピングモールを舞台にした作品はまだ少なかったので、今回はそこを選ぶことにしました。

    ©2021 Media Asia Film Production Limited, Movie Addict Productions Limited All Rights Reserved

    ――とある女性の素顔が明らかになるシーンはショッキングでした。

    チャン  たしかに、あのシーンは衝撃的だと思います。しかし、オムニバスの映画ですから、1話の長さはせいぜい30分ぐらいしかないんですね。その限られた時間の中で印象に残る作品に仕上げるのは容易なことではなく、試行錯誤の末に一番効果的だろうと考えたのです。

     また、ショッピングモールを舞台に選んだのも工夫の1つです。ここ2~3年は新型コロナウイルスが流行していたため、香港でも人がほとんど外出することができず、ショッピングモールなどでも店は開いているのに人がいなくてガランとしていて、どこか怖さを感じさせるものがありました。

     新型コロナの流行はつい最近の出来事なので、そういう光景が何となく皆さんの記憶にも残っていたのではないでしょうか。

    ©2021 Media Asia Film Production Limited, Movie Addict Productions Limited All Rights Reserved

    ――この作品を通して伝えたいメッセージのようなものはありますか?

    チャン  この物語は「正義と悪」をテーマにしています。ご存じのように、今はインターネットが普及していて、YouTubeなどを活用するKOL(インフルエンサー)が人気を博していて、世界中でそれを職業にしている人がいます。

     もちろん、人のためになるような良いことをやっている人もいますが、自分が注目を集めたりお金を儲けたりするために、他人に迷惑をかけたり犯罪に手を染めたりする人もいます。そういう邪悪な人間は良心を失っていて、自分にとって儲かることであれば、手段を選ばずどんなことでもやっていいのだと考えています。しかし、その考えには大きな問題があることを伝えたかったのです。

    映画『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』メイキング映像

    日本で撮影中に起きた怪奇現象

    ――監督ご自身は、ホラー映画のように怖い体験や不思議な経験をしたことはありますか?

    チャン  私自身はそういう経験はほとんどないのですが、映画の撮影現場ではそういうことはたくさんあって、話を聞くこともありますね。

    ©2021 Media Asia Film Production Limited, Movie Addict Productions Limited All Rights Reserved

     そういえば二十数年前、ある香港映画を撮るために日本の嬬恋でロケをしたことがありました。雪景色の中で女優が歩いている場面を撮ったのですが、そのときの映像をあとから確認してみると、そのうちの1コマだけ、あり得ないことですが、遠いところに不気味な手のようなものが映り込んでいたのです。

     その時は原因がわかりませんでしたが、あとから日本人のスタッフが語っていたところによると、その日に撮影場所の近くで亡くなった人の出棺が行われていたそうなんですね。だから、亡くなった人がここで撮影をしないでほしいと訴えるために手の形として現れたのではないか、というふうに解釈をしています。

    フルーツ・チャン監督

    ――最後に、監督の作品に興味を持っている日本人の皆さんにメッセージをお願いします。

    チャン  私はあまりメジャーな路線の映画は撮っていなくて、自分の好きなテーマを追いかけているタイプの監督です。日本で私の映画をたくさん見ていただければ、私も引き続き映画を作ることができるようになります。日本の皆さん、ぜひ多大な支援をお願いします。

    ――香港のホラー映画界がさらに盛り上がることを期待しています。ありがとうございました!

    〜おわり〜

    香港怪奇物語 歪んだ三つの空間

    12月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開!

    https://hk-kaiki-movie.musashino-k.jp/

    配給:武蔵野エンタテインメント株式会社

    ラリー遠田

    関連記事

    おすすめ記事