台湾の幽霊は自意識過剰? 台湾出身モデル葉媚&辛酸なめ子の心霊対談(1)
台湾の心霊文化について、辛酸なめ子が聞く! 現代台湾女子の素直な心霊感覚とは?
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怪談が人気の松嶋初音さんに、辛酸なめ子さんがインタビュー。封印していた霊視能力を解放した現在は霊障のノイズと共存する日々のようです。
怪談界のニューヒロイン、松嶋初音さん。もはや「松嶋初音怪談」というジャンルを築きつつありますが、グラビアアイドルとして活躍していた華やかな経歴もあり、当時アイドル雑誌で取材させていただいたこともあります。(松嶋さんの17年前のブログに当時の記録が……)
その頃から、人に手をかざすと、その人にまつわるビジョンが見えるとおっしゃっていたのですが、今も霊感はご健在なのでしょうか? 久しぶりにお会いしてお話を伺いました。変わらぬ美貌に早くも人間離れした霊力を感じます。
松嶋さんいわく、アイドル時代は「バチバチな感じで、人に手をかざすとその人が隠していることだったり、家の間取りや誰と付き合っている相手とかが見えていたんです」とのこと。
例えば、最近ツイているという番組スタッフがいて、その人が家でハワイ土産の守り神の人形を磨いて開運を願っているビジョンなども見えたそうです。テレビ関係者を「霊視で10人抜きする」企画などから霊視能力が評判になり、芸人やアイドルが多数出演する番組に呼ばれたことも。
「大御所MCさんを霊視してほしいって依頼されて、何言われても構わないということだったんです。御自宅でお子さんを叩いているビジョンが見えたので、見えたものを正直に伝えたら『やってないよ』って冷たく言われて、その場が凍りついてすごい空気になっちゃった。もう私が霊視する必要はないんじゃないかと思って、それ以来、霊視について人前で話さなくなったんです」
転機となったのは、松嶋さんの夫のやついいちろうさんが定期的に催している「やついフェス」。2021年の「やついフェス」会場で島田秀平さんに会ったら、松嶋さんが話していた怪談が忘れられないと言われて、島田秀平さんのYouTubeに出る流れに。久しぶりに怪談を話したら話題になって、それまでメイク動画や模型に色を塗る動画などアップしていた松嶋さんのYouTubeチャンネルにも一気に人が流れ込んできたそうです。
しかし作成してみると怪談動画にはトラブルがつきものだったとか。
「怪談の撮影の時はカメラの電源が落ちたり、配信が途切れたり、バグが起こりがちなんです。マイクにノイズが入るので何回も変えたりして大変です」
今回この取材を記録した音声にも「ブブブブブ」という不思議なノイズが……。
(編注:インタビュー動画を公開する予定でしたが、見送ります)
「ノイズといえば……」と松嶋さんが話してくれたのは「狐の嫁入り」にまつわる、どこか風流な実話怪談。
「私、狐の嫁入りを見たんです……」と、松嶋さんが話し始めるとつい引き込まれてしまいます。
松嶋さんが小学生の時、近所の一軒家に引っ越してきたある家族。小さな祠を壊したあとに、地鎮祭もせずに建てられたその家には、松嶋さんと同い年の男の子、Nくんが住んでいました。転校してきたその少年は活発だったそうですが、次第に体調が悪くなって休みがちに。
「ある日,授業中にいい香りがしてきて、その気持ちいい香りをかいでいたらリラックスして眠くなったんです。そのときに短い夢を見て、ふと気付いたら教室に誰もいない。立ち上がって廊下を見たら、白無垢と紋付袴姿の人がいて、嫁入りの行列が見えました。そんな夢を3日くらい続けて見たんです」
さすが先祖から受け継いだ霊感の持ち主、見る夢のレベルが違います。霊夢なら先生も居眠りを黙認してくれそうな……。
「3日目も眠いなって寝たらまた同じような夢が。嫁入りの列の中にNくんがいたんです。一緒に行こうとしていて、止めないと連れていかれちゃう!って思って、あの……って話しかけたけれど無視されて。白無垢の人を見たら顔が『平成狸合戦ぽんぽこ』に出て来る狐みたいでした。狐は口を開けて歯をカチカチって鳴らしてました。Nくんの手を握って『行っちゃダメだよ!』って行ったら目が覚めたんです」
映画のようなワンシーンですが、目が覚めたら実際にNくんの手を握って廊下に立っていたという松嶋さん。休んでいるはずのNくんが急に現れたことで「何でいるんだよ!?」と先生も動揺。Nくんはそのまま保健室に行ったそうです。でも、松嶋さんが授業が終わって急いで保健室に見に行ったら、Nくんはいませんでした。職員室で「Nくん保健室行けてないよ!」と先生に訴えたそうですがあまり相手にされず……。
Nくんの安否が気がかりですが、一生懸命救おうとした松嶋さんの優しさにも感じ入ります。Nくんはもしかしたら松嶋さんに好意を抱きはじめていたかもしれません。
結局、Nくんは、両親が離婚したこともあり、そのまま転校していってしまったそうです。せっかく新築の家に住んでいたのに。おそらく、家が建つ前にあった祠に、お稲荷さんが祀られていたのでしょう。新婚のお狐夫妻が住んでいたのかもしれません。
「この話を配信で話したら、『Nくん保健室行けてないよ!』のところで、声が入っていたんです!」
松嶋さんは目の前で動画を再生してくれました。そこには、ノイズまじりの中「行ったよ……」という声が。
Nくんの声? それとも狐?
鳥肌が立つとともに、Nくん保健室行けたのなら良かった、という安堵の思いもこみ上げます。
あのときそこまで親しくないNくんのことを本気で心配していた松嶋さん。松嶋さんの怪談が受けているのは、優しさが感じられる語り口調だからかもしれません。「グラビアアイドル時代より優しくなりました」とのことですが……。
ちなみにアイドル時代は、足の引っぱり合い、牽制のし合いなど「霊よりも人間が怖い」と思うことも多々あったとか。
「こうやって配信で怪談を話してると起承転結の転くらいのところでトントントントンってマイクを叩いているようなノイズが入るんです」
怪談とは、霊との共同作業なのかもしれません。そして怪談クイーンとしてブレイクのきっかけになったのは「狐の嫁入り」の幻想的なエピソードなので、お稲荷さんのご加護も得られたのかもしれません。松嶋さんのファンの中には、目に見えない存在もひしめいていそうです。
辛酸なめ子
漫画家、コラムニスト。芸能界から霊能界、セレブから宇宙人まで独自の視点で切りこむ。
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