熱波4連発! メキシコ古代サウナ「テマスカル」で生まれ直し、精霊を感じる/ムー旅メキシコ日報

文=遠野そら

    ムー旅メキシコの最終取材テーマは古代サウナ。テマスカルの中で生まれ変わり、心身まるごとデトックス!

    祈りを含めた儀式としてのサウナ

     魔女マリカルメンの導きを経て、ムー旅メキシコもついに最終日、最終テーマを迎えた。最後を締めくくるのは、最強デトックスと名高い「テマスカル(Temazcal)」である。

     観光ガイドには「メキシコ式古代サウナ」としてストレス解消やリラクゼーション効果などが紹介されているが、我々が体験するのは先住民族に伝わるスピリチュアル的な体験、儀式を再現したというガチのテマスカルなのだ。

     テマスカルとは古来伝わる特製の土竈のことで、ナワトル語で「蒸気の家」を意味する。
     高温の蒸気で満たされた窯の中で、人々は深遠な内なる声に耳を傾け、精霊と交信し、祈り、祭祀の穢れを祓ってきたのだという。

     我々が入ったのは直径3~4メートルほどのドーム状のテマスカル。内部にはくぼみがあり、それを囲んで座れるようになっていた。

     ただのサウナではないので、いきなりテマスカルに入るわけではない。
     白い服に着替え、顔に煤を塗るところから儀式の準備は始まっている。シャーマンに促され、参加者の面々(我々のほかに2名の参加者がいた)はテマスカルの隣に設けられた祭壇を囲で座るように促された。
     祭壇には東西南北の4方向、そして大地と天空へ祈りを捧げる。方角すべてに意味があり、我々はテマスカルを通じ、それら4つの世界を巡るのだ。

     祭壇での祈りの後は身体に薬草の煙や聖水をかけてもらい、ほら貝の音で穢れを祓ってもらう。両手両足を広げ、精霊たちにこれからテマスカルの世界へと入ることの許可を願うのだが、祈りの言葉の最後には必ず「オメテオ」と唱える。これは2つの世界を融合する、共生を意味した言葉なのだそうだという。
     この一連の儀式だけでも1時間弱はかかっただろうか。そしてついにテマスカルの中へ!

    テマスカルの内部。花びらが敷き詰められており中央の窪みに火山岩をセットする

    熱波の中で4つの世界を巡り、生まれ変わる

     男女交互に座り、オンブレ・フレゴ(火男)が鹿の角で火山岩を中央にセットすると、入り口は分厚いカーペットのようなもので閉ざされる。
     真っ暗闇の中、目に見えるのはカンカンに熱された火山岩の赤い石の色だけ。火山岩にはUFO多発地帯で有名なポポカテペトル山のものも含まれているという。

     そして導き人が1つめのプエルタ(扉)を開くと、火男は聖水に浸したハーブを焼けた火山岩に振りかけ、ばんばん蒸気を発生させていく。ハーブ枝から放たれる熱波と火山岩から放たれる蒸気で室内はあっと今に高温に。蒸気を浴びた瞬間体温温度は90度は超えているのではないだろうか。

     1つの目プエルタは「誕生」ーー。暗闇の中で導き人が大声で歌い、皆で日々の感謝や願いを口にする。導き人の歌に呼応するように「オメテオ!」と唱え、汗か蒸気かわからないほどびしょびしょになりながら、手にしたパイプ、ガラガラ、太鼓などの古代楽器をかき鳴らすのだ。
     1つ目のプエルタが終わり入り口が開くと、テマスカルの室内は蒸気で真っ白。だがこれで終わりではない。都度、大きなバケツに水を入れ替えながら火山岩を足していき、「知恵を授ける女性の扉」「死を意味する冥界への扉」そして最後は「人生創造の扉」へと向かうのだ。

     プエルタが進むにつれ儀式はヒートアップ。灼熱の室内で火男はハーブを振り回しバンバン熱波を送ってくる。導き人は大声で歌い、我々もそれに合わせて「オメテオ!」「オメテオ!」と夢中で唱える。そして手にした楽器をガンガン振り続けていると、まるで自分が浮いているような不思議な感覚になってくるのだ。もう完全にトランス状態である。人生創造を意味する4つ目のプエルタが開いた時には、もう放心状態。外を見ると周囲は真っ暗で、なんと儀式開始から4時間以上も経っていた。

     導き人によると、テマスカルの儀式は母体回帰も意味しており、土水火空のエネルギーを得て、芯から生まれ変わることができるのだという。
     確かに著者はハーブの成分を含む蒸気のせいか、すごく体が軽くなった気がした。カメラマンのモノガタリ木村さんは、不思議なエネルギーが湧いてくるような気分になったという。ムー編集部の望月さんは熱さに耐えられず4つの扉が開くと早々に外へ。やや早産である。

    夢中で楽器を振り続けていたら、指の皮が剥けていた

     スペイン語の翻訳を介した体験ではあるが、母体となるテマスカルは現実世界から離れた「中間の世界」のように感じられた。そこで唱えた「オメテオ=2つの世界の融合」という言葉は、「天上」と「地上」は同じ1つの世界であることを、テマスカルという中間世界から叫んでいるような、そんな気がした。思えば取材序盤に訪問したソチカルコ遺跡にも球技場のそばにテマスカルがあった。神殿との位置関係や、天文都市での役割について意図がありそうだ。

    今回我々のテマスカル体験をサポートしてくれた「Hunab ku」の皆さん
    テマスカルの序盤を定点カメラで配信していた

     テマスカル体験ですっかり毒素を抜かれた我々だが、ここでは伝統的な料理も振舞ってもらった。サボテンの実「トゥーナ」、メキシコ版イナゴの佃煮「チャプリン」、メキシコ版ドブロク「プルケ」の他、伝統的なタコスなどなどレストランでは食べられない家庭料理をご馳走になった。

     実はこのプルケ、観光ガイドには「テポストラン山の神が好きな酒」として紹介されていたのだが、コーディネーターの宮良さんにいうと「それは違う」と一蹴されてしまった。というのも本来メキシコには「神」という概念はなく、スペイン侵略後に植え付けられた概念なのだという。これには現地の生の情報がいかに大切かを思い知った。

    このマークはスペイン征服前のメキシコ国旗を意味しているのだという。

    生まれ変わった体で日本へ戻る!

     そして、夜11時――。お腹いっぱいになった我々は一路ホテルへと向かったが、ここで寝るわけにはいかない。帰国便の出発が早朝とあり2時半にはホテルを出発して空港へ向かわなくてはいけないのだ。

     充血した目でロビーに集合した我々だったが、一番大変だったのは宮良さんであろう。「寝てれば着くでしょ」の我々に対し、荷物を手配し我々が無事保安検査を終えるところまで見送ってくれたのだ。ムー旅の間、ずっと「ハイパーディメンションパワー」Tシャツを来ていた宮良さんだが、最後は「アディオス」のTシャツに着替えてくれたのもまた嬉しい。

    一睡もせずサンフランシスコで乗り継ぎ。安堵のビール。

     ミステリー大国メキシコとあり期待に胸を膨らませ上陸した我々だったが、取材すればするほど新たなムー的トピックを発見するという驚きの旅でもあった。これはもちろん「ムー」の愛読者であり、UFO事情に精通している宮良さんのおかげであるが、メキシコの謎はまだまだこんなものではなさそうだ。またいつかさらなる謎を求めてお邪魔したいと思う。最後になるが素晴らしい旅をコーディネートしてくれた宮良さんと、数百キロにも渡るロングドライブでも快適に運転してくれたエリックさん感謝の言葉しかない。本当にありがとうございました。

    左:VIAJES PASELA宮良さん 右:ドライバーのエリックさん

    おまけ~メキシコ取材の様子を紹介

    アカンバロの高校生に「ムー」マークを教える望月さん
    指先は常に「ムー」!(腕には魔除けのブレスエット)

    激辛に強いモノガタリ木村さん
    レストランの人も「ピカンテ(辛いよ)!」と注意する激辛ハバネロも美味しいと完食…どうなってるんだ

     では皆さんまた会う日まで! アディオス!

     ムー旅メキシコの取材レポートは、webムー、月刊ムー、ムー公式YouTubeで発信していきます。お楽しみに!

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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