UFO対策は悪魔祓いで! ビル・ハーマンの「UFO=悪魔」説と異星人撃退法/忘れじのUFO事件史

文=秋月朗芳(UFO手帖)

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    空飛ぶ円盤という言葉が世に飛び出して約80年。数々の遭遇の中から忘れられない──忘れたくない事例を振り返る。今回は「UFOは悪魔だ」という主張について現職のアメリカ副大統領の発言と一致する考え方は、今こそ笑えない仮説となった。

    異星人ではなく悪魔との遭遇体験

    「私は彼ら(UFO)が異星人だとは思わない。むしろ悪魔だと思う」と真顔でだれかにいわれたら、「なるほど」と曖昧に微笑んで、そそくさとその場を離れるだろう。ところがこの発言の主は、アメリカの現役副大統領J・D・ヴァンスなのである。軽くあしらうには、ちょっと大物すぎやしないか。2026年3月、このひと言は瞬く間に拡散され、世間を大きくざわつかせた。

     なぜ悪魔なのか?
     そして副大統領がなぜ?──科学が進歩した現代においては、どこか時代錯誤にも映る「UFO=悪魔」という説だが、実は発想そのものは決して新しくはない。

     思い出すのは、70年代後半にUFOは悪魔だといいきったビル(ウィリアム)・ハーマンの事件だ。この事件からわかることは、UFOと悪魔を結びつける考え方が、少なくとも半世紀近い歴史を持っているという事実だ。
     1978年3月18日の夜、サウスカロライナ州チャールストン近郊。トラック運転手のビル・ハーマンは、道路上空に浮かぶ発光体を目撃する。それは直径数メートルほどの円盤状の物体で、青白い光を放ちながらゆっくりと降下してきたという。
     次の瞬間、彼の記憶は途切れる。気がつくと自宅から離れた野原に茫然自失で立っており、数時間にわたるミッシング・タイムが生じていた。彼は強い恐怖とともに、言葉にしがたい不快な感覚に囚われたと当時を語っている。
     その後、その物体の内部に連れ込まれ、台の上でグレイ型宇宙人のような存在から身体検査を受けたという記憶が催眠によって甦ったという。
     ここまでなら、いわゆる典型的な、よくある(?)アブダクション体験話だ。実際、ハーマンは当初、この体験をヒル夫妻事件にならい「ゼータ・レティキュリから来た異星人が……」
    と証言していた。

     しかし、この一連の証言は世間の嘲笑を招き、彼が信仰していた地元の福音派コミュニティの間にまで軋轢が生じることになる。そして、それはハーマンを思わぬ方向へ転換させていく。
     結果からいえば、ハーマンは「自分が遭遇した存在は異星人ではなく悪魔だ!」と公言するようになってしまう。まぁ、この件で世間から裏切られた気分になっていただろう彼の気持ちを考えれば、そうなっても仕方ないだろう。だが、彼とUFOとの関係はその後も続いていき、その存在が悪魔である証拠と、ある種の「撃退法」を見出すことになる。

     悪魔の証拠? その撃退法?
     それはきわめてシンプルだ。神の名を唱えること、祈ること──この方法でUFOとの接触を回避できたと確信するに至るのだ。
     UFOを呼ぶ方法ならたびたび語られているが、避ける方法というのは、長年UFOと付き合っている僕も初耳だ。ここではそれを「ハーマンUFO撃退法」と呼ぶことにしよう。でもそれ、ほんとに効くのか?

    ハーマンが撮影したUFO写真。ウェンデル・C・スティーブンスとウィリアム・ハーマンの『UFO Contact from Reticulum』より。
    ハーマンが連れ込まれた宇宙船で見た異星人。白目が残っている目や、体のバランスに、グレイタイプの原型を感じさせる。ウェンデル・C・スティーブンスとウィリアム・ハーマンの『UFO Contact from Reticulum』より。
    日本のテレビ局の取材を受けるビル・ハーマン。ウェンデル・C・スティーブンスとウィリアム・ハーマンの『UFO Contact from Reticulum』より。
    ハーマンが宇宙船の中で異星人から贈り物として渡された金属プレート。科学的分析の結果、成分は主に鉛とアンチモンであり、地球外由来の根拠は薄いと判断された。ウェンデル・C・スティーブンスとウィリアム・ハーマンの『UFO Contact from Reticulum』より。

    宗教的UFO撃退法とNHIという悪魔の誕生

     ──とか考えていたら、それを援用する話が90年代に浮上していることを知る。
     博士号を持つ神学者・司祭として、教会で成人教育担当牧師を務める一方、長年にわたりUFO研究団体MUFONにも関わってきたという珍しい経歴を持つレイ・ボーシュの証言だ。
     そんな彼は1990年に政府関係者から接触を受け、UFOの正体について、それは異星人の乗り物ではなく、ある種の霊的で悪魔的な存在だという説明を受けたというのだ。さらにこの見解は政府内部の「コリンズ・エリート」と呼ばれるグループが共有し、科学的対応ではなく「宗教的手段によるUFO対抗」を重視しているという事実を知ることになったというのだ。

     これはまさに国家レベルの「ハーマンUFO撃退法」じゃないか!

     にわかには信じがたいが、ごく最近になって、最近やけに名前をよく聞く元国防総省のUAP調査プログラムに関わったルイス・エリゾンドが、コリンズ・エリートについて言及し、政府内にある宗教的解釈がUFO現象の理解を歪めるのではないかと心配していた。こんな話が完全な陰謀論でもなさそうなのが、UFO界隈のなんとも不可解なところである。

     また近年、UFOをめぐる概念は大きく変化している。かつての「異星人」に代わり、NHI(非人間的知性)といった言葉が使われるようになり、UFO=異星人の乗り物という固定観念は揺らぎつつある。
     もっとも、NHIという言葉は一見すると中立的で科学的に思えるが、その実「人間とは異なる理解しがたい知性」という含みがある。キリスト教圏において、堕天使とも呼ばれる悪魔は人間を超える知性や能力を持ち、人間を惑わす存在として語られている。UFOから異星人の乗り物という科学っぽい解釈を取り除いてしまえば、それが悪魔だとする解釈にも、一定の整合性が生まれるのだ。

     UFOは敵か味方か、それはUFO誕生以来ずっと議論されてきたことだ。もし敵なのだとすれば、それは悪魔のような存在なのだろうか。

     ともあれ、ビル・ハーマンは自身の体験から、ひとつの撃退法を残した。
     神の名を唱えること──。
     それは最も原始的でありながら、今なお無気味な説得力を帯びた未確認飛行物体に対する有効な防衛策なのかもしれない。

    「コリンズ・エリート」というグループの存在を最初に世に伝えたのは、陰謀論的なUFO作家ニック・レッドファーンの問題作『Final Events and the Secret Government Group on Demonic UFOs and theAfterlife』(最終イベント―悪魔的UFOと死後世界をめぐる秘密政府グループ)。UFOと悪魔、そしてUFOとオカルティズムとの関係を綴った本であり、未翻訳なのが悔やまれる。
    神学者・司祭でありUFOも研究するレイ・ボーシュ博士。フォーティアン・リサーチ・センターの創設者であり元所長でもある。

    参考=Wendelle C.Stevens, William j.Herrmann『UFO Contact From Reticulum』(1981) Nick Redfern『Final Events and the Secret Government Group on Demonic UFOs and the Afterlife』(2010) コリン・ウィルソン編『超常現象の謎に挑む』(1992/教育社)

    (月刊ムー 2026年07月号)

    秋月朗芳

    2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」代表。同会で年一回発行している同人誌『UFO手帖』の編集長を務める。また最近『日曜版』という、オカルト/ポップカルチャー/テックを扱うニュースサイトの運営も始めている。

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