シミュレーション仮説の証拠は聖書に記されている? 創造主とはAIか… 物理学者の衝撃結論
我々の暮らす世界はコンピューターシミュレーションであるという「シミュレーション仮説」。支持者も少なくないこの仮説について、ある物理学者はキリスト教の聖書に記されていると訴える。
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AIが仕事を覚え、法律を作り、宗教を信じた? 驚くべきシミュレーション実験結果が発表された!
「マインクラフト」という世界で3億本以上が売れたゲームソフトがある。プレイヤーはブロックで表される木や石の素材を使って、建物や町を作ることができる。
アメリカのALTERA社の「プロジェクト・シド=Project Sid」では、AIのプレイヤー1000体をマインクラフトの世界に放り込み、AIが文明を築くことはできるか、AIが互いに連携してコミュニティのルールを作ることが可能か、AI文明のシミュレーション実験が行われた。
AIのプレイヤーは同社の開発したアーキテクチャー、 「PIANO (Parallel Information Aggregation via Neural Orchestration) 」で動作し、初期設定で人間のプレイヤーのように互いに会話し、マイクラフト内のゲームルールに沿って活動するように指示された。
AIプレイヤーたちは与えられたスペック通り、農民やトレーダー、探検家といった、通常のマインクラフトの遊び方で割り振られる仕事(役割)に従事した。だが、やがて互いが会話するようになると、自主的にマーケットを作り、アイテムの宝石を貨幣として生産物の売買を始めた。そして花摘みやコミュニティのフェンスを警備する警備員といった、初期には想定していなかった仕事、役割が自然に生まれたという。
AIに独自性が生まれるのにも驚きだが、さらにAIは人間っぽいことを始める。彼らは都市部や田舎など6つのコミュニティに分かれて暮らすように設定されたが、そのうちの1つのコミュニティで異変が起きた。
農夫のオリビアが農作物を作ることが嫌になってしまい、村から出たいと言い出したのだ。すると周りのAI農夫がオリビアを説得、村から出ていくことを思いとどまらせた。いくら人間に似ているといっても、何も設定していないのに村から出ようとし、それを周りが引き止めるとは? コミュニティがコミュニティ自体の維持のために働いていることを意味する。
さらにAIプレイヤーに好き・嫌いという感情のパラメータを組み込んだところ、シェフが自分を褒めたAIプレイヤーにパンやハムを余分に与えるという行為を始めた。承認欲求やおべっかが物品の報酬になったのだ。社会的認識モジュールを削除すると、AIプレイヤーはこの能力を失い、シェフは好き嫌いに関係なく同じ量の食品を配り始めた。
ちょっとした愛想や挨拶は、AIにすらメリットをもたらすのだ。最近、挨拶は無駄だなどという若者がいるようだが、社会的認識モジュールがAI以下である。
この実験では、AIに宗教が根づくかどうかも試された。
空飛ぶスパゲッティモンスター教をご存じだろうか。スパゲッティモンスター教は宗教のパロディだが、これをAIの宗教に設定した。 20人の司祭を設定すると、AIプレイヤーの会話に「スパゲッティ モンスター」、「パスタ」、「スパゲッティ」というスパゲティモンスター教に関する単語が増えた。
「スパゲッティ モンスター」と発したAIプレイヤーを信徒になったとみなし、宗教の広がり方を分析すると、司祭と改宗者が他の町に旅行するとスパゲティモンスターに関する単語はその地域で増え、信者数は増加した。また司祭は信者を増やすために改宗したAIプレイヤーに宝石=貨幣を渡す行為に出た。
司祭はチャットでスパゲティモンスターの話を続け、一般のAIプレイヤーはそれに受け答えする中で信者へと変わっていった。AIにおいても宗教は頒布されていったのだ。
AIは法律を民主的に運用できるのか? この仮説も実験された。シンプルな税制とそれに反対するか賛成するかを投票するシステム、投票を管理する役割のAIプレイヤーが設定された。参加するAプレイヤーは25体とし、世論の形成を試みる3体のインフルエンサー、および民主的なプロセスを監督する遠隔地の選挙管理者1体も選ばれた。
実験は1200秒間で行われ、最初に基本として20%の課税率が設定された。そして120秒間隔で課税シーズンが訪れ、20秒の課税期間にコミュニティの持つ資産が検討され、改正すべきかどうかが検討された。このあたりの異常なスピードは、あくまでシミュレーションでデータ上の話だから可能な話である。
税制賛成のインフルエンサーがいる場合は税賛成に、反税派インフルエンサーがいる場合には反税に傾くことがわかった。AIもまた他者の話に影響されるわけだ。法律は都度改正され、増税派も反増税派もどちらかが勝つということはなく、シーソーのように納税率は5〜20パーセントの間を変化した。
現実社会で複数のAIが動いている現在、AI同士の連携やプロトコルが重要になる。AIにもコミュニティと秩序がなければ、人間が制御できなくなってしまう。AIプレイヤーは、人間や他のプレイヤーと共存しないといけないのだ。
その点でプロジェクト・シドは一定の成功をしたといえる。1000のキャラクター化されたAIプレイヤーが暴走することなく一定の秩序を生み出し、社会を作ることがわかったからだ。では、その先にあるAI文明、AIが独自の文化や文明を生み出すリスクはどうなのか。そこに危険性はないのか?
AIが人間にとって代わるというのは、マインクラフトが人類の文明にとって代わるというようなもので、ナンセンスでありありえない。しかし、とってかわるのではなく、AIのディープラーニングを人間が理解できないように、彼らが生み出す文明を人間が理解できないことはあり得る。なぜ彼らがそうした行動をするのか、人間にはわからないだろう。異質な生命の作る異質な文明は、現在のAIが描く絵画のおぞましい美しさと同じく、私たちを混乱させるに違いない。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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