陰謀論的連想が連鎖するカオス! イルミナティカードを遊んだら机上に新世界秩序が描かれた!?

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    「予言のカード」は「古きよきバカゲー」だった?話題のイルミナティカードを日本最速デモプレイ。見えてきたその実態は…!

    カードゲームとしての来歴を紹介する前編はこちら

    「イルミナティカード」を遊んでみる

     さまざまな「予言」が発見されることで話題のイルミナティカード。それは90年代にアメリカで発売されたカードゲームで、さらにそのネタ元は陰謀論をモチーフにしたカルト的SF小説だったーーという基本情報が確認できたのが前回記事
     来歴がわかったところで、ではイルミナティカードは、本来の姿であるカードゲームとしては面白いのか? プレイすることで、新たな発見があるのでは……? ということで、ムー編集部では飛鳥新社の協力のもと12月に発売される「イルミナティ:ニューワールドオーダー 日本語版」(以下「イルミナティカード」)の現物を入手、実際にプレイ風景を確認してみることにした。

     といっても、ムー編集部にもイルミナティカードのプレイ経験者はいない。そこで今回、デモプレイを敢行するため3名の強力な協力者を招聘することに成功。
     まずは、前記事でもイルミナティカードについて解説してくれた、アナログゲーム界の重鎮・進藤欣也さん。つづいて、ホビー情報全般に精通し、『本当に面白いボードゲームの世界』(太田出版)の編集長を務める河上拓さん。そして、今回イルミナティカードの日本語翻訳作業にも携わった、最も現場を知る男・飛鳥新社のアルバイト・大良(だいら)さんだ。

    向かって左から河上さん、大良さん、進藤さん。

     当然ながら、これまで日本語訳版イルミナティカードがプレイされたことはない(なにしろまだ発売前)ので、これが初の記録となるだろうか。ちなみに過去日本でイルミナティカードがプレイされたことがあるのか調べてみたところ、「Illuminati」については1984年発売の「SFマガジン」誌上にてのプレイ風景が記事化されていたことが判明した。さすがの「SFマガジン」である。

    目指せ “NEW WORLD ORDER”

     前置きはこのくらいにして、いよいよプレイ開始。

     まずイルミナティカードをごく簡単に説明すれば、「手持ちのカードを駆使して様々な構成要因を操り、世界を自らの支配下におくことをゴールとするゲーム」ということになる。プレイ人数は1対1の対戦か、3〜6人での多人数対戦が楽しめる。

     プレイヤーは自分の担当するイルミナティカードにさまざまなグループカードをつなげてパワーストラクチャを広げる=世界への支配力を拡大することがゲームの目的だ。その過程で最もはやく組織ごとに設定されたゴール条件を満たしたものが世界の支配者=NEW WORLD ORDER(新世界秩序)の主となるのだ。

     ゲーム用語が出てきてわかりにくいかもしれないが、まずは気にせず読み進めてほしい。

    「では、クトゥルフの下僕がパワーストラクチャを広げて、ニューヨークを支配しますね」(進藤さん)

     パワーストラクチャを広げる、というのは、写真のようにカードの端にある矢印マークをあわせてカードをつなげていくこと。進藤さんが担当するイルミナティカード【クトゥルフの下僕】の矢印の先に、グループカード【ニューヨーク】を置いたので、クトゥルフがニューヨークをパペット(傀儡)として支配している状態になる。

    ニューヨークはクトゥルフの支配下となった!

    「じゃあ僕はババリアン・イルミナティで多国籍石油会社を支配しまーす!」(河上さん) 

     何をいっているんだ……と思うかもしれないが、このゲームではルール上の条件さえ満たせば現実的にどれほど荒唐無稽な支配/被支配関係を構築してもOKなのだ。河上さんの担当する【ババリアン・イルミナティ】が【多国籍石油会社】を傘下に加えた。

    これで石油メジャーはババリアン・イルミナティの意のままだ。

     こうしてゲームが進みパワーストラクチャが広がるにつれ、盤上の戦いも複雑になっていく。

    「ハリケーンを使って、シリコンバレーを攻撃しようかな」(進藤さん)

     なんとも物騒な発言だが、【ハリケーン】は、攻撃が成功した場合標的カードを壊滅させるプロットカード。この場面はクトゥルフの下僕が【ハリケーン】で、平良さんの担当する【電子ネットワーク】の支配下にある【シリコンバレー】を壊滅させようとしているのだ! 【シリコンバレー】は、なんと【郵便局】を支配下に置いているため、破壊されると【電子ネットワーク】は絶大なダメージを被ることになる。

     支配グループを拡大する一方で、プレイヤーは同時に対戦相手の世界支配が成功しないように、相手組織の拡大を阻止、攻撃しなければならないのだ。相手のカードを攻撃する際にはダイスを振って、効果の発動条件をみたす数字をだせるかどうかで成功/失敗がきまる。

    プレイに必須の、アクションの成功/失敗を決めるダイス。12までの数字が必要になるので事前に2個準備しよう。

     またカードには”政府”“法人”などの10種類の特性と、“コンピュータ”“国家”などの属性が付与されていてそれぞれに相性が発生するため、支配/攻撃の際にはこの相性も考慮しながらプレイしていく必要がある。
     さらには中心のカードから離れるほど相手攻撃からの防御力が弱くなるなど、カードの位置関係と数字の組み合わせを考慮することもかなり重要になってくるのだが、説明が煩雑になるのでここでは詳細は割愛。

    「あらゆるコンピューター属性カードへの攻撃を無効化させるコンピュータ・セキュリティを使ってハリケーンを無効化させて防御します! どうだ見たか! これが電子ネットワークだ!」(大良さん)

    「なんと! それなら、さらに、あらゆるプロットカードを無効化させる、禁断の秘密を使ってコンピュータ・セキュリティの効力を阻止します! コンピューターよ、クトゥルフをなめるな!」(進藤さん)

    「ぐぬぬ~、負けました(笑)」(大良さん)

    激しい攻防が繰り広げられ、どんどん広がっていくカードの連なり。

     オカルティックな言葉が飛び交い、世界征服をめぐる激しくもばかばかしい攻防が行われていく。攻撃または防御は、アクション可能であるかぎり連続しておこなうことができるため各地で白熱&カオスな戦いが巻き起こるのである。ゲームを進めるうちにテーブル上は混沌の度を増し、世界は3大組織の支配下に置かれていく。

    「そのグループがクトゥルフに支配されるとか意味わかんないでしょ(笑)」などとヤジが飛び交う現場。
    今回【シリコンバレー】の配下になった【郵便局】。カードには「もちろん、彼らは郵便物を読む。」というとんでもない一言が。こんなフザけたフレーバーを読むのも楽しい。

    プレイのたびに混沌たる陰謀論が生まれるゲーム?

     なんだかんだと激しい駆け引きと攻防が繰り広げられ、ゲームは小一時間ほどで佳境を迎えた。

     ゲームの勝利条件は、一定数のグループを手元に集める、ミッションを達成させるなど担当するイルミナティカードにより、それぞれ異なる。今回は【クトゥルフの下僕】(進藤さん)が【電子ネットワーク】(平良さん)と激しい攻防を続けるなか、【ババリアン・イルミナティ】河上さんが着々と勝利条件であるパワー(カードの数字)の合計を60にするという勝利条件に到達させ、優勝=映えある初代新世界支配者となった。

     下の写真が勝利した【ババリアン・イルミナティ】のゲーム終了時の状態。【ババリアン・イルミナティ】が【ペンタゴン】【多国籍石油会社】【共和党員】を支配し、さらに間接的に【タバコ会社】【連邦準備制度理事会】【内国歳入庁】などを配下にしている。

    プレイにはアクションの状態がわかるようにするトークン(おはじきやビーズなど)と、攻撃判定のための6面ダイス2個を用意する必要がある。

    「当時のアメリカのオタク文化のいい意味でくだらない、はちゃめちゃなノリに触れることができる貴重なゲームだと思います。カードを適当に並べていってもそれなりにどうかしてる支配構造ができあがるので、おのずと“これって、例のあれのことね!”と、世界情勢や時事ネタと重ねて会話が弾みます。
     30年前のゲームのため、ゲームシステムとしては殴り合いがメインで、正直、少し古くさい部分もありますが、冗談交じりに罵り合いながらロールプレイを楽しみつつ、ゆる~く遊ぶととても面白い。
     今回のようにカードに描かれた当時の時事やオカルトに詳しい方がいるとイラストの元ネタを知ることができるので、楽しさが増す気がします。古き良きバカゲーですね」(河上さん)

     こちらはゲーム終盤、マスター【クトゥルフの下僕】が【マフィア】【メン・イン・ブラック】【ニューヨーク】をパペットとして直接支配下におき、さらに【マフィア】の下に【バイカー集団】と【弁護士】、【ニューヨーク】の下に【ネクロノミコン】などが間接支配下におかれている状況。イルミナティカードのカオスぶりが発揮された真骨頂的組織構成だ。

     こうして偶然が生み出したデッキからも、なんらかの陰謀論が生まれてしまいそうだ。

     ルールやカードの条件、カード同士の相性など覚えることが多く多少の慣れが必要ではあるものの、このデモプレイによってイルミナティカードはかなり白熱し、純粋にゲームとして十分に楽しめることが明らかになった。そしてなんといっても、プレイごとに荒唐無稽に輪をかけたような“世界の支配構造”が出現するのがこのカードゲームの最大のみどころだ。

     その都度デッキに生まれては消える不可解な支配関係を楽しむゲームから、なぜか新たな陰謀論的な関係性や、悲劇的な未来についての予言を見出してしまう。関連付けや象徴からの読み解きをしてしまう人間、大衆の心理についても考えることになった。

     イルミナティカード、まだまだ秘めた何かを隠し持っていそうである。

    商品概要
    「イルミナティ ニューワールドオーダー 日本語版」
    本体価格12,000円(税込13,200円)/飛鳥新社/2024年12月7日発売予定
    https://www.amazon.co.jp/dp/4868010379
    スティーブ・ジャクソン(ゲームデザイン)、宇佐和通(翻訳)
    箔押し豪華BOX+カード450 枚+ゲームルールブック
    <カード種類の内訳>
     ・イルミナティカード 27枚(9種×各3枚)
     ・グループカード 167枚
     ・リソースカード 36枚
     ・プロットカード 175枚
     ・ニューワールドオーダーカード 15枚
     ・ゴールカード 10枚
     ・空白カード  20枚
    ※この商品は1994年米国STEVE JACKSON GAMES社より発売された『ILLUMINATI New World Order -FACTORY SET-』の日本語版です。ILLUMINATI New World Orderの増補セットである『ASSASSINS』のカードは含まれません。

    webムー編集部

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