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オリオン・クラウタウ 著
プロの学者が読み解く、聖徳太子伝説の真相
聖徳太子といえば、わが国初の成文法「十七条憲法」や位階制度「冠位十二階」の制定者であり、推古天皇の摂政として外交・内政・仏教隆盛に尽力、奈良の法隆寺を創建するなど、文字通り八面六臂の活躍をした飛鳥時代の偉人である。
後に神格化されて、数々の超人伝説を持つスーパーヒーローとなり、またつい最近までその肖像は、高額紙幣の文字通りの「顔」として広く国民に親しまれてきた。
明治以後、太子の神格化は新たな段階を迎える。太子にキリスト教の影響を見た佐伯好郎や池田栄、法隆寺を太子の怨霊の鎮護寺と考えた梅原猛、太子を男色の異能者として描き出す山岸凉子、そして太子をノストラダムスに代わる新たな予言者に仕立て上げた五島勉、等々…。
本書は、こうした聖徳太子に関する「異説」の歴史を丹念に追い、それらの言説の根底に横たわる衝動に光を当てる、怜悧な研究書。
著者のオリオン・クラウタウ氏は、ブラジル生まれの宗教史学者で、サンパウロ大学を卒業後に東北大学に留学、現在は同大学院准教授を務めている。
それにしても、真っ当なプロの学者が、あえて偽史やオカルトをテーマにすえて、真摯に研究に取り組めば、これほどまでに凄味のある作品ができあがるのか、と改めて痛感する。
深甚な感謝の念とともに、居住まいを正して拝読すべき、珠玉の名著である。
(月刊ムー 2024年8月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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