陰謀論を掌中で転がし近未来を語る都市伝説テラー「ウマヅラビデオ」/ムー的YouTuberの世界
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落語、講談とともに〝日本三大話芸〟のひとつ、浪曲。曲師の三味線とともに、浪曲師が物語を節(うなり)と啖呵(話)で演じる伝統話芸、ジャパニーズ・ミュージカルだ。 任侠物や悲恋物など古典的演題が主だが、近年は新作も話題になることが多い。そんな新作の世界に、新たな1ページが拓かれた! なんと、〝都市伝説浪曲〟が登場したのだ!! これはいかなるものなのか? 都市伝説浪曲に挑戦する浪曲師・東家孝太郎氏に話を伺った。
ーー孝太郎先生は都市伝説を主題にした浪曲「パンを踏んだ子 令和日本版」を発表されていますが、そもそもなぜ、都市伝説だったのでしょうか?
孝太郎 ここ数年、いろんなことが起きていますけど、いわゆる都市伝説や陰謀論で語られていることが、リアルになってきたと思えることがありませんか? 私はそういうものを追いかけているので、よく感じています。でも、興味のない人にとっては、世の中で起きていることを、都市伝説的にはまったく捉えていないですよね。
それって、構造的に〝分断〟が生まれているなって思うんです。この分断を埋めるエンターテイメントとして、浪曲で何かできないかと考えたのが、都市伝説浪曲を始めるきっかけだったんです。
ーー言うなれば、都市伝説を知る人、知らない人の架け橋に浪曲を使う、知らなくてもエンタメとして楽しめるものを作ろう、と。
孝太郎 そう、つなぐためですね。都市伝説を知らせたいとか、そういう目的じゃないんです。知ってる人が都市伝説浪曲を聞いたら「あ、〝あのこと〟を言ってる!」とわかるし、知らない人が聞いても楽しめる。両者を取りこぼさない絶妙なバランス感覚でできないかなと。それで演芸台本作家である浦野ととさんに書いてもらったのが、アンデルセン童話「パンを踏んだ娘」を元にした都市伝説浪曲「パンを踏んだ子 令和日本版」です。
ーーどうしてアンデルセン童話を浪曲の演題に使おうと?
孝太郎 最初にこの童話をベースにしようと言ったのは浦野さん。「本当は怖い○○」みたいな本とかいっぱいありますよね。そのなかで主題にできそうなものはないか、浦野さんに聞いたら「パンを踏んだ娘」が出てきた。これは昔、NHKで影絵芝居がやっていたもので、観てみたんです。
ーー高慢な少女が、ぬかるみで新しい靴を汚したくないから、パンをぬかるみに放ってそれに飛び乗ったら、ぬかるみは底なし沼になり、地獄に堕ちてしまう……これはある世代には、トラウマ影絵劇として知られていますね(笑)
孝太郎 これは都市伝説的で〝使える〟と、私も思った。少女が堕ちる地獄は地下世界です。地下世界といえば、まさに都市伝説(笑)そこには婆さんというキャラがいるけど、これが悪い存在で、ある意味いいポジション。レプティリアンに変えて使えるんじゃないか、と。しかも舞台を現代に変えたら面白いんじゃないかと思ったんですよね。
ーー原案ネタは浦野さんからの提案、そして孝太郎先生的には都市伝説ネタをアレンジさせやすい……ある意味、童話と都市伝説の〝マリアージュ〟ですよね。すぐにできたんですか?
孝太郎 けっこうかかりましたよ、半年くらいは(笑)。私は都市伝説をなんとか織り込みたい。そこで私のアイデアを浦野さんはなんとか入れてくださろうとする。しかし、浦野さんは都市伝説の捉え方がメルヘンチックで私と方向性が違う(笑)。だから食い違いも起こる。それを何回も何回も打ち合わせして、それでようやく形になったんです。
ーーこうしてできた、前代未聞の都市伝説浪曲ですが、新作って落語でも講談でもそうですが演っているうちに変化していくものですよね。「パンを踏んだ子 令和日本版」についてはどうでしょう?
孝太郎 変化といえば今年2月、山口県での浪曲会でのことです。浪曲中に、沼の婆さん=レプティリアンが出てくる場面で肩を捕まれたように体が重たくなって、セリフが飛んだんです。何者かに憑依されたような感じで、え? なんだ!? って思いながら続けて。そのあとでわかったのが、会場となった場所の裏には銅山があり、その山が〝磐座(いわくら)〟、つまり信仰の対象、昔のお祈りの場所だったんです。ちょっと〝視える〟人によれば「龍が生まれはじめている」場所であり、〝蛇の顔をした女性〟がこつこつと、何かを祈ったり石を掘ったりしているとか。
ーー〝蛇の顔〟って……まさにレプティリアンじゃないですか。
孝太郎 そうなんです。その話を聞いて、「それなら早く言ってくれよ」と。私のセリフが飛んでしまったのは、要するにレプティリアンを馬鹿にするな、って警告だったんです。小馬鹿にしたようなネタだったから、〝蛇の顔〟をしたお姉さんの霊が怒っちゃったんですよ。おそらくレプティリアンにも人間にとって良い者と悪い者はいて、ここでは良い者が霊の存在となって今もそこにいる。だから私は、その場所で手を合わせて、「すいませんでした、これからは工夫してレプティリアンにも良い者がいると伝えていきます」と、そんな感じで拝んできました。
ーーそうなると、次からは「いい感じ」も入れないとですよね。
孝太郎 そうです。だから、「パンを踏んだ子 令和日本版」は台本としてはできたんですが、霊的な部分で今後も変わっていくことはあるでしょうね。
ーーそもそもの話なんですが、やっぱ都市伝説が昔から好きなんですか? そのきっかけってなんだったのでしょう?
孝太郎 小学生のころに好きだった怪談がそもそもですかね。「ムー」なんかもそう。しょっちゅう買ってたわけじゃないけど、買っている友達はいて、読ませてもらっていたり。コックリさんやったり、ヒランヤ(六芒星)を作ったりだとかしてました(笑)。そういうだれもが通る道が、ずっと好きなままなんですよね(笑)。その後は、やはり飛鳥昭雄先生の本とか日ユ同祖論なんか好きで読んでました。そのころはまだ「へ〜、そうなんだ〜」くらいでしたが、それが「本当にきた!」と思ったのは、2001年のテロでしたね。それ以降、自分が観たり読んだりしてきたことが、ここ数年でエンターテイメントからリアルになってきたなと。都市伝説浪曲は、そういうところをエンターテイメントにしたいという結晶なわけです。
ーー今は都市伝説浪曲はまだ1作目じゃないですか。これから2作目、3作目と続く予定はあるのでしょうか?
孝太郎 もちろんです(笑)。じつは浦野さんと同時期に、もうひとりの演芸台本作家の方に、「八尺様」の浪曲台本を書いていただいているんです。ただ、まだ直しを入れたりしないと浪曲にできない段階で、保留になっているんです。また、浦野さんからの第2弾も。だから、修正の必要はあれど、実質、台本はあるといえる状況なんです。ただ、私が覚えるのも遅くて(笑)節付けとかもあるので。
ーーこのインタビューで初めて「都市伝説浪曲」なるものがあると知った方に、都市伝説浪曲のどういうところを注目して聞いてほしいでしょう?
孝太郎 それを聞いて新しい知見ができた、とかいうのは求めていません。というか、単純に、私(東家孝太郎)というフィルターを通して浪曲をどう楽しんでもらうかは、聞き手であるお客さん……あなた次第(笑)
ーーそもそも浪曲じたい、どんなものかわからない人も多いと思います。そこに突然、都市伝説浪曲と言われると、余計にわからなくなるかもしれません。でも、都市伝説浪曲1作を体験すれば、浪曲と都市伝説、両方が楽しめるわけで。どちらの垣根もなくなりますよね。1粒で二度美味しいパターン。
孝太郎 その点はもちろん、大いに期待したいところです(笑)。じつはこの都市伝説の演芸で夢があって、それは浪曲だけでなく、落語、講談の三大話芸で都市伝説の会を開催したいんですよね。そういうところで、リアルな場で、ネット上では言えないことなんかも情報発信してみたいですし。
その〝三大話芸都市伝説の会〟実現に向けての会……というわけではないんですけど、もうすでにその企画は動き出しています。それが5月20日の「都市伝説浪曲&トークの会」です。ここでの話は他言無用で(笑)
ーーこれはまた楽しみです。そんなわけで、孝太郎先生の「都市伝説浪曲&トークの会」の告知を掲載いたします。ご興味をもたれた方、ぜひいかがでしょう?
●東家孝太郎プロフィール
民俗音楽のミュージシャンとして活動を経た後、2011年5月、二代東家浦太郎に入門。
2015年、浅草木馬亭にて年明け披露。
2017年、第3回日本ホーメイコンテストにて浪曲とホーメイのミクスチャー演目にて最優秀賞受賞。
古典、新作、入門前に習得したホーメイや口琴を交えた倍音浪曲なども演じる。一般社団法人日本浪曲協会員。
浪曲界ぶっちぎりの都市伝説テラー。
ホームページ https://azumayakoutarou.com/
こざきゆう
児童書ライター、作家、編集者。伝記、お話、学習漫画、動物などをメインに活動。
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