ブルガリア国家公認の予言者ババ・ヴァンガ/ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、数々の世界的事件の発生を予言し、驚異的な的中率を誇る女性予言者を取りあげる。
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太古より人類は「超自然的な力=魔術」を追い求めてきた。なかでも、天使や悪魔、精霊といった超自然的な存在の力を借りるべく、彼らを呼び出す「召喚魔術」は、多くの者が習得を夢見た究極の奥義である。古今東西の魔術師たちを魅了した神秘の技法とは?
魔術の分類法は一様ではなく、「類感魔術」「感染魔術」「白魔術」「黒魔術」「降霊魔術」「性魔術」「自然魔術」「召喚魔術」などにジャンル分けされるが、本稿では召喚魔術に的を絞りたい。
召喚魔術を端的に定義すれば、天使や精霊など、さまざまな超自然的存在を現実世界へ呼び出し、その力を借りて願望を実現しようとする技法のことをいう。
この召喚魔術の技法は、厳密には「召喚(Invocation)」と「喚起(Evocation)」に区分される。召喚は進化樹で人間より上位にある天使や大天使、神などに懇願(請願)して地上に来臨を仰ぐ技法で、喚起は人間より下層に位置する四大精霊(地・水・風・火)、妖魔、悪魔などに命令して眼前に呼びつける技法をいう。ただ日本においては区別することはほとんどなく、単に召喚と呼ぶのが一般的だ。
また召喚魔術には、技術的に2種類の方法がある。魔術師と召喚対象の超自然的存在が別離した「請願召喚」と、魔術師と召喚対象が融合した「憑依召喚」である。
前者は、魔術師にかなりの自由裁量があるが、高次の存在との対話なので、意思疎通が困難なうえ、対話に誤解が生じる恐れがある。
後者は、魔術師が自己の肉体を、長自然的存在を受け止める杯にする技法であることから「杯の技」とも呼ばれる。この場合、魔術師は超自然的存在とともにいるのではなく、実効的な超自然的存在そのものとなる。いわゆる「憑依」であり、通常は補助者が同席して超自然的存在との対話を記録する。
では、召喚魔術の基本的な理論はどうなっているのか。
隠秘学の分野には、「魔界」「天使」「星幽界(アストラル界)」「霊界」「神霊界」……などといった用語がある。表現は異なるものの、それらはいずれも、私たちが日常的に目にしている現界とは異なる超自然的な世界を意味する。天使。悪魔。精霊などと呼ばれる長自然的存在が住む世界だ。
ただし、その世界は時間的、空間的に独立したものではなく、現界と重なり合い、リンクしている。そして、そのふたつの世界を結ぶ接点が私たちの心のなかにある。だから“意思の力”によって超自然的存在との交感が可能になる。その技法が、まさしく召喚魔術なのである。
話をもう少し深化させると、召喚魔術のメカニズムは次の3つの原理に基づいている。
①現実の日常的生活(現界)とは異なる超自然的世界が存在し、そこでは固有の超自然的存在が活動している。
②マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙=人間)は相互対応関係にあり、大宇宙の原理・現象はそのまま小宇宙である人間に対応できる。逆もまた真である。
③人間は神性を有する存在であり、その意志力に不可能はない。
そうした原理に基づく召喚魔術は“意思(精神)の科学”といってもいい。なかでも重要なのは、魔術師が超自然的存在を召喚しようと精神的エネルギーを集中した結果に得られる心的状態=変性意識状態で、これを「精神のスライド」とも呼ぶ。現界と超自然的世界が重なり合い、リンクしていることは前記した。
魔術師の精神はその両世界観をスライドする。別の表現をするならば、精神の次元の移動である。
周知のように、魔術では儀式が重要視される。さまざまな用具を使ってなされる魔術儀式は、精神エネルギーを集中して精神のスライドを可能にするために有効な舞台装置でもあるのだ。
論理的な話はこの程度にして、以下、大魔術師による召喚魔術の実例をいくつか紹介しよう。
まずは、天使召喚魔術の完成者として名高いジョン・ディー。彼が水晶球鑑照による天使召喚魔術の研究をはじめたのは1580年ごろだった。だが、彼自身には天使や精霊と直接コンタクトする能力はなく、失敗が続いた。そこで霊能者を募集、エドワード・ケリーをパートナーに迎えたことにより、研究は飛躍的に進展する。
最初に出現したのは大天使ウリエルと大天使ミカエルで、以後、諸天使や精霊の出現が相次ぎ、神聖台座(ホーリー・テーブル)の設置法、黒曜石製の魔法の鏡や儀式用の蝋盤、アエメトの印章の使用法、水晶球の観照法、祈禱文などを直接伝授された。
召喚の儀式は次のような手順で行われる。
まず祈禱文を唱え、ケリーが30分ほど水晶球を凝視する。やがて水晶球のなかに天使や精霊が姿を現し、ケリーにメッセージを授ける。それをディーが筆記し、カバラなどの隠秘学の知識によって分析する。ただし、メッセージは一方的に授けられるとはかぎらず、ディーが質問して、天使や精霊がそれに回答する場合もあった。
その記録はきわめて膨大な量にさかのぼり、ディーの生前に公開されることはなかったが、草稿は大英博物館に保管され、のちに『交霊日記』として編纂・出版された。
一例をあげよう。1583年5月5日の記録だ。
ディー ケリーが大海原を航海している多くの船を幻視し、また女性の首が背の高い男に切り落とされるという幻を見ました。何を意味しているのでしょうか。
ウリエル ひとつはこの国に対する外国の脅威を表している。しかし脅威は長くつづかない。もうひとつはスコットランドの元女王の死を意味している。しかもそれは間近に迫っている。
ふたつの予言であり、いずれも的中した。先に成就したのは後者で、4年後の1587年、スコットランドの元女王メアリー・スチュアートがエリザベス女王暗殺の陰謀の疑惑で処刑されたのだ。前者の外国の脅威は、1588年に生起したスペインの無敵艦隊のイングランド侵入をさしており、英仏海峡で行われたアルマダ海戦でイングランドは勝利して脅威は排除されたのだった。
このように、天使からさまざまなメッセージが伝えられたが、そのなかには奇妙な言葉もあった。これも一例をあげる。
「マダリアツァ・ダス・ペリファ・リル・カビサ・ミカォラゾダ・ダアナイア・カオサゴ・オフィフィア・バルゾディンダラサ・イアダ」
天使の翻訳によると、「おお、汝、第一の気の内に住む者よ、汝は大地の部において強大なり。汝、至高の者の審判を行う者」の意だ。
これを「エノク語」という。天使召喚魔術に用いられた神秘的な言語で、「天使の言葉」とも呼ばれ、21文字のアルファベットからなる。起源は不明で謎に包まれているが、ディーとケリーが捜索したデタラメな言語ではない。1970年に言語学者ドナルド・レイコックがコンピューター分析を行い、独自の文法と構文を持っている、と証言しているのである。
19世紀フランスのオカルト界をリードしたエリファス・レヴィも、イエス・キリストと同時代人だったティアナのアポロニウスの霊を召喚したことで知られる。
手順はこうだった。まず儀式用の4脚の鏡台、大理石の祭壇、2基の銅製の香炉を設置したあと、白い法衣をまとい、金鎖にクマツヅラの葉を巻きつけた王冠を被り、長剣を握ったレヴィが香炉に香を投じて召霊の祈禱文を唱える。朦々と煙が立ち昇るなか、やがて祭壇のあたりにぼんやりとした人影らしきものが出現した。その人影はすぐに消え、次いで鏡のなかに青ざめた顔が映しだされた。
レヴィは思わず目を閉じ、「アポロニウス、アポロニウス、アポロニウス」と唱えた。再び目を開くと、眼前に黒衣の痩せたギリシア人が立っている。レヴィはアポロニウスに対する質問を心のなかでつぶやいた。刹那、頭のなかで何かが爆ぜたと思うや、失神して床に崩れ折れた。翌日、ようやく意識を回復したレヴィの脳裡に、アポロニウスとのやり取りが甦った。
レヴィ 私の心を占めているふたりの人間の関係は修復可能でしょうか。
アポロニウスの霊 死!
レヴィは19歳下の若き女性を妻に迎えたが、妻は不倫に走りレヴィを捨てて出奔した。未練があるレヴィは、復縁できるかどうかを尋ねたのだった。これに対し、アポロニウスの霊は死=復縁不能と回答したのである。
この召喚を機に、レヴィは魔術師として本格的かつ精力的な活動を開始。『高等魔術の教理と祭儀』『魔術師』『大神秘の鍵』などの魔術関係の著作を発表。19世紀以降のヨーロッパ異端思想や文学、芸術などに甚大な影響を与え、「近代魔術の父」とまで評さるようになるのである。
召喚魔術を語るうえで絶対に欠かせない大魔術がもうひとりいる。エノク語を魔術結社「ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け団)」の公式言語に定め、エリファス・レヴィの転生者と自称し、「20世紀最大の魔術師」の異名を取ったアレイスター・クロウリーだ。
精神をスライドさせて超自然的世界に入ることができる魔術師にとっては、不可視の天使や悪魔、精霊などの超自然的存在も実体を備えた存在物であるという。したがって超自然的存在を実体として現実に出現させることができる、と魔術師は主張する。
それを実証したのがクロウリーで、彼は「アブラメリン魔術」の技法を駆使し、悪魔を実体として限界に召喚したことがある。
アブラメリン魔術とは、14~15世紀に生きたユダヤ人アブラハムが諸国を流浪した末、ナイル河畔で出会ったアブラメリンと名乗る老賢者に伝授された悪魔召喚の秘法だ。ゴールデン・ドーンの創設者のひとりであるマグレガー・メイザースがパリのラルスナル図書館に眠っていた『術士アブラメリンの聖なる魔術の書』を発見、1897年に英訳出版したことにより、世に知られるようになった神秘的魔術だ。
この魔術を実践するには、事前に6か月間にわたって肉体と精神を自己聖化しなければならない。その大略は次のとおりだ。
▼住む場所は常に清潔にし、毎週土曜日に浄化のため寝室で神聖な香をたく
▼酒類や薬は完全に断つ
▼動物の肉を食さない
▼心を常に霊的な事物に向けておく
▼慈善や物乞いには快く応じる
▼不信心(邪悪)な人々とは交際しない
▼1日に2時間以上、神聖な書物を読む
▼日中に眠らない
そして、このような精進潔斎の6か月を経て「聖守護天使の知遇と会話」を達成した魔術師は思いのままに悪魔を召喚して使役できる、という。
クロウリーがアブラメリン魔術を実践したのは1899年、スコットランドのネス湖畔の館においてだった。その結果は戦慄を禁じえないほどに劇的だった。悪魔と111匹の従僕が出現し、館の内外で大暴れしたのだ。
クロウリーは、床の上に円を描き、円環の外側に六芒星を描いていた。これは魔術師が超自然的世界へ働きかけるときの結界のようなもので、召喚した超自然的存在が出現したとき、その限界を守らせて統制を加える働きをするのだが、それがまったく機能しない。悪しき魔物を閉じ込めておく小屋も用意していたが、それでも完全にはコントロールできない。悪魔と従僕は館内にあった家具、魔術道具を破壊するだけでなく、多くの関係者にさまざまな危害を加えたのである。
たとえば、従僕で不満や反抗の気配を毛筋ほども見せたことがなかった召使は、殺意を剥きだしにしてクロウリーに襲いかかった。禁酒主義者だった馬車の御社は、突然、飲めなかったはずの酒を浴びるように飲むようになりアルコール中毒に陥った。ロンドンからやってきていた女性透視霊能者は、ロンドンへ戻った直後に身を持ち崩して娼婦になった。館に出入りしていた食料品店の男は、クロウリーから受け取った小切手にサインされている悪魔の名を見た瞬間、肉切り包丁で自分の太腿の動脈を切って出血死した……。
悪魔の制御には失敗したものの、その後、クロウリーは超自然的存在である知性体エイワスを召喚して知遇を得、エイワスを自身の守護天使と見なした。エイワスもまたそれに応えるように、クロウリーに絶対的な魔力を与えた。ちなみに彼の代表的著作『法の書』は、1904年4月8~10日にエイワスから授けられたメッセージを筆記したものといわれる。
天使や悪魔、精霊などの超自然的存在を現界へ呼びだして災厄や奇跡を起こす召喚魔術は、まさしく隠秘学の究極の奥義なのである。
(月刊ムー2016年12月号掲載)
webムー編集部
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