伝説に彩られた『遠野物語』の里 岩手県遠野市「カッパ淵」/日本不思議再興計画

文=中村友紀

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    カッパや座敷童子が棲む民話のふるさと

     北上山地中南部に位置する岩手県遠野市。山に囲まれた、人口3万人ほどの盆地の街だ。
     明治時代、遠野の土淵村で生まれ育った佐々木喜善が、民俗学者柳田國夫と出会い、山の神、家の神(座敷童子)、天狗、カッパ、オシラサマなど、故郷遠野に伝わる数々の不思議な話を語った。その結果、生まれたのが『遠野物語』だ。かくして遠野は、「民話のふるさと」として全国に知られるようになった。

    「思ふに遠野郷にはこの類の物語なほ数百件あるならん。われわれはより多くを聞かんことを切望す」

    『遠野物語』の冒頭で柳田が記したように、遠野はまさに民話・不思議話の宝庫だった。

     そのすべてを紹介するわけにはいかないが、なんといっても有名なのは、土淵の常堅寺裏にある「カッパ淵」だろう(寺の境内には、頭に皿が乗ったカッパの狛犬もある)。

    遠野市土淵の常堅寺裏にある、カッパが出没するという「カッパ淵」。
    常堅寺境内には、頭に皿を乗せたカッパの狛犬もある。

     そもそも遠野を流れる川には多くのカッパが棲んでいるとされており、カッパがイタズラで馬を川に引き込もうとした話や、ある家でカッパの子が生まれたという話などが数多く伝わっている。カッパの目撃記録が残されている場所は14か所もあり、最後に目撃されたのは1975年7月のことだったという。
     おそらくこれには、遠い昔、遠野の盆地が湖だったという伝説がベースにある。もともとは水の郷であり、人々は水の神と深く結びついてきたのだろう。

     ちなみに遠野市では、「カッパ捕獲許可証」なるものを発行している。観光協会窓口などで簡単に手に入るので、楽しみのひとつに加えていただきたい。
     また『遠野物語』には、座敷童子についても「旧家には座敷童子と云ふ神の住みたまふ家少なからず」と書かれているのだが、これはこの地方では広く伝わる「家の神」だったようだ。
     実際、晩年に佐々木と交流があった隣の花巻出身の宮沢賢治も、自らの童話のなかにも座敷童子を登場させているのだ。

    柳田國夫にたくさんの遠野の伝承を語った佐々木喜善の墓。

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    (月刊ムー 2026年10月号)

    中村友紀

    「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。

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