3000年前の「ビリェーナの財宝」に隕鉄製品があった! アリカンテの古代技術がアトランティス解明のカギとなる

文=遠野そら

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    スペインで発見された古代の財宝に宇宙由来のテクノロジーを発見。アリカンテにはアトランティスを継承する文明が栄えていたのか?

    古代の鉄製品はオーパーツ?

     昨年12月、スペイン国立研究評議会(CSIC)歴史研究所主導で形成された国際研究チームが衝撃的な分析結果を発表した。推定3000年前のイベリア半島最大の遺物「ビリェーナの財宝」に宇宙由来の隕石鉄が使用されていることが明らかになったというのである。

     そもそもから説明しよう。
    「ビリェーナの財宝」とは、1959年~1963年にかけてスペイン南東部アリカンテ州の遺跡群カベゾ・レドンドから出土した、宝飾品や装飾品のほか、鉢、壺など、59点からなる古代の財宝である。

    ビリェーナの財宝の一部。総重量は約10キロだという。
    https://www.thevintagenews.com/2016/12/05/the-treasure-of-villena-one-of-worlds-most-valuable-treasures-from-the-european-bronze-age/ より

     当時の分析の結果、いずれも高純度の金の他、銀、琥珀、鉄が使用されていることが明らかとなり、その精巧かつ細部にまで施された繊細な彫刻から、ヨーロッパにおける”ギリシアのミケーネ王廟の遺物に次ぐ重要な財宝”とまで称されるようになったのだ。

    精巧な加工が施された23.5Kの金のブレスレット。画像=Wikipedia

     しかしながら、ビリェーナの財宝が注目を集めたのはこれだけではない。財宝の一部に使用されていた鉄製品にあった。製造年代については「BC1500~1000年前後」と発表されたものの、時はまだ青銅器時代。後期にさしかかっているとはいえ、イベリア半島で鉄の加工が始まったのはBC850年ごろ。金や銀とは異なる鉄工技術が浸透していない時代の遺物だったのである。

     これにはオーパーツ説を始め、「当時の年代測定機器の精度」「古代人が我々の知り得ない高度な技術を持っていた」説が飛び交い、博物館でも一時非公開にするなど長いことその真相は謎のままであった。

    宇宙から来た「隕鉄」を加工していた

     発見から約60年が経った2023年。ついに謎の深層に挑むべくプロジェクトが発足。スペイン国立考古学博物館、歴史研究所、サウジアラビアのディルイーヤ門開発局などの研究者によって、再調査が行われたのだが、その結果は、謎が謎を呼ぶ結果となったようだ。

    「これはイベリア半島最初で最古の、隕石鉄を加工した鉄の遺物です」

     こう発表したのはスペイン考古学博物館の研究チームである。それによると、今回分析したのは、ブレスレットと、剣の柄と思われる装飾品2点。分光量分析にかけたところ、前者には5.5%、後者には2.8%のニッケルが含まれており、これらが約100万年前の隕石鉄(隕石由来の鉄ーニッケル合金)を加工した遺物であることが明らかになったのである。

    テソロ・デ・ヴィレナの宝庫、隕石からの鉄で作られたブレスレットの一部。
    隕石鉄で作られたブレスレット。どのような人物が身につけていたのだろうか。
    https://tp.revistas.csic.es/index.php/tp/article/view/929/1110
    エンプニャドーラ デル テソロ デ ビリェナ
    剣の柄頭と思われる隕石鉄の遺物。金で十字を表している。
    https://arkeonews.net/3000-year-old-treasure-on-the-iberian-peninsula-made-with-material-from-a-meteorite/

     剣の柄頭は直径約8.5センチ、柄頭は薄く加工した金が十字(四芒星)を表すように貼られており、これには天空と地上を表す意味があることから儀式で使用されていたものと推測されている。

     どちらも劣化が見られるものの、当時の人々に鉄を加工する技術があったことは間違いないだろう。

    アリカンテはアトランティスを受け継いでいる?

     研究チームは今後もさらなる分析を進める、としているが、著者はまだ明確な答えが出るには時間がかかるのではないかと考えている。というのも、ビリェーナの財宝が出土したアリカンテ州といえば、古代の謎の宝庫ともいえる地域だからである。

     アリカンテ州で出土した謎の遺物として有名なのは、BC4年ごろに作られた「エルチェの貴婦人」だろう。女性のモデルについては、地位の高い巫女や女王、女神が挙げられているが、当時の文化とは一致しない装飾や、ヘルメットのような被り物など、不可解な点があまりにも多く明らかになっていない。

    今なお多くの謎に包まれている「エルチェの貴婦人」。画像=Wikpedia

     考古学者の見解によって何通りもの説が存在しているが、地元での通説は「アトランティスの女神像」である。ここアリカンテ州は、アトランティスの子孫とされる古代フェニキア人によって建設された都市であることから、エルチェの貴婦人は、アトランティス大陸の女神をかたどった像だとして広く信じられているのだ。

     もちろんこれには賛否両論あるが、イベリア半島とアトランティス大陸の伝説をみれば、絶対にないと言い切れないのもまた事実である。

    アジア人にも見える清麗とした顔つき。一部「古代宇宙飛行士説」も囁かれているという。

    「ビリェーナの財宝」を紐解くことで、その結果がアリカンテ、ひいてはアトランティスの謎を解くきっかけの一つになるかもしれないーーというのは少々考えすぎだろうか。だが今後も研究チームの分析結果を注視していきたいと思う。

    <参考>
    https://www.sciencealert.com/strange-metal-from-beyond-our-world-found-in-ancient-treasure-stash
    https://tp.revistas.csic.es/index.php/tp/article/view/929/1110
    https://arkeonews.net/3000-year-old-treasure-on-the-iberian-peninsula-made-with-material-from-a-meteorite/

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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