“平成の神隠し”は終わらない…! ホラー映画「きさらぎ駅 Re:」が映す都市伝説と異界の現在地 

文=杉浦みな子

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    かつて、インターネット上を賑わせた異界の駅をモチーフにヒットした都市伝説映画「きさらぎ駅」。その待望の続編がついに登場!「きさらぎ駅 Re:」6月13日から公開です。

    あの電車は今も異界へ続いている

     遡ること約20年前、それはインターネット匿名掲示板「2ちゃんねる」(2004年当時)のスレッドに書き込まれた一連の投稿から始まった。 

     投稿者は“はすみ”と名乗る女性。彼女がオカルト板に書き込んだのは、「静岡県内で電車に乗っていたはずが、いつの間にか“きさらぎ駅”という現実には存在しない駅に辿り着いてしまった」……というリアルタイム実況だった。彼女は“きさらぎ駅”に降り立ち、そこで起きる様々な怪奇体験を引き続き投稿。しかし約4時間続いたその実況は半ばで途絶え、そのまま彼女はスレッドから姿を消した。 

     “はすみ”は、“きさらぎ駅”という異界の地に迷い込んで、現実世界に帰ってこれなくなったのではないか……? この未解決の異世界体験談は、そのまま現代の神隠しとしてネットで語り継がれる都市伝説となった。後年、“はすみ”を名乗る人物や、「きさらぎ駅に行ってきました」と自称する人物がネット上に現れたりもしているが、真偽は不明である。 

     やがて2022年、この物語を大胆に映像化した映画「きさらぎ駅」が公開され、令和の世でもその認知度が上昇することとなる。「2ちゃんねるの呪い 劇場版」や「真・鮫島事件」で知られる監督・永江二朗が手がけた同作は、SNSや口コミを中心に話題となり、この手の都市伝説映画としては異例のヒットを記録。令和の時代にも、異界駅の物語が多くの人々を惹きつけたのだ。 

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

     そして……そんな「きさらぎ駅」のヒットから3年を経た今、異界への電車は再び動き出している。待望の続編「きさらぎ駅 Re:」(きさらぎえき・り)が、2025年6月13日(金)から全国ロードショー中だ。 

     引き続き永江監督がメガホンを取っている本作は、前作を視聴した誰もが思う「あのラストシーンの後どうなったの?」に応える正統な続編である。まさに、視聴者に対する監督からの“Re:=リプライ”のような……。ネタバレなしで、その見どころを紹介していこう。

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

    「Re:」で描かれる異界の痕跡

     新作「きさらぎ駅 Re:」は、前作から3年後の今を描く。主人公は、前作で“きさらぎ駅”から奇跡の生還を果たした女性・宮崎明日香(本田望結)。しかし彼女の姿かたちは、“きさらぎ駅”に迷い込んだ20年前のままで止まっていた。

     異界の痕跡を帯びた存在となり、現実世界で孤立する明日香。そこにジャーナリストの角中瞳(奥菜恵)が現れ、“きさらぎ駅”の存在を訴える明日香のドキュメンタリー番組を制作する。その取材をきっかけに、明日香は再び“きさらぎ駅”へと導かれていくのだった。 

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

     “きさらぎ駅”の物語に人々が惹きつけられる大きなポイントは、日常のすぐそばにあるほんの少しのズレから、突然異界へ迷い込んでしまう“隣り合わせ感”。「通勤・通学の途中で」「電車に乗っていたら」という身近なシチュエーションで、ある瞬間から現実のルールが裏切られる感覚は続編でもしっかり引き継がれていて、前作のファンからすると「この不条理感、待ってました」という感じだ。 

     なお前作は、ホラー演出としてFPS(ファースト・パーソン・シューティング)といわれる本人視点からの映像を駆使したり、RTA(リアルタイムアタック)の要素を取り入れるなどの手法も話題になったが、本作ではズバリ、“きさらぎ駅のゲーム的な構造”に言及するセリフがあるのも面白い。さらに今回は、いわゆる「ループ」と「ルート分岐」の要素が強化されていて、見応え抜群である。

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

    あのスレに20年越しに付いたリプライ

     そして、ムー的に「なるほど」と思うのは、YouTubeやSNSが全盛になっている現代の感覚で、人々が都市伝説と向き合う姿を映していることだ。

     きさらぎ駅の他にも、鮫島事件や杉沢村伝説など、2000年代のインターネット匿名掲示板全盛期に話題となった都市伝説は、今や多くの人がよく知るオカルト基礎知識の一部となっている。 

     それらの都市伝説が、今の時代に蘇ったらどう展開するのか? そういったテーマが、“きさらぎ駅”をフィーチャーした形で描かれているのが、本作の見どころだろう。20年前の姿のまま止まっている明日香は、言うなれば“平成のインターネットの亡霊”的な存在。それが令和の世で孤立しながらも奮闘する姿が象徴的である。 

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

     また、タイトルの“Re:”にも様々な意味が読み取れる。一つは冒頭で述べた通り、前作のファンに向けた監督からの返答。そしてもう一つ挙げるとするなら、「2ちゃんねる」のスレッドに付く返信だ。 

     そう、新作「きさらぎ駅 Re:」の内容は、20年越しにあのスレに付いた誰かからの“Re:=リプライ”なのではないか……? そう思って観ると、また本作は深みが増す。未解決だった都市伝説の“続き”が投稿されたような感覚。異界からの返信を、ぜひ映画館で確認してほしい。

    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会

    「きさらぎ駅 Re: (きさらぎえき・り)」
    https://kisaragimovie-re.com/
    【公開日】2025 年 6 月 13 日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、イオンシネマほか全国ロードショー
    【出演】本田望結 / 芹澤興人 瀧七海 寺坂頼我 大川泰雅 柴田明良 中島淳子 奥菜恵 / 佐藤江梨子 / 恒松祐里
    【監督】永江二朗
    【脚本】宮本武史
    【主題歌】弌誠「ガタゴト」(VAP)
    【企画・制作】キャンター
    【配給】イオンエンターテイメント
    ©︎2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
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    杉浦みな子

    オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
    音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。

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