本当に“出る”…と噂された最凶「お化け屋敷」 としまえんの「ミステリーゾーン」/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
2年前に閉園した遊園地「としまえん」。穴場的人気スポットだったお化け屋敷には、時間を重ね熟成しきった独特な空気が漂っていた。
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浅草花やしきに伝わる怖い噂。その真相を現役スタッフに尋ねたところ、さらに奇妙な事実が明らかに……!
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「浅草花やしきのお化け屋敷には、本物の幽霊が出る」
そんな噂を耳にしたことのある人も多いのではないだろうか。歴史ある建物にこの世ならざるものが住むという話は古今東西枚挙にいとまがないが、開園から170年をこえる日本最古級の遊園施設、浅草花やしきも例外ではないということだろうか。
じつは、9月4日から、浅草花やしきにて「不思議ムー園地 浅草花やしき」という期間限定のコラボイベントが開催される。ムー創刊45周年の記念企画であり、展示室「ムー不思議博覧会」に世界の謎を集めたり、園内各所にミステリーを潜ませたり……というものだ。
ともあれ、かねてから噂の「花やしきの幽霊」の真相を調査するのにこれ以上のチャンスはない。
コラボイベント「不思議ムー園地」現地視察のタイミングで花やしき現役スタッフの方に質問をぶつけてみたところ、その噂は「半分はあっていて半分は違っている」という非常に興味深いアンサーがかえってきた。
「もとは私もお化け的なものは信じていなかったんですが、ここで働くようになってからはよく聞きますし、自分でも何度も不思議な体験をしています」
というのは、勤続30年のベテランスタッフ・松本さん。
では、やはり噂に間違いはないのでは?
「いえ、たしかにお化け屋敷に幽霊は出るんですが、それはお化け屋敷に限ったことではないんですよ」
2023年に創業170年を迎えた浅草花やしきで、お化け屋敷の歴史は比較的短い。
初代のお化け屋敷がつくられたのは今から40年前の1984年。和風のウォークスルー型とよばれるスタイルで、その後二度のリニューアルを経て現在のお化け屋敷は3代目となる。なんとこのうち、初代、2代目のお化け屋敷では当たり前のように不可解な出来事が起こっていたそうだ。
松本さんは、「利用者のいない時間にセンサーが“誤作動”して装置が動き出す」といった状況にはたびたび遭遇している。
その中で、お化け屋敷の出口から入り口へと、まるで逆走してくる「何か」に反応するように次々に装置が動いたことがあり肝を冷やしたこともあるという。入り口に待機している松本さんに向かって、ちょうど人間が移動するほどのスピードで順番に近づいてくる“誤作動”をみながら「あれが最後までくるとまずいんじゃないか……」と思ったが、その時はぎりぎり入り口から3つ前の装置でとまったそうだ。
また、小学生くらいの利用者から「さいごにいたおばあちゃんの幽霊がいちばんこわかったよ」と声をかけられ首を傾げる、といったこともしばしば。花やしきのお化け屋敷の終盤にはおばあちゃんの幽霊(の仕掛け)はないはずなのだが……。
2011年にリニューアルオープンした2代目お化け屋敷にも奇妙な“誤作動”はひきつがれてしまい、人感センサーで稼働するモニターが1か所だけ、誰もいないのに動いてしまうという事案が頻発。オペレータがチェックしても異常はなく、結局盛り塩と神社のお札で対応したそうだ。
そのうち徐々に誤作動はなくなっていったそうだが、機械が経年するほど誤作動が減るというのも奇妙な話だ。じつは2代目お化け屋敷には初代から引き継いだ備品を置いておく隠しスペースがあり、スタッフは「もしかしたら、ものと一緒に何か連れてきてしまったのかもしれないね」と噂しあったとか。
ただ、松本さんによれば、「幽霊が出るのはお化け屋敷に限ったことではない」のだ。花やしきの関係者が多く見てしまうのは圧倒的に「子供の霊」で、それもお化け屋敷以外の場所で、なのだという。
こんな体験をしたスタッフもいる。
ある日の閉園後のこと。スタッフのAさんが片付けをしていると、目の端に園内を走っていく子供の影がうつった。その子が駆けていく先には池がある。あぶないな、いやでももう閉園してお客さんは誰もいないはずだけど……と思った直後、池の方から大きな水音が響いた。それはちょうど子供くらいの大きさのものが水に落ちる音で、やっぱりあの子が落ちたんだ、と思ったAさんは慌てて池にかけつける。ところが、そこには子供の姿などなく、それどころか水面はまったく穏やかで、波紋ひとつ立っていなかったのだという。
園内のイベント企画に長年携わってきたこちらもベテランスタッフの津村さんも、不思議な話を見聞きした数は松本さんに引けを取らない。これは今よりも徹夜仕事が多かった、すこし前の時代に津村さんが体験した話だ。
その頃はイベント前後には夜中までさまざまな人が働いていて、出演者も多かったため、ある建物の2階の一角を控え室に改装して使ってもらっていた。そんなある夜のこと、リハーサルのため遅くまで待機していたひとりの出演者が、トイレから戻るなり津村さんにこう訪ねたのだという。
「あの、なんでこんな時間にトイレに子どもがいるんですか?」
もちろんそんなはずはないのだが、津村さんは「ああ、見ちゃったのか……」と思ったそうだ。というのも、そのトイレこそ、花やしき内でいちばん〝ヤバい〟と噂される場所だったからだ。
感じやすいタイプの人はなぜか口をそろえて「あのトイレは使えないです」という。初めて花やしきで仕事をしたキャストや、短期アルバイトの学生、さらには取材のために訪れたメディア関係者など、噂を知るはずのない人まできまってそこを怖がる。わざわざトイレのたびに1階までいく人もひとりやふたりではなかったそうだ。いわゆる視える系で、こんな忠告をする人もいた。
「花やしきには子どもの霊がたくさんいてあちこちで遊んでいるんだけど、うろうろしているのはそんなに怖くはない。ただ、トイレ前にいる子だけは一切動かない。だから、あそこだけは気をつけて」
実はそのトイレは今、お化け屋敷の目の前にある。正確には、お化け屋敷がトイレの前に引っ越してきたのだ。
花やしき170周年のリニューアル計画のなかでお化け屋敷が偶然そこに移転されることになったのだが、古参スタッフには「よりにもよってそこに移すの?」と思った人も多かったとか。もちろん建物自体はきれいにリニューアルされ古さや妙な気配などはまったく感じられないのだが、目撃情報が多発した「動かない子供」は、まだそこにたたずんでいるのだろうか……。
そして、花やしきのお化け屋敷にはもうひとつ、さらに不思議な、未解明の謎がある。
「お化け屋敷の下に、謎の地下室があった」というのだ。
現在のお化け屋敷はスカイプラザのある建物の2階にあるが、初代のお化け屋敷はここに隣接する古い建物の1階にあった(現在お花見茶屋がある位置)。建物自体は取り壊し新築されているが、その古い棟の地下に、正体不明の地下室があったのだ。
便宜上「地下室」と呼ばれてはいたものの、そこはただの四角い空間といったほうが正確なスペースだったという。降りられはするが、階段もかなり急で不便なものしかなかった。なにに使っていたのか、なんのための空間なのかはまったく謎で、スタッフの間でも「昔の防空壕だったのでは?」「ゾウの餌を置く場所だったんじゃないか?」などさまざまな説がささやかれたが、結局ほんとうのところはわからないままに旧棟とともに取り壊されてしまったのだという。
花やしきに限らず、浅草一帯は何度も大きな災害に見舞われている。特に被害が大きかったのは大正12年の関東大震災と、昭和20年の東京大空襲だ。花やしきではかつて大小さまざまな動物を飼育していたことがあり、震災時、戦時下ともに脱走や食糧の対策として殺処分せざるをえなかったという悲しい歴史もある。
そうした過去をみると、防空壕説、エサ置き場説とも一定の説得力があるが、決定的な決め手はない。なにより、花やしきほどの規模の施設で、そんな重要なスペースがまったく存在理由を忘れ去られているという事実そのものがなんとも奇怪だ。あるいは、実は設置した当初からその意図を秘密にされていた部屋だったのではないか、とも想像してしまうが……。
ただ、謎の地下室にまつわる事故や怪談があったということはなく、その存在も封印されていたわけではない。一時期はお化け屋敷の一部としてその地下室が活用されたこともあったほどだ。また初代のお化け屋敷を取り壊したときには、供養のためにスタッフのほか一般客も参加した盛大な大宴会が行われており、現在この場所にまつわる怪談がささやかれている事実はない
初代、2代目、現3代目とお化け屋敷をつくる際には必ずお祓いも行なわれていて、そのためか2023年にオープンした現お化け屋敷では特に奇妙な話はないという。もちろん「いまのところは」というカッコつきながら、だが。
というわけで、浅草花やしきの幽霊の噂については、「本当にある」のだ。
9月4日に開幕する「不思議ムー園地 浅草花やしき」では、ムーが世界の謎を持ち込み、浅草花やしきの謎にも迫る展示室「ムー不思議博覧会」が開設される。その場所は、奇しくもお化け屋敷とその前のトイレから階段を上がってすぐのフロアだ。「ムー不思議博覧会」に行く前後に、ぜひその目で“都市伝説”の現場を確認してほしい。
【開催期間】2024年9月4日(水)~10月14日(月・祝)*9月10日は休園日
【営業時間】10:00~18:00 ※天候により変動あり ※最終入園は閉園30分前
【開催場所】浅草花やしき
【特設ページ】https://www.hanayashiki.net/events/event/mu/
※掲載内容は予告なく変更・中止になる場合がございます。予めご了承ください。
webムー編集部
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