封印されたフィラデルフィア計画の真相とニコラ・テスラ/並木伸一郎・フォーティアンFILE
世界に存在する謎に並木伸一郎が鋭く切り込む。今回は、多数の犠牲者を出した恐るべき実験「フィラデルフィア計画」の真相に迫る。
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都市伝説研究家の宇佐和通氏の新刊「陰謀論時代の闇」から、知っておくべき陰謀論的常識を紹介。
1984年の話。『フィラデルフィア・エクスペリメント』というハリウッド映画が公開された。いわゆるB級映画なのだが、今では多くの熱狂的なファンがついているカルトムービーという位置づけになっている。この項目では、この映画のタイトルにもなっているフィラデルフィア実験について掘り下げていきたい。
話の広がり方は都市伝説的だった。
1943年、フィラデルフィア海軍造船所でとある極秘実験が行われたとされている。目的は、肉眼では見えない状態で戦艦を敵国の領海に配置する機能を持たせる技術の開発だった。実験に使われたのは、アメリカ海軍所属の駆逐艦USSエルドリッジだ。
陰謀論としての芽は、1955年にモーリス・K・ジェサップというライターが、実験の関係者を名乗る人物から送られてきた手紙を受け取ったことから始まる。それ以来、実験に関する具体的な内容の情報を独占的に入手し、発信し続けていたジェサップは、1959年4月19日に自分の車の中で亡くなっているところを発見された。死因は一酸化中毒だったので自殺ということで処理されたが、何者かに殺害されたという噂が生まれる。陰謀論としての地位は、ここで確定したと言っていいだろう。
ジェサップに情報を提供していたのは、カール・M・アレンという人物だ。彼がジェサップに送った手紙は50通以上に達する。なぜアレンがジェサップを狙い撃ちのようにして内部告発の窓口にしたのか。今わかっているのは、強烈な〝つかみ〞のインパクトだけだ。
「私はエルドリッジから少し離れたところにいた。装置のスイッチがオンになると、全体がオーロラのような青みがかった緑色の光に包まれ、一瞬ひときわ明るく輝いた後に消えてしまった」
アレンに記述によれば、エルドリッジはしばらくして再び姿を現わしたのだが、その前に起きたとされることにも触れておくべきだろう。フィラデルフィアで消えたエルドリッジは一度バージニア州のノーフォーク海軍造船所に姿を現わし、その後再びフィラデルフィアに戻ってきた。これは機密報告書にも記されている事実だが、エルドリッジの乗組員はひどい火傷を負い、ぼうっとした状態だった。さらに驚くべきなのは、生きた状態のまま船体と結合している乗組員がいたことだ。腕や脚をはじめとする体の一部が船体と同化し、動けなくなっていた。
以来、フィラデルフィア実験はアメリカ政府による極秘実験の代名詞というニュアンスで語り継がれている。そして、アメリカ政府(少なくとも海軍)は1943年の時点でテレポーテーションと、そこから発展してタイムトラベルにまでつながる実験を行っていたという話が生まれた。話はやがて独り歩きを始め、ジェサップに情報を提供したカール・M・アレンという人物の信ぴょう性に関する検証は時間の経過と共におろそかになっていった。
アレン以外の目撃者や関係者の証言はまったくなかったが、『フィラデルフィア・エクスペリメント』が公開されてしばらく経った頃、アル・ビエレクという男性が体験者として名乗り出た。しかしこの男が語ることはアレンの存在よりも怪しかった。彼は実験に参加していたが、すべてを忘れるよう洗脳されていたというのだ、しかし映画がきっかけになって、当時の記憶が鮮やかに蘇ったという。特に言うなら、乗組員と船体が結合してしまっている光景だ。
海軍文書のアーカイブ的な『Naval History and Heritage Command』というサイトがある。このサイトで、1996年9月8日にアップされたフィラデルフィア実験関連の資料を見つけた。A4用紙1枚程度のスペースに記されているのは、海軍によるきわめてオフィシャルな形の否定だ。
「過去何年間にもわたり、いわゆるフィラデルフィア実験と呼ばれるものの問い合わせが絶えない。この実験は、海軍研究事務所が深く関わる形で行われたとされている。フィラデルフィア実験という言葉がマスコミに登場するたびに、海軍研究事務所および在フィラデルフィアの第4海軍管区に問い合わせが集中する状態が繰り返される。
フィラデルフィア実験神話の原点は1950年に発刊された故モーリス・K・ジェサップの著作にある。1943年においても、他の時点においても、海軍研究事務所が物体の不可視化実験に関わったことはない。よって、海軍実験事務所はフィラデルフィア実験に関するすべての情報を否定し、話のすべてが空想小説の中でのみ存在しうる事実として断定する」
ところが、である。1996年になってからこのような内容の文書をあえて公表する海軍の姿勢が怪しいということになり、陰謀論の枠組みの中ではフィラデルフィア実験がしっかりと存在し、その後の極秘プロジェクトの礎となったというコンセンサスが確立されている。
陰謀論とは、無視して何もしなければ増殖し〝いちおう〞の体でも否定すれば増殖の速度が爆発的に上がる。そういうものなのだ。
<書籍情報>
「陰謀論時代の闇 日本人だけが知らない世界を動かす〝常識〟の真相」
宇佐和通・著/笠間書院
https://shop.kasamashoin.jp/bd/isbn/9784305710024/
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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