酒呑童子、温羅、鬼女紅葉……日本人が恐れた魔の筆頭! 全国「鬼」スポット5選
伝説の魔怪や幻想の妖怪も、実は出身地があり、ゆかりの場所もある。 実在する「鬼」ゆかりの場所を厳選紹介!
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伝説の魔怪や幻想の妖怪も、実は出身地があり、ゆかりの場所もある。 実在する「河童」ゆかりの場所を厳選紹介!
福岡県久留米市瀬下町265-1
久留米市の中心部、筑後川のほとりに水天宮がある。全国にある水天宮の総本宮だが、ここは「筑後川に住む九州最強の河童王」と呼ばれる九千坊河童ゆかりのお社でもある。
こんな由来が語られている。
九千坊河童のふるさとは、中央アジアのタクラマカン砂漠を流れるヤルカンド川の源流という。約200年前、この地は猛烈な寒波に見舞われ、この地を脱出。流れ流れて一族は蓬莱島(日本)を目指し、熊本・八代の地に流れ着いた。そして球磨川に安住の地を得て1000年余、今度は一族の行いが咎められ、熊本城主加藤清正から追放される。のち久留米の有馬藩主の許しを得て筑後川に移住。以後、九千坊は、有馬公に感謝し、水天宮の水神の眷属として領民を水害から守ることを誓った――という。
筑後川は豊かな恵みをもたらす一方、たびたび氾濫や水難事故が起こる暴れ川だった。そのため水神の使いとしてはたらく河童が求められたのだろう。
当宮の授与品「河童面」は、鬼門・悪方にかかげれば魔除けとなり、商売繁盛、家運繁栄の御利益もあるという。水天宮からほど近い大石神社(伊勢天照御祖神社)には、九千坊河童の石像がある。
ちなみに、久留米市北野町の北野天満宮には河童(河伯)の手のミイラが伝わっている。菅原道真公が都の要職を追われて西へと逃れ、豊後中津(大分県)から筑後川を下って上陸したとき、追手に襲われ、間一髪で河童に助けられた。そのとき斬り落とされた片手とされ、25年に一度公開されている。
岩手県遠野市土淵町土淵
遠野のカッパ淵といえば、日本で一番知られたカッパの聖地だろう。カッパ狛犬でも知られる常堅寺の裏手を流れる小川の淵がそこで、その昔はたくさんの河童が住み着いていたといい、こんな伝説がある。
「淵へ馬を冷やしに行き、馬曳きが目を離したあいだ、河童が馬を淵に引き込もうとした。が、逆に引きずれて厩の馬槽に隠れたものの見つかってしまった。村じゅうの者がどうしてやろうかと相談した結果、『今後は村の馬に悪戯をしない』と堅い約束をさせて放してやった」(『遠野物語』58話より)
このほか、市の中心部を流れる猿ヶ石川の川端に2代続けて河童の子を孕んだ家があり、産まれた子は手に水かきがあった(『遠野物語』55話)という話もある。
いずれも、河童が人々の生活圏にすまう近しい存在だったことを偲ばせるが、研究者は、「飢饉で餓死した子どもを川に流したなどといわれていることから、供養の意味も込めて河童伝説が残ったのでしょう」とも語っている(大橋進氏、『水の文化』53号より)。
なお、この淵にカッパ神を祀った祠があり、子持ちの女性が乳が出るようにと願掛けをすれば叶うという。遠野では、子どもへの切なる思いとカッパの記憶が結びついているようだ。
できれば、おみやげ物色も兼ねて近くの遠野伝承園にも立ち寄りたい。
青森県つがる市、五所川原市の各所
青森県の北西(西北津軽地区)、つがる市や五所川原市の多くの寺や神社には「水虎様さま」が祀られている。数にしておよそ80か所。この地域独特の信仰で、「すいこ」のほか、「しっこ様」「せっこー様」とも呼ばれているという。
水虎は龍宮(龍神)の眷属の水神であるという。しかしてその正体は河童であるとも、河童を統率するもの(一説には1体の水虎は河童を48匹管理するという)ともいわれる。ところが、同じ呼び名でありながら、岩木川を挟んだ東の五所川原市には亀に乗った女神形のお像を水虎様と呼ぶ場合もある。こちらは、「龍宮の眷属」の属性に加え、弁財天や水神ミツハノメなどの女神イメージが投影されたのだろう。
一方、河童型の水虎様の最初は、岩木川西岸、つがる市木造の実相寺だったといわれる。
明治時代初期、多くの川が流れこむ湿地帯のため、水難事故がしばしば起こった。これを憂いた日順上人が、原因は河童の仕業だとして、「水虎大明神」の神格を与えて本尊を祀り、祟り鎮めの祈願をしたのが始まりだったという。
もとよりこの地では、河童は「メドチ」などの名で知られていたが、以後、水虎様の信仰が近郷に浸透し、現在では、祠の中を覗くと赤や深緑に着色されたお像など、さまざまなお姿をした水虎様に出会うことができる。
埼玉県志木市柏町1–10–22(宝幢寺)
「河童の里」を標榜している埼玉県志木市。市内には28体のカッパ像があり、訪れる者を楽しませている。
きっかけは、この地の河童伝説が日本民俗学の祖・柳田國男によって紹介され、全国に知れ渡ったことだ。こんな話である。
「昔、柳瀬川にすむ河童が馬を川の中にひきずりこもうとして失敗し、馬に蹴られて弱っていた。人々は焼き殺してやろうといきり立つが、宝幢寺の住職が不憫に思い、手を合わせて許しを請うた。結果、河童は許され、涙を流しながら川へ戻った。翌朝、和尚の枕元にフナが2尾置いてあった」
宝幢寺の境内、文殊堂の前に置かれた河童像は、まさに魚を捧げ持つお姿で、何とも可愛い。
熊本県天草郡苓北町志岐3
こちらの「河童の手」は、一年のうち7月末日の夏越祭でしか目にすることができない。それも祭り当日夜の「頭なで神事」にて。氏子らの頭を河童の手で撫で、水難除災をはじめ無病息災を祈願する祭事に用いられるのだ。
その昔、神社の神主が悪さをする河童を懲らしめるため、河童の両手を切り落とした。その後、河童がやって来て、「手がないと、どうにも不便です。もし、片手でも返してくだされば、そちらに残したもう片方の手で病が治るようにいたします」と、深々と頭を下げて詫びた。神主は河童の願いを聞き入れ、片手を返してやると、村で病が流行るたび、河童の手を用いて村人の病を治したという。
それが今もつづく「頭なで神事」の由来とされている。
河童のメッカ・田主丸 福岡県久留米市田主丸町
磯良神社(おかっぱ様) 宮城県加美郡色麻町一の関字東苗代28
曹源寺かっぱ大明神 台東区松が谷三丁目七番二号
雲八幡宮のかっぱ楽 大分県中津市耶馬溪町大字宮園407
一乗院の河童の手 長崎県雲仙市南串山町丙9218
「ムー」2023年11月号別冊付録から抜粋
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BYNFDY22/
本田不二雄
ノンフィクションライター、神仏探偵あるいは神木探偵の異名でも知られる。神社や仏像など、日本の神仏世界の魅力を伝える書籍・雑誌の編集制作に携わる。
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