人間の暗部をえぐる名作ヒトコワ映画がなぜか快感…? 「胸騒ぎ」するヒューマンホラー映画・5選

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    ヒトコワ映画「胸騒ぎ」への助走になるヒューマンホラー映画名作を紹介!

    幽霊や怪物よりも「人間」が怖い

     怪談のジャンルに「ヒトコワ」がある。幽霊が出るとか、呪いや祟りに襲われるとか、理不尽な事故が起こるとか、そういった出来事が「人間のしわざだったのかよ……!」と愕然する、というものだ。
     実話怪談の実話性(真実/事実)をどう考えるかはさておき、たいていは「幽霊に祟られたほうがマシだった」と思える恐怖を味わうことになる。幽霊は本や画面から(基本的に)出てこないが、ヒトコワとなれば「人間にはそういったやばいのがいるんだな」という感情がその後の日常を支配する。

     映画では「ヒューマンホラー」というカテゴリがわかりやすいだろうか。ホラーファンの中でも一定数以上の愛好家が現実と地続きの世界観で描かれる「後味の悪さ」をあえて求め、好む。その心理もよく考えたらどうかしているのだが、「映画のことだから」と区切りをつけて楽しむことで恐怖が快感に反転する気持ちもわかる。

     先日に紹介した北欧デンマーク発の『胸騒ぎ』(5月10日より日本公開)も、話題の(期待の)「最狂ヒューマンホラー」だ。

     さて、本作への助走として、これまで映画史に爪痕を残してきたヒトコワ系映画を紹介しよう。

    「胸騒ぎ」より。この手の作品は鏡越しの表情一発で不穏さがわかる。

    ファニーゲーム

     突然の暴力! その不快さそのまま! 惨劇描写で物議を醸した傑作というか、あまりにも挑発的で暴力的な内容に世界各地で物議を醸した問題作。 休暇を過ごす別荘で「卵を分けてくれませんか?」という訪問者が……という出だしからの切り返しがえぐい。(1997年オーストリア)

    セブン

    「七つの大罪」をモチーフにした連続猟奇殺人事件を捜査するという、一見わかりやすそうな道筋がもはや観賞のうえでは罠。まともな発想で連続殺人するような奇人を理解しようとしても無駄。怜悧な犯人に翻弄される気持ちよさがある。(1996年アメリカ)

    https://www.youtube.com/watch?v=SpKbZ_3zlb0

    ゲットアウト

     人種差別とブラックユーモアの組み合わせ。あらゆるマイノリティが抱く恐怖は「なにかがおかしい」ものだろう。欧米人がはっきりしている、なんてのは幻想で、建前の仮面をかぶって恐怖のサプライズの準備をしているだけなんだな。(2017年アメリカ)

    アングスト/不安

     オーストリアで実際に起きた出所後の殺人鬼による一家殺害事件を映画化、というリアリティ爆上げ済の作品。この題材にして殺人鬼に感情移入させようという監督の意図も怖く、作品自体が異常。観た人が「犬がかわいい」と口をそろえる。(1983年オーストラリア)

    アメリカン・サイコ

     エリートビジネスマンが繰り返す快楽殺人! 発覚されずに連続殺人を繰り返すのも、確かに馬鹿にはできないが、社会的には実に恐ろしい知性の使い方。必要なのは社会的な成功ではなく……なんだろう、愛なのか、結局?(2000年アメリカ)

    デンマークの最新ヒューマンホラー「胸騒ぎ」

     そして2024年は北欧デンマークから「胸騒ぎ」がやってくる。

    <あらすじ>
     イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、その息子のアーベルと出会い意気投合する。数週間後、パトリック夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪ねる。再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な誤解や違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。彼らの「おもてなし」に居心地の悪さと恐怖を覚えるビャアンとルイーセだったが、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせる——。

    ……というストーリーなのだが、家族ぐるみで「やばさ」に絡めとられていく過程は実に緩やかで自然で、現実でもよくある「あそこで引き返せば」「なぜ従ってしまったのか」という場面が生々しく、肌を刺してくる。
     デンマーク人家族がイタリアでオランダ人家族と出会うという状況からして、旅先のフワフワした感覚や母語が異なることによるすれ違いを孕んでいる。ひとつひとつは些細な違和感なのだが、言葉、食事、習慣などでことごとくズレていく不安のジェンガは崩壊の予感でいっぱい。ラスト15分、見事に状況はクラッシュするので、ヒトコワ、サイコホラー好きは期待して鑑賞してほしい。

     ディテールから味わう作品なので、どこがどうという説明は避けるが、英題が「Speak No Evil」というのはイメージのヒントになる。「言わざる」の意図は美徳か逃避か、未必の故意か。宇宙人も幽霊もモンスターも出てこないが、一方的に雄弁な悪魔がいる映画だ。

    <公開情報>
    『胸騒ぎ』
    2024年5月10日(金) 新宿シネマカリテほか全国公開

    監督:クリスチャン・タフドルップ
    脚本:クリスチャン・タフドルップ、マッズ・タフドルップ
    出演:モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース
    2022年/デンマーク・オランダ/ カラー/2.39:1/5.1ch/97分/英語・デンマーク語・オランダ語
    英題: Speak No Evil 原題:GÆSTERNE
    PG-12
    配給:シンカ 宣伝:SUNDAE 宣伝協力:OSOREZONE 提供:SUNDAE、シンカ
    公式サイト sundae-films.com/muna-sawagi
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    webムー編集部

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