廃墟で呪いのウェディングドレスに魅せられて……霊障と悪臭に悩まされたカップルの悲劇/遠野そら
ハイキングで偶然にウェディングドレスを発見! しかもそれが呪物だったという奇妙な体験談。
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「呪われた映画」といわれる名作ホラー「オーメン」シリーズ。最新作の公開を背景に、約40年も続く恐怖のジンクスを振り返ってみよう。
目次
あのダミアンの出生の秘密が明らかになる。
数々のショッキングなシーンに満ちた映画『オーメン』が公開されたのは1976年。その強烈な描写は多くの人々の脳裏に焼きついていることだろう。このほど、その前日譚である『オーメン:ザ・ファースト』が制作され、全世界同時公開されている(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)。
ローマのとある教会で新たな人生を歩みはじめたアメリカ人女性、マーガレット。彼女は悪の化身を生みだそうとする恐るべき陰謀を知ってしまい、ダミアン誕生の謎へとつながる真の恐怖への幕が上がる──。
映画の公開情報とあわせて解禁となった特報映像は、全編が逆再生映像という無気味な構成で、自動車事故や悪魔祓いの儀式、口を大きく開いた女性の上顎に見える悪魔の数字666がフラッシュバックのようにちりばめられ、「この子は運命だ」という印象的な響きの言葉で終わる。不穏な恐怖を感じさせる特報を目にして、公開を待ちわびていた映画ファンも多いことだろう。
そんなレジェンド・オブ・ホラーともいうべき「オーメン」シリーズの最新作公開に寄せて、今回はいわゆる“オーメンの呪い”とささやかれてきた不可解な事件や現象を掘りさげていく。
シリーズ第1作『オーメン』の物語は、アメリカの駐英大使ロバート・ソーンと妻キャサリンが、ダミアンを引き取るところから始まる。その出生の秘密を知らないまま、ダミアンを自分の子として育てるふたりだったが、彼が成長するにつれて恐ろしい出来事が起こり、周囲の人々が次々と不幸な事故や死に見舞われる。ソーンは徐々に不審を抱きはじめ、やがてダミアンの出生の秘密と、彼が持つ恐るべき運命に気づく──。
ホラー映画の金字塔とも称されるこの作品は、一方で映画に関わった人々が数々の不可解な事故や現象に見舞われたことでも知られている。プロデューサーであれ俳優であれ、スタントマンであれアニマルトレーナーであれ、ありとあらゆる関係者を巻き込んだ一連の不吉な出来事は、のちに“オーメンの呪い”と呼ばれるようになる。
呪いは第1作の撮影が始まる遙か前から始まっていたという人もいる。もしかしたら、最初の凶兆は映画会社のオフィスですでに芽生えていたのかもしれない。
広告会社の重役ロバート・マンガーはストーリーの基本的な構想を生んだ人物で、複数のスタジオに反キリストをテーマにした映画のアイデアを売り込んでいた。これを気に入ったのが、『ローズマリーの赤ちゃん』と『エクソシスト』の大ヒットを目の当たりにしていたプロデューサー、ハーヴェイ・バーンハードだ。
しかし、いざ映画の制作が具体化したとたんにマンガーの態度が豹変した。顔つきまで変わってしまったと証言する関係者もいたほどだ。マンガーは周囲の人々に「この映画は呪われるだろう」と語るようになった。そればかりではない。次のような意味深長な言葉も発していたという。
「もし悪魔の唯一の武器が人間の眼に見えないものであるなら、そしてその武器を取りあげるようなことが試みられたら、悪魔は必ずそれを止めようとするだろう」
予定通りプロジェクトを進めていくことを決めたバーンハードだったが、何か不吉なことが起こるという予感があったのか、撮影現場を訪れるときは必ず十字架を身に着けていたという。
そして、マンガーの言葉をなぞるように、呪いはさまざまな形で現実のものとなっていった。
最初の犠牲者は、ロバート・ソーンを演じた主演俳優グレゴリー・ペックの長男ジョナサンだった。映画がクランクインする数か月前の1975年6月25日に、自宅で死亡しているところを発見された。詳しいことはいまだに明らかにされていないが、拳銃自殺だったといわれている。
同年10月のある日、ペックは撮影が行われるロンドンへ向かう飛行機に乗っていた。ところが、大西洋上で機体が落雷の直撃を受けてエンジンのひとつが発火し、墜落寸前という状況に追い込まれてしまった。
その数週間後、同じルートでロンドンに向かったプロデューサーのメイス・ニューフェルドが乗った飛行機も、大西洋上で雷雲に囲まれ、こちらも墜落の危機に見舞われた。ニューフェルドは当時を思い出して、「これまで旅客機で過ごした時間の中で、もっとも恐ろしい5分間だった」と語っている。
クランクイン前に、同じ映画の関係者が、ロケ地に向かう飛行機の中で立てつづけに落雷事故に見舞われる確率はいったいどれほどのものなのか。
雷にまつわる話はこれだけではない。脚本家のデビッド・セルツァーも飛行機に乗っていて同じ目に遭っていた。この事実を知った関係者は、「これはおかしい」という感覚を抱いたはずだ。
さらには、プロデューサーのバーンハードがローマの撮影中にセットを訪れたとき、雷に直撃されそうになった。これで、主演俳優を含む関係者4人が落雷で命を失いかけたことになる。この時点で、呪いは確実に具現化していたようだ。
『オーメン』には、墓地から逃げだそうとするグレゴリー・ペックがロットワイラーに襲われる衝撃的なシーンが出てくる。撮影にはプロの調教師によって念入りに訓練された犬たちを厳選し、本番では全身を保護パッドで覆ったスタントマンを攻撃する段取りが組まれていた。
しかし、完全に調教されているはずの犬たちは、なぜか本気でスタントマンを攻撃しはじめたのだ。保護パッドがボロボロになったところで調教師が止めに入ったが、犬たちはまったく攻撃の手を緩めない。最終的にはその場にいたスタッフ全員で犬たちを引き放し、大きな事故には至らずにすんだという。
動物がらみのアクシデントはこれだけではなかった。
ダミアンの母親キャサリンを演じたリー・レミックが、ダミアンと一緒に車に乗っていてヒヒの群れに取り囲まれるシーンがある。このシーンは、車の外にいるヒヒの群れを怒らせるため、車内にもヒヒを乗せた状態で撮影が行われた。群れが怒ってあまりにも攻撃的になったため、恐ろしくなって思わず発したレミックの悲鳴は演技ではなかった。
幸いこのシーンの撮影中には何も起こらなかった。だが、呪いは想像もしていなかった形で現れた。車内にもヒヒを乗せておくというアイデアを出したトレーナーが、勤務先の動物園でトラに噛みつかれ、命を落としてしまったのだ。頭を狙ったトラの一撃により、即死だったという。
大西洋上で雷雲に囲まれながら、事なきを得たニューフェルドは、異なる形で再び呪いの波にさらされた。ロンドン滞在中に宿泊していたロンドン・ヒルトンホテルの建物が、アイルランドの独立を目指す武装勢力IRA(アイルランド共和軍)によって爆破されてしまったのだ。ただ、彼も妻もたまたま早めにチェックアウトしていたために難を逃れた。
その数日後、主演俳優のペックを含む数人の関係者と共に、ロンドン市内のとあるレストランに向かったところ、この建物もIRAによって爆破された。当時はIRAがロンドン市内で多数の爆弾テロを起こしていたのだが、立てつづけに爆破事件に遭遇する状況は呪いと形容するしかないだろう。
一方、飛行機がらみの事故も止まなかった。空撮用に地元の会社で小型飛行機をチャーターすることになっていたところ、押さえていた機体が手違いで別のグループに貸しだされてしまった。撮影クルーは飛行場に着いてから長い時間待たされることになったのだが、実はこの手違いのおかげでクルーは命拾いする。
クルーが乗るはずだった小型飛行機が、離陸時にバードストライクで制御不能に陥り、そのまま飛行場のフェンスを突き破って、近くの道路を走っていた車に激突、車に乗っていた全員が亡くなったのである。悲劇的だったのは、この車に乗っていたのが激突した小型飛行機のパイロットの家族だったことだ。事故の惨状を目の当たりにしたクルーは、「このまま撮影を続ければ、同じような目に遭うぞ」という警告を突きつけられたように感じたことだろう。
さらに、映画のモチーフそのままの形で呪いを体験した関係者もいる。セットデザイナーのジョン・リチャードソンは、『オーメン』と並行して進められていた『遠すぎた橋』という映画の撮影中、リズ・ムーアという助手と一緒にオランダ国内を車で移動中に、交通事故に遭った。
事故が起きたのは、1976年8月13日に日付が変わった直後だった。事故の状況は悲惨としかいいようがなかった。リチャードソンはほぼ無傷だったが、ムーアは事故の衝撃で外れたフロントガラスに首を切断され、即死だった。実はリチャードソンは『オーメン』の中で、カメラマンが大きな板ガラスで首を切断されるシーンの演出を担当した人物だったのだ。
しかも、車から這いだしたリチャードソンが、呆然としたまますぐそばに立っていた道路標識に目をやると、そこには「Ommen 66.6KM」という文字が記されていたという。Ommen(オンメン)とはオランダの都市名だが、何という偶然だろうか。この出来事は、『オーメン』第1作にまつわる呪いのエピソードの中でも、間違いなく最恐レベルだろう。
これだけ多くの不吉な事件に見舞われながら、シリーズ第2作の制作が決定したことは不思議だったといわざるを得ない。
1978年に公開された『オーメン2/ダミアン』では、ダミアンは叔父に引き取られ、従兄と一緒に陸軍学校に通っているのだが、前作同様、彼の本質に気づいた人たちが次々と命を落としていくというストーリーだ。
第2作にまつわる無気味なエピソードも多く、“オーメンの呪い”がさらに強調されることになった。
前作と同じように、凶兆は動物の異常行動という形で現れた。『オーメン2』の見せ場のひとつに、女優エリザベス・シェパード演じるキャラクターが、反キリスト的存在の象徴として描かれている大きなカラスに襲われるというシーンがある。シェパード自身には何の問題もなかったが、撮影が終わった途端、カラスが普段から生活をともにして慣れきっているはずのハンドラーに襲いかかり、眼球をえぐり出しそうになるという事件が起きた。現場の空気が凍りついたことは想像に難くない。
奇妙なことに、『オーメン2』では撮影開始直後から体調を崩すキャストやクルーが続出した。“オーメンの呪い”の話が世間にも知られるようになり、目に見えない心理的影響が体調に作用する「ネガティブな暗示説」も唱えられたが、現場の状況はそんな生ぬるい解釈では何も解決できなかったようだ。体調不良を訴える関係者が次から次へと出て、プロジェクト全体の進行に支障が出そうな状況に陥ってしまった。
撮影技術面での問題も頻発した。ハリウッドでは予定通りのスケジュールで撮影が進むことはほとんどないというが、“オーメンの呪い”がなかば既成事実のように認識されている中では、どんな小さなトラブルであっても呪いとつなげられてしまう。現場では、キャストもスタッフも重苦しい空気の中で仕事を続けることを強いられた。
結果として、『オーメン2』の撮影中に起きた出来事は、前作ほどはっきりと呪いの存在を感じさせるものではなかったかもしれない。少なからず安堵した関係者もいたはずだ。だが、それは「オーメン」シリーズが呪いから解放されたことを意味するものではなかった。
1981年に公開されたシリーズ第3作『オーメン/最後の闘争』の制作が発表されたときも、不吉なものを感じ取った関係者は多かったという。
3部作の仕上げとなるこの作品は、32歳で大企業ソーン・コーポレーションの社長となったダミアンが大統領顧問にまでのぼり詰め、さらに駐英大使に任命されるところから始まる。この状況はダミアンにとってこれ以上ないチャンスだった。イギリスのどこかで生まれようとしているメシアの抹殺を計画していたからだ。
第3作においても、関係者が感じていた不吉な空気がはっきりとした形になった。
まず紹介すべきなのは、出演俳優の相次ぐ死だ。エンドロールに小さく名前が出るレベルの俳優たちばかりだったが、彼らの不審死や悲惨な死を知ったスタッフの間では、呪いが戻ってきたという話で持ちきりになった時期があったと伝えられている。
いくら端役であっても、出演俳優が相次いで亡くなるという事態は異常でしかない。彼らの代わりを集めなければならなくなり、この時点でまず遅れが生じはじめた。また、第1作ほどではなかったものの、現場では撮影機器の不具合や誤作動が数えきれないほど起きたと伝えられている。
さらに、大人になったダミアンを演じたサム・ニールは、撮影期間中絶えず漠然とした不安感にさいなまれていたという。無理もない。呪いの映画として有名な3部作の仕上げとなる作品の主演を務める自身に何も起こらないはずがないと思っていたのだろう。
公の形で残されているインタビューなどには含まれていないが、ニールが親しい友人と会って話をしたりするときには、必ず“オーメンの呪い”の話題が出たという。
呪いについてこれほど多くの不可解なエピソードが伝えられているにもかかわらず、2006年6月6日という実に縁起の悪い公開日に向けて、第1作『オーメン』のリメイク版の制作が決定されたことについては、驚きを通り越してあきれてしまう映画関係者もいたに違いない。
呪いも、もはや当たり前のように起こりつづけた。撮影中、ブレナン神父役のピート・ポスルスウェイトの弟が、ある日仲間とポーカーをしていて、6のスリーカードで上がった。その後しばらくして、彼は突然死してしまう。正確な死因が明らかにされることはなかった。おそらく心臓発作か脳卒中だったと見られているが、あくまで推測の域を出ず、この一件について語る人間もほとんどいなかった。あまりの恐ろしさに、その話題に触れるのも嫌だというのが本音かもしれない。
呪いはまだ続く。
ダミアンの体に悪魔の印を見つけるシーンを含む1万3500フィートものフィルムが、現像中に何らかの原因で上映用としては使い物にならない状態になり、破棄せざるを得なくなってしまったのだ。映像ラボは最新の設備が整えられており、なぜそんな現象が起こったのか、その原因は今もわかっておらず、この事件についても、語る者はだれもいない。
さらに、リメイク版『オーメン』では呪いの影響域が広がったようである。“オーメンの呪い”を解き明かすというテーマでドキュメンタリー番組が企画された。その撮影現場で、複数のカメラが同時に、しかもまったく同じ種類の故障で動かなくなることがしばしばあったという。
そもそも、悪魔の子であるとか、獣の数字であるとか、反キリスト的なものをモチーフにした第1作こそが真のタブーだったのかもしれない。
最新作の『オーメン:ザ・ファースト』では、“悪魔の子”ダミアンの誕生に隠された秘密がついに明かされる。「オーメン」シリーズが呪われているなら、『オーメン』のアイデアを生みだしたマンガーがかつて語ったように、最新作は“悪魔の武器”たり得るダミアンの秘密を取りあげようとする“試み”ともいえる。それに対する対抗手段として、はたしてどんな現象が起きるのだろうか。
『オーメン:ザ・ファースト』の公開直前のタイミングで、マーガレットを演じる主演女優ネル・タイガー・フリーのインタビュー情報が入ってきた。それによれば、ブレナン神父役のラルフ・アイネソンの娘が、映画のクランクイン前にカラスの群れに襲われたという。さらに、アイネソン用の小道具の十字架が真っぷたつに割れて落ちたそうだ。フリーは、あえてたいした出来事ではないと強調したかったのか、「ほんの一部だけど」と言葉をつけ加えている。
カラスの群れと割れた十字架──それらが持つ意味については、映画関係者でなくとも容易に感じ取れるはずだ。
(月刊ムー 2024年5月号より)
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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