ゲーム史上最も"常世"を興味深く描いた傑作「パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語/ムー通
ゲーム雑誌「ファミ通」とのコラボでムー的ゲームをお届け!
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突然ですが、霊をご覧になったことはありますか? 霊が視えるという人たちの体験談や怪談奇談は本誌でもさまざまな形で目にするものの、ゲームというメディアで霊の存在を徹底した体験をもとに表現した作品は稀有なもの。というよりも、もしかすると、かの『零』シリーズをおいてほかに類を見ないのではないでしょうか。
『零』シリーズは20年以上の歴史を誇る、伝統ある作品です。
"射影器"と呼ばれる霊を撮影し除霊できるカメラを手に、昏い因果や縁によって生じたかのような、数々のいたたまれない怨霊と対峙することになります。こうした霊の表現や空間演出は、プレイヤーに"霊がたしかにそこに存在している気配"を想起させるのですが……ムー民の皆様へ向けて特筆したいのは、シリーズのディレクターである、柴田誠氏が実際に遭遇した数々の心霊体験が作品の随所に落とし込まれている点にほかなりません。ちなみに、柴田氏といえば、いまやネットミームとしても有名な"消臭スプレーでの除霊"を最初に実践した人物でもあります。

屈指の名作と名高いシリーズ2作目を美しくフルリメイクした最新作、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』に登場する怨霊にも見て取れるように、『零』シリーズでは、霊の周囲の空間は歪み、もやのようなものがかかっている描写がなされています。
この独特な霊表現は、まるで霊というさだまらない存在の不安が、そのままビジュアルになったかのごとき不穏な表現として代々踏襲されつづけているものでもあります……じつはこうした表現は、まさに消臭スプレーで除霊を行う必要があるくらい、数多の霊と接近遭遇してきた柴田氏の「自分は霊をはっきりとはでなく、常に歪みがかかったように見える」という個人的な体験を、そのまま表現したものでもあるのです。
これはサウンドについても同様で、霊がいる場では、耳鳴りやラジオノイズのような高音がうっすらと聴こえていることに気づくような、ゲームの効果音としてあまりにも異質なサウンドデザインがなされています。これも柴田氏の実際の体験からディレクションされたものであることからも、『零』シリーズは、ゲームというメディアを通じて映像と音と物語を通じて語りなおされた、柴田氏による"怪談実話"ととらえることもできましょう。
そしてもうひとつ興味深いことに、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』を始めとするシリーズの名作群は、すべてが柴田氏の"夢見"から物語や舞台設定、ステージの構造にいたるまでが作り上げられているのです。
オリジナル版や最新作『零 ~紅い蝶~ REMAKE』の舞台となる"皆神村"の構造は、柴田氏が何度も同じ夢を見て、夢のなかで見た村が曲がり角や建物に至るまで、そのままの形でモチーフにされているといいます。いつも途中で目覚めてしまうので、幾度もの夜の夢を経て最後まで到達した結果が……ゲームプレイであなたが体験した結末そのものだったのだとか。

ホラー・エンターテインメントで夢を作品で表現した作家といえばH.P.ラヴクラフトを彷彿とさせますが、柴田氏の『零』シリーズもまた、夢の門の奥へと続く、いい知れぬほどに昏く深い無意識の底から汲み取られた物語だからこそ、プレイヤーに名状しがたい不穏な恐怖をもたらす唯一無二のホラーシリーズを生み出せているのかもしれません。
「霊を見てみたい」と思われる方は、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』を遊んでみましょう。映像と音、そして底知れない不穏な物語のすべてが、あなたに見えざる存在が"そこにいる"という、ただならぬ気配を感じさせてくれます。

(本作のムー民度 ★★★★☆)
零 ~紅い蝶~ REMAKE
Nintendo Switch 2/PS5/Xbox Series X ¦S/Steam ※Xbox Series X|S/Steamはダウンロード版のみ
通常版 6,380円(税込)
https://www.gamecity.ne.jp/zero/crimson-re/jp/
(月刊ムー 2026年06月号)
藤川Q
ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。
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