呪物と握手! 「90秒憑依チャレンジ」に心身をつかまれるホラー映画「TALK TO ME」の生っぽさ
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目撃ではなく、鑑賞するUFO。「UFO手帖」編集長の秋月朗芳氏が、UFO映画を厳選紹介!
目次
UFO映画といえば、他の星から来た異星人とのファーストコンタクト、もしくは異星人の侵略をテーマとした極めて非日常的な場面を描いた作品が多いことは皆さんもご存知のはずだ。しかも現在は目に見えない未知のウイルスと戦っているという意味で、我々の今はUFO映画に負けず劣らず「非日常」な状況下にあると言えるだろう。そんな時なので一度観たUFO映画であっても、再度観るとまた違った感触を得られるはずだ。
ここではサブスクリプション・サービスなどで自宅で観ることができる”UFO映画”をご紹介する。
端々に「UFOマニアが気になる描写がある」「完全にフィクション(実際のUFO事件をもとにしていない)」7つの作品を選んでみた。
「未知との遭遇」/Close Encounters of the Third Kind(1977)
1977年に劇場公開され、大きな話題となったスティーブン・スピルバーグ監督による映画『未知との遭遇』は、現代的なUFO映画の金字塔として最初に紹介するのにふさわしい傑作であろう。
原題はUFO搭乗者とのコンタクトを意味する『Close Encounters of the Third Kind』、つまりUFOファンには馴染み深い「第三種接近遭遇 」である。また、冒頭からUFOの影響でエンジンや電気系統にトラブルが生じる「EM効果」が描かれるなど、当時のユーフォロジー(UFO学)の知見がふんだんに盛り込まれている。
それもそのはず、この作品は「第三種接近遭遇」という言葉(分類法)の生みの親であり、プロジェクト・ブルーブック(米空軍に実在したUFO調査機関)の科学顧問であったJ・A・ハイネック(1910-1986)博士が監修として参加した本格的なUFO映画なのだ。
しかし、今回あらためてこの映画を観て少し驚いたのは、ドラマ的には感動的な箇所を一つも見つけられなかったことだ。公開当時は感動の大作という評判だったはずだ。我々はあの乱舞する電飾UFOに少し惑わされすぎていたかもしれない――。
主人公ロイ・ニアリーは、UFOと遭遇した日から脳裏に消えることのないイメージが宿ることになる。ロイはシェービングクリームやマッシュポテトなど目に入る物を片っ端から手に取り、脳裏に残るイメージをなんとか形にしようと試みる。やがてそれに没頭するあまり精神の安定を乱し、職を失い、妻は奇行を繰り返すロイに嫌気が差して子供を連れて家を出ていってしまう。
――と、派手なUFOのシーンを除いて物語を追っていくと、わりと悲惨な話なのだ。観ようによっては、UFOによって理不尽に人生が変わってしまった者のドラマだと言えるかもしれない。しかし、実際UFOによって職や家族を失ったという話は多いので、それはそれでリアルだったりする。
例えば、1973年に米アラバマ州フォークビルで宇宙人と遭遇し写真を撮影したジェフ・グリーンホウという警察官は、事件から一ヶ月たらずのうちに妻と離婚するはめになり、警察官も辞めせざるをえなくなった。また、「父は自分の体験を主張する代わりに家族という大きな代償を払わされた」と当時を振り返り語るのは、同じように家族を失ったウッドロウ・デレンバーカーというコンタクティーの娘だ。さらに60年代に宇宙人とコンタクトしたとして一時有名になったキャロル・ワッツに至っては、被害妄想を抱き、自分を捕らえにきたと勘違いした警官に銃を向け、しばらくのあいだ刑務所で過ごしている。
『未知との遭遇』に戻ると、その後もロイと家族が元通りになることはなく、それなのにロイは同じUFO目撃者のジリアンといい雰囲気になったり、最後には家族を顧みず宇宙人たちに誘われるがままUFOに乗せられちゃうしと、わりとメチャクチャなのだ。
そもそもこの映画の主人公であるロイは、特別な取り柄がある人物ではない。あまりパッとしない電力会社のエンジニアだ。最終的にシャンデリアのような巨大なマザーシップ内部へと宇宙人に導かれていく、ある意味人類代表であるにもかかわらずだ。
しかし、このように宇宙人と接触した者がごく普通の人であることも、ある意味UFO事件らしいと言える。例外はあるにせよ、これまで宇宙人と接触したと公言する人で、社会的地位や影響力がある人は極めて少なく、大半はごく普通の人だからだ。
「UFO体験は、ごく普通の人々が体験してしまう異常な出来事である」と言ったのは、『私は宇宙人にさらわれた!』の著者、ジョン・リマーだ。同書は遭遇者の家族関係や心理面など、あまり顧みられなかった見地からUFO事件を考察している。『未知との遭遇』は、この言葉の通りに描かれたUFO映画と言えるかもしれない。
メン・イン・ブラック/Men in Black(1997)
2019年にも『メン・イン・ブラック:インターナショナル』が公開されたこともあって、あまり古さを感じさせないが、このシリーズ第一作目である『MIB(メン・イン・ブラック)』が公開されたのは1997年――もうかれこれ20年以上前の作品である。
UFO遭遇者のもとに出向き、口封じをして回る全身黒ずくめの男たちとして知られている「MIB」の歴史はもっと古い。UFO(空飛ぶ円盤)という存在が世に知られるきっかけとなったケネス・アーノルド事件(1947)と同じ年に起きたとされるモーリー島事件でもすでに登場する、ある意味UFO系都市伝説(以下、ユーフォロア)の古参的キャラクターである。
この映画では、1500もの宇宙人が地球で密かに生活していることになっており、MIBは不法移民宇宙人を監視・管理する極秘機関のエージェントという設定になっている。
監督はバリー・ソネンフェルド、製作総指揮は『未知との遭遇』のスティーブン・スピルバーグだ。主演は『インデペンデンス・デイ』(1996)で宇宙人をタコ殴りしていたエージェント名“J”ことウィル・スミス、そして日本のCMでは宇宙人としてお馴染みのエージェント名“K”ことトミー・リー・ジョーンズだ。
この映画はコメディとしてストレートに楽しむ他に、例えば「エルヴィス・プレスリーは出身の星で生きながらえている」といった、映画の端々につめこまれた都市伝説やユーフォロアを探すという楽しみ方もある。
例えば、MIBになりたてのJが、MIBの組織の資金源についてKに質問し、この組織がエイリアンからの押収物を調査・分析して地球にはこれまで存在しなかったテクノロジーを得ること(リバース・エンジニアリングという)を収入源としていることが語られたりする。
このように墜落したUFOから得たエイリアン・テクノロジーを活用することで、現在の高度な技術が開発されたのだという話もユーフォロアのひとつだ。この映画では、小鼻パック(毛穴パック)、電子レンジ、CDがその例としてあげられている。
元陸軍情報将校のフィリップ・J・コーソー(1915–1998)が死の直前に書いた『ペンタゴンの陰謀』によると、暗視装置、集積回路、レーザー兵器、ミサイル迎撃技術、光ファイバー、ステレス技術、プラズマ、マイクロ波技術、加速粒子ビーム兵器などが、ロズウェルに墜落したUFOから得た技術をもとに開発されたという。
またMIBの最大の敵となる宇宙人「バク」が、水を飲ませろと要求する場面がある。これは「宇宙人は水をほしがる」というよく知られたユーフォロアを採用したものだろう。
農夫が宇宙人と水とパンケーキと交換したイーグルリバー事件(1961)、美しい二人の宇宙人から「水を少しもらえませんか」と話しかけられたとされるチリの事件(1964)、山道で「水をくれ」と叫んでいる宇宙人が目撃された南アフリカでの事件(1951)など、なぜ宇宙人は水をほしがるのかはよくわからないが、同様の話は探せばいくらでもある。
地球侵略を目論む宇宙人を追うMIBが、ゴシップ専門のタブロイド紙を情報ソースとして頼るところも面白い。
MIBや地球で暮らす宇宙人にとってタブロイド紙は、「NYタイムズなんか目じゃない」「唯一真実を伝えるメディア」なのだ。つまり「オバマ大統領は爬虫類型エイリアンだった!」「ネッシー、生け捕りに成功!!」などの見出しが並ぶタブロイド紙の記事は、実は隠されてきた世界中の出来事が書かれた真実のニュースということになる。そして「ムー」もまた、そのようなメディアであろう。
コンタクト/Contact(1997)
『コンタクト』は異星人を扱っているが、いわゆるエンターテインメント作品と違い、真面目に地球外生命探査を扱ったSF映画である。
監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も監督したロバート・ゼメキス。原作者は優れた天文学者・科学解説者・科学的懐疑論者であり、宇宙開発にも携わっていたカール・セーガン(1934–1996)博士。主人公であるSETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの研究者エリナー・アロウェイ(愛称エリー)を演じるのは、アメリカを代表する女優のひとり、ジョディー・フォスターである。余談だが、この映画のジョディー・フォスターは本当に美しい。
物語は26万光年離れたヴェガという星からの謎の電波を受信したことから始まる。受信した謎の電波を解析してみると、それはある種の宇宙船(ポッドと呼ばれる一人乗りの移動装置)の設計図だった。主人公のエリーは設計図通りに作られたポッドに乗り込み、入り組んだワームホール(時空のある一点から別の一点へと繋がるトンネルのような抜け道)を抜けて、ヴェガまでたどりつく。
この映画では、たどりついたヴェガの住人に歓迎されるといった展開はない。そこでエリーが出会うのは、『未知との遭遇』の最後に現れたようなグレイ・タイプのよくある宇宙人ではなく、どういうわけかエリーが幼い頃に死んだ彼女の父親なのだ。そこが本当に「星」であるかもどこか曖昧に描かれており、まるで死後の世界のような場所だった。
UFOマニアの興味をひくのは、エリーがこの旅から帰ってきてからの話であろう。エリーは確かにポッドでヴェガにたどりついたと確信しているにもかかわらず、それを証明するものはまったく記録に残されていなかった。つまり、結局何も起きていないことになっていたのだ。
このような、体験した者にとっては紛れもない事実でありながら、客観的な証拠が何一つ無く、結局は「信じる/信じない」という議論になってしまうことは、UFOをめぐる議論においてとても馴染み深いものである。
例えば、アブダクション事件として大きな議論を巻き起こしたヒル夫妻事件(1961)が顕著だろう。この夫婦の体験を完全に証明できる証拠はないが、夫婦は自身の体験を否定することはなかった。映画の中のエリーも同じように自身の証明できない体験を、多くの批判にさらされながら苦悩することになる。
ガチガチの科学的懐疑主義で無神論者だったエリーが知的生命体とのコンタクトを通して、ある種の神秘性(宗教性)を受け入れていくところがこの映画の肝だろう。科学と信仰の問題を扱った映画はこれまでにもあったが、ここまで真正面から扱った映画も珍しいかもしれない。
サイン/Signs(2002)
『サイン』は、M・ナイト・シャマラン監督が手掛けたUFO映画である。世界中で大ヒットし、公開された2002年で世界最大となる4億800万ドルもの収益を得たのが本作だが、それに反して当時の日本では何故か悪評が目立った。「もうこの監督にはダマされない」なんて声さえも聞こえた記憶がある。
突如巨大なミステリーサークルが出現することで幕を開けるこの映画では、妻の悲惨な事故死により信仰を捨てた元牧師であるグラハム・ヘス(メル・ギブソン)が、宇宙人による地球侵略のピンチを乗り越えたことによって、失われていた大切なものを取り戻す――という、普通につくっていれば、酷評されそうにない映画である。
ミステリーサークルが現れてからというもの、飼い犬が突然凶暴化したり、屋根の上に怪物が現れたりと、身の回りに不可解な出来事が次々と起きる。やがて、ミステリーサークルの発生やUFOの出現が世界中で起きていることを知ったグラハムたち一家にも、地球侵略を目論む宇宙人たちの魔の手が忍び寄る――。
こんな風にあらすじを書くと、『インデペンデンス・デイ』(1996)や『宇宙戦争』(1953/2005)のような映画を思い浮かべるかもしれない。しかし、『サイン』ではこの二作のように宇宙人と派手な空中戦や地上戦が繰り広げられることはない。
宇宙人による地球侵略の動向を知るのはテレビやラジオからだけだ。それは複数の光が暗い空に舞っているだけの、古めかしい50年代のB級SF映画のようだし、宇宙人が撮影されたという映像など、よくある衝撃映像番組の宇宙人動画(例えば「メリダ宇宙人誘拐未遂事件」)のようなレベルなのだ。
映画前半にある、屋根の上に立つ宇宙人というシーンもどことなくノスタルジーが漂っている。UFOがアパート屋上に着陸したという、カナダのケベックで1977年に起きたUFO事件のイラストは、まさにそのシーンそっくりだ。このように、全体的にどこか古いUFO事件の味わいがあり、そこはUFOマニアを楽しませるところでもあろう。
そして、その宇宙人は毒ガスを吐き出して人間に襲いかっているということが徐々に明らかになってくる。――丸腰で毒ガス。こんな宇宙人で本当に地球を侵略できるのだろうかと首を傾げざるをえない。
さらに、いまさら冗談でしかかぶる人はいないであろうアルミホイルハット(tin foil hat)で宇宙人から脳波を読み取られるのを遮ろうとしたりなど、細かいユーモア(のようなもの)が随所に散りばめられている。
この映画を注意深く観ていくと、このような、あえて怖がらすことを避けるかのようなシーンや設定、そしてユーモアを数多く見つけることができる。だが思い出してほしい、この映画はジャンル的にはSFホラーやサスペンスに分類されている、あくまで妻を悲惨な自動車事故で亡くし、それによって信仰を捨てた男のシリアスな映画であるはずなのだ。
もしかしたら、裏に深い意味が隠されているのかもしれないと何度も観てしまうのだが、何度観ても真意がよくわからない。そんなハイストレンジネス(とても奇妙)な映画なのである。
スーパーエイト/SUPER8(2011)
最近では『スターウォーズ』の監督まで請け負い、アメリカを代表する映画監督になりつつあるJ・J・エイブラムス(以下JJ)、そんな彼とスティーブン・スピルバーグが手を組んだ2011年の作品である。
本来ならば、『未知との遭遇』や『E.T.』などのスピルバーグ初期作品をJJがオマージュした作品として、素直に観れば楽しめたはずだ。それなのに、劇場公開前にネットに公開されたティザーサイトと、そこに掲載されたティザー映像で変な先入観を与えられたがために素直に観られなくなってしまったのだ。
そのティザーサイトは、 なにやら意味ありげな古いコンピュータのコンソールを模したつくりになっており、それがこの映画の鍵になっていそうに思わせた。またティザー映像の冒頭には「IN 1979, THE U.S. AIR FORCE CLOSED A SECTION OF AREA51(1979年、アメリカ空軍はエリア51の一部を閉鎖した)」というテロップが入っており、これがUFOマニアや詮索好きにあらぬ妄想を掻き立てさせた。
かくいう私も、宇宙人絡みで基地が閉鎖したとなれば、場所はエリア51ではないにせよ、宇宙人グレイとの銃撃戦が地下の秘密基地で勃発したとされる「ダルシー戦争(1979)」を元にしているのだろうと勝手に期待を膨らませ映画を楽しみにしていた。
――のだが、実際の映画を観てみると、ダルシー戦争のようなUFO事件を感じさせるものではまったく、コンピュータのコンソールもそれほど重要な鍵となっているわけではなかった。かくして実際に起こったとされるUFO事件をモチーフとしたミステリアスな映画を期待していた私としては少々落胆してしまったのだ。
しかし、あらためて観直してみると、『スタンド・バイ・ミー』のような登場人物の少年たちが生き生きと描かれたジュブナイルUFO映画として、とても楽しめる作品であったことを十二分に確認する結果となった。まあなんにせよ、エル・ファニングの冒頭の演技(自主映画のリハーサルをしている場面)だけで十分料金の元は取れるので一度ご鑑賞あれ。
メッセージ/Arrival(2016)
この作品『メッセージ(Arrival)』は、最近(2016年)公開された映画なので、まだ強い印象を残している人も多いだろう。1999年にネビュラ賞中編小説部門とシオドア・スタージョン記念賞を受賞したテッド・チャンの短編『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』を原作とし、異星人と人類のファーストコンタクトと異種間交流を壮大なスケールで科学的視点も取り入れて描いたSF映画である。
監督は『ブレードランナー 2049』の監督も務め、次回作として『デューン』が控えているドゥニ・ヴィルヌーヴ。『ブレラン』にしろ『デューン』にしろ、SF映画のカルト・クラシックだ。この作品も、そんないい意味でのカルト・クラシックなSF映画の雰囲気が満ちている。
ある日、言語学の研究者であるルイーズ・バンクスが大学で講義をしていると、隠れてネットを見ていたのだろう生徒から、今すぐニュースを見てくださいと告げられる。ルイーズがしぶしぶテレビをつけると、そこには見たことのない巨大な物体が映し出されていた。
物体のもとへ軍によって連れてこられたルイーズは、そこで物体がいわゆるUFOであることを知らされ、中の異星人と接触していることを告げられる。そして同じように連れてこられた物理学者と、異星人とコミュニケートするための方法を試行錯誤しながら探っていく。軍が知りたがったのは、その異星人の「目的」と「どこから来たか」だった。
よくある宇宙人モノの映画ならば(または実際のコンタクト事件でも)、宇宙人は当然のように英語を話しだしたりして話は簡単だ。しかし、この映画では言語の表現方法すら違う相手とコミュニケートしていく過程そのものが物語のコアになっている。彼らとのコミュニケートは困難を極めるが、もし本当に異星人とコンタクトすることがあるとしたら、もっと大変かもしれない。
そして彼ら異星人の言語を理解するということは、同時に彼らの世界や時間の捉え方を理解することでもあった。彼らを理解することで、ルイーズは結婚していないにもかかわらず、自分の娘らしき少女と暮らす幻影をよく見ようになる。この心の変化は、彼らのメッセージを理解するのに必要なことであり、また彼女の身に“これから”起きる、幸福と悲劇を受け入れることでもあった。
ともすれば難解になりがちなテーマだが、最終的には人生のあり方すら考えさせてしまう巧みな物語に感嘆せざるを得ない映画である。
美しい星(2017)
『美しい星』は、自分が宇宙人だと気付いてしまった、ある種のUFOコンタクティーをテーマとした映画だ。監督は吉田大八。 原作は三島由紀夫の同名小説である。背景や人物像は大胆に現代的にアレンジされているが、基本的には原作をトレースした作品となっている。
リリー・フランキー演じる大杉重一郎は、中年の気象予報士だ。彼は、ある日の運転中に眩い光に包まれて意識を失い、気が付くと遠く離れた見知らぬ場所にいるという異常な出来事を体験をする。
この後、彼は自分が火星人であること、さらに太陽系惑星連合の使者であることに唐突に気付く。そして、自身が出演するテレビ番組の天気予報コーナーで、奇妙なポーズを取りながら地球の環境破壊の深刻さを熱心に訴えるようになる。
また、重一郎の息子である一雄(亀梨和也)は水星人、容姿の美しさゆえいつも周囲から浮いている娘の暁子(橋本愛)は金星人であることに気付き、それぞれ自分の宇宙人としての使命を果たすために奮闘していく…。
ポスターにもなっている重一郎が両腕をピンとのばした奇妙なポーズは、コメディータッチで描かれながらも、ずっと奇妙な緊張感が続いていくこの映画の雰囲気をよく象徴している。
金星人であることに気付いた暁子が、海辺の空に乱舞する光を見つめながら奇妙な手振りを繰り返すシーンも、美しさと滑稽さが相俟った強烈なシーンだ。思えば橋本愛は『あまちゃん』の頃から、どこか狂信的な雰囲気がただよっている。この映画の暁子はハマり役だ。
本人は大まじめなのに、傍から見ると滑稽にしか見えない温度差。笑っていいのか、いけないのか、現実なのか、妄想なのか、その微妙なライン上を綱渡りするように映画は進んでいく。
UFOコンタクティーの描き方はとてもリアルだ。
主人公の重一郎は初老の男であるが、有名なジョージ・アダムスキー(1891-1965)がUFOコンタクティーとして世に知られるようになったのも還暦(60歳)を迎えてからだった。
また、実際のUFOコンタクティーたちが、この映画のように核戦争や環境破壊の脅威を懸命に訴えているのは、ご存知のとおりだ。
もし、突然自分が宇宙人であることに気付き、宇宙的な視点でこの世の中を見渡せるようになったら、いったいどのようなことを考え、どのように行動するだろう――そんなことを考えながらこの映画を観ていただきたい。
(2020年6月24日 記事を再編集)
秋月朗芳
2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」(「Sp」はJ.アレン・ハイネックの「S-Pチャート」から)代表。同会で年一回発行している同人誌『UFO手帖』の編集長を務める。
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