世界各地の古代文明に共通する「謎のハンドバッグ」の正体は? 未知の“相互関連性”と古代宇宙飛行士説
世界各地の古代文明のレリーフに描かれている人物に、奇妙な共通点があった――。文化も出自も異なるはずのキャラクターたちが、皆一様にハンドバッグを手にしているのだ。
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、『旧約聖書』に登場する預言者が遭遇した、奇妙な生き物で形づくられた謎の乗り物について取りあげる。
古代宇宙飛行士説とは、「異星人は太古の昔から地球に飛来しており、その痕跡がさまざまな形で今に残されている」という仮説のことである。
この説の根拠としては、世界各地に残る文明神に関する神話や伝説、さらにはその時代の技術ではとうてい作成不可能とされる加工品、いわゆるオーパーツなどがしばしば持ちだされる。日本ではかつて、民間UFO研究団体「宇宙友好協会(CBA)」が用いていた「宇宙考古学」という名称が使われることもある。
この説を最初に唱えたのは、アメリカのモーリス・K・ジェサップ(1900〜1959)やジョージ・ハント・ウィリアムソン(1926〜1986)といった初期のUFO研究家たちである。
また、欧米ではアトランティスやレムリア、地底世界アガルタといった場所に古代の異質な文明が存在した、と述べたサンティーヴ・ダルヴェイドル(1942〜1909)やヘレナ・ペトロブナ・ブラヴァツキー(1831〜1891)なども、この説の元祖的存在として言及されることがある。
異星人が太古の地球を訪れたという仮説の前提には、以下のような考え方がある。
現在、世界中で目撃されているUFOは、急旋回や急停止など、地球のテクノロジーでは到底考えられないような飛び方をする。したがってUFOが異星人の乗り物だとすれば、そのようなものを生みだす文明は、地球のそれを遙かに凌駕していることになる。
そして、それほどの高みに達するには、人類文明よりずっと古くに生まれ、長い歴史を持っている可能性がある。だとすれば、地球に石器人しかいなかったような古代において、彼らはすでに惑星間航行の技術を確立しており、地球にも訪れたのではないか、というものだ。
じつは日本の前衛科学評論家を自称する斎藤守弘も、ジェサップやウィリアムソンとほぼ同時期、独自に似たような着想を得て古本屋を巡り、日本の歴史記録の中にUFOを思わせる記述を探し求めていた。
斎藤の研究は、1957年初頭に発行された日本空飛ぶ円盤研究会の機関誌「宇宙機」第7号および第8号に「日本の空飛ぶ円盤の歴史記録」として発表された。
古代宇宙飛行士説の論者には、『旧約聖書』に登場する神や天使も、じつは太古の地球を訪れた異星人であり、彼らはそのテクノロジーを用いて奇跡としか思えないような現象を数多く示し、神として崇拝されたのだと主張する者もいる。そこでこの説は、ときに「宇宙神理論」と呼ばれることもある。
ではこうした観点から『旧約聖書』各部の記述を見るとどうなるのだろう。
たとえば、「創世記」第19章24節および25節には、死海のほとりにあったソドムとゴモラの二都市が神の怒りに触れ、住民もろとも滅ぼされる記述がある。
そこには、「主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の雨を降らせ、これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした」と記されているが、古代宇宙飛行士説によれば、天から降ってきた硫黄の雨はじつは核兵器であり、ソドムとゴモラは異星人の核攻撃によって壊滅したのだということになる。
「出エジプト記」第13章21節および22節には、エジプトを出国したイスラエル人を導いた雲の柱や火の柱についての記述がある。
それは、「主は彼らに先立って進み、昼は雲の柱をもって導き、夜は火の柱をもって彼らを照らされたので、彼らは昼も夜も行進することができた。昼は雲の柱が、夜は火の柱が、民の先頭を離れることはなかった」というものであるが、この雲の柱や火の柱も異星人のUFOであり、イスラエル人は異星人のUFOに導かれて旅をしたということになる。
となればもちろん、モーセがシナイ山で話した神も、じつは異星人ということになる。
そして、「エゼキエル書」に記された奇妙な生き物たちについても、古代宇宙飛行士説の観点から、これを宇宙船ではないかと主張する者がいる。
「エゼキエル書」は『旧約聖書』の一書で、イスラエル民族に数多く遣わされた預言者のひとり、エゼキエルの活動について記した文書である。
ちなみに、しばしば混同されることがあるが、厳密にいうと「預言者」は単に未来を予言できる「予言者」とは異なる。英語ではどちらも「prophet」になるが、「預言者」のほうは「神の言葉を預かった者」という意味であり、神のメッセージを伝えるため選ばれた者をいう。
その伝える内容には、単に未来の出来事の予言だけでなく、神を崇める者として守るべき規範やタブー、戒律なども多く含まれている。
エゼキエルもまた、神から召命を受けた預言者のひとりである。その経歴ははっきりわかっていないが、紀元前597年、新バビロニア王ネブカドネザル2世がパレスチナにあったユダ王国を滅ぼし、ユダヤ人たちがバビロンをはじめとしたバビロニア地方へ捕虜として連行された事件、いわゆる「バビロン捕囚」によって強制的にメソポタミアに連行されたユダヤ人のひとりと思われる。
エゼキエルが神に召しだされ、預言者として活動を始めたのはバビロン捕囚から5年目というから、紀元前593年ということになる。そして彼がバビロンのケバル川のほとりで正体不明の奇妙な生きものを見たのもこのときだった。
エゼキエルが経験した出来事については、「エゼキエル書」第1章第4節から28節に詳しく記されている。
まず、北のほうから激しい風が大きな雲を巻き起こして火を発し、周囲に光を放ちながら吹いてきた。その火の中には金のように輝くものがあり、さらにその中にいたのが4つの生き物であった。
その姿は人間のようであったが、それぞれが顔を4つ、それに4枚の翼を持っていた。4つの顔のうち正面にあるものは人間の顔で、右にライオン、左に牛、後ろにあるのはワシの顔であった。
翼の下には四方向に人間の手があり、その脚はまっすぐで、足の裏は子牛の足の裏に似ているが青銅のように輝いていた。翼のうち2枚は広がって、先端が互いに触れあっており、残る2枚は体を覆っていた。
彼らは移動するとき、向きを変えることなく、4つの顔のついている方向、つまり前後左右に進んだ。
生き物のかたわらには4つの車輪があり、緑柱石のように輝いていた。その構造は車輪の中に車輪があるように見え、向きを変えることなく4方向のいずれにも移動することができた。
生き物が移動するときには車輪も進み、生きものが地上から引き揚げられるときには車輪も引き揚げられた。4つの車輪の外枠には、周囲一面に目がついていた。
さらに、生き物の頭上にはサファイアのように見える玉座の形をしたものがあり、玉座の上に人間のような姿があった。
一見詳細な描写に思えるが、具体的なイメージを描こうとするとかなり難しい内容である。
この奇妙な存在について、伝統的なユダヤ教の解釈では、エゼキエルは神の戦車である「メルカバー」を見たのだとされている。4つの顔と4枚の翼を持つ人間に似た生きものは、メルカヴァの近くに侍る4人の天使であり、車輪のようなものも、別の種類の天使である。
ユダヤ神秘思想においては、神の玉座でもあるメルカヴァを観想し、神に近づこうとするメルカヴァ瞑想という行法も行われていた。
これに対し、エゼキエルが目撃したものは古代に地球を訪れた宇宙船だと主張したのが、スイスのエーリッヒ・フォン・デニケン(1935〜)である。
彼の一連の著書は世界的ベストセラーとなり、それによって古代宇宙飛行士説が世に広まるきっかけを作ったのだが、デニケンは最初の著書『未来の記憶』において、エゼキエルが見たのは古代に地球を訪れた宇宙船であると主張した。
「エゼキエル書」では目撃の最後にエゼキエルが、「主の御手」にとらえられて空に引きあげられるという記述もあるが、デニケンによればこれは、エゼキエルが宇宙船に乗せられたことを述べたものだ。
このデニケンの主張について、アメリカ航空宇宙局(NASA)の技術者であったヨーゼフ・F・ブルームリヒ(1913〜2002)が調査を行った。
ブルームリヒはオーストリアのステアーに生まれ、ドイツのワイマール工科大学で航空工学を学んだ。1959年にアメリカに移住すると、サターンV型ロケットの製作にも携わり、調査を始めた当時は宇宙船の推進に関するNASAの調査機関マーシャル宇宙飛行センターで機構設計部長も務めていた。
じつはブルームリヒは、航空工学やロケット技術の専門家としてデニケンの主張を疑っており、反証を見つけるために調査を始めたのだが、6種類の『聖書』を読みくらべながら技術的検討を加えた結果、エゼキエルは他の星から来た宇宙船を目撃したのだという結論に達してしまった。
彼は著書『円盤製造法』にこの宇宙船のイラストを掲載したうえで、技術的な解説を加えている。それによれば、この宇宙船は衛星軌道上の母船との連絡用で、操縦席を上に乗せた逆円錐型をしており、回転翼と車輪のついた4本の支持脚を持っている。
エゼキエルが見た4つの生き物は、じつはこの脚部であり、上部の玉座に座った人間のようなものが操縦者ということになる。主としてロケット推進で進むが、大気圏突入も可能で、着陸時には回転翼を用いるという。
もちろんこのブルームリヒの主張には反論もあるが、ブルームリヒは調査の過程で、方向を変えずに前後にも左右にも移動することのできる新種の車輪の着想を得て、その特許も取得している。それが現在、車椅子などに活用されているオムニホイールである。
ブルームリヒはこの着想を、エゼキエルが見た生き物が向きを変えることなく、前後左右に移動したという記述から得たという。
エゼキエルが遭遇した神の玉座メルカバーが、航空工学的にも問題なく飛行可能な宇宙船=UFOであるならば、そのとき彼が目にしたのは神でも天使でもなく、UFOに乗って地球にやってきた異星人の姿だったのかもしれない。
●参考資料=『未来の記憶』(エーリッヒ・フォン・デニケン著/角川文庫)、『宇宙からの来訪者』(ロイ・ステマン著/学研)、『未確認飛行物体UMA大全』(並木伸一郎著/学研)、『新共同訳聖書』(日本聖書協会)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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