マッドモンク=濟公活仏の巨像が鎮座する台湾の珍寺「聚善堂」へ! 聖人信仰のリアル/小嶋独観
珍スポ巡って25年、すべてを知る男による台湾屈指の珍寺・奇祭紹介!
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珍スポ巡って25年、すべてを知る男による台湾屈指の珍寺・奇祭紹介!
台湾の摩訶不思議な寺廟を巡る旅、お次は嘉義(かぎ)に向かう。嘉義は南部の大都市高雄と中部の大都市台中のちょうど中間に位置する街だ。台中から高雄にかけての地域には実に味わい深い珍寺がひしめいており、ある意味で台湾の“珍寺多発地帯”といっても過言ではないエリアなのだ。
そんな嘉義の街外れにある素敵すぎる道教寺院を訪ねてみることにした。その名は鎮天宮。道教のお寺だ。先にも触れたが、台湾の信仰シーンは道教と仏教が混ざりあったハイブリッドな宗教がメインとなっている。
かつて日本で神道と仏教が習合して信仰されていたように、中華世界でも土着信仰である道教と外来宗教である仏教は混ざり合い、互いに不可分な存在として成り立っている。もちろん台湾でも仏教寺院と道教寺院は分けられてはいるが、両者ともに互いの神仏の像を祀るなど、混沌としているのが現状だ。そして実は、このような2つの宗教の混成は世界中で発生している現象であり、興味深い信仰風景が次々と現れている。
前置きが長くなって恐縮だが、では鎮天宮を見ていこう。
門前に立てば、もう何の説明も要らないだろう。巨大な3人の人物がみっちり肩を寄せ合って座っている。これらの像は三国志でもお馴染みの劉備、関羽、張飛の三傑の姿なのである。
魏、呉、蜀の三国が覇を争う三国時代を著した三国志、あるいは三国志演義の序盤のハイライトでもある劉備、関羽、張飛の3人が桃園で義兄弟の契りを交わす「桃園の誓い」。その名シーンを再現しているのだ。
像の巨大さには目を見張るものがある。高さは約16メートル、幅は約5.5メートルもあるのだ。それが3体密着して鎮座しているさまは普通ではない。台湾の道教寺院には様々な神様の巨像があるが、3体並んで鎮座しているケースは珍しい。
中央に劉備、右は茶色い顔をした関羽、左が黒い顔をした張飛だ。王と将なのだが、神格化され関羽と張飛は人間離れした容姿をしている。
建物の中に入ってみる。拝殿には参拝者が次から次へと訪れ、線香を手向け、拝んでいく。その奥には玉皇上帝や様々な神像が並ぶ。
さらに右横の小部屋には、60体の年神を祀った大歳殿があった。
六十大歳といえば、何といっても甲子太歳金辨大将軍。目から手が生えていて、その手のひらに眼球があるという奇天烈な神様。なんでも、かつて仕えていた主君に諫言したら目をくり抜かれたのだが、神様が哀れに思って薬をつけたところ、本来なら目がある場所から手が出てきてしまったという逸話をもつ神様なのだ。おかげで他の神様よりも視野が広いという事らしいが、それにしてもこの神様のビジュアルを考えた人の方を神様として崇めたくなるような凄いビジュアルだ。道教寺院ではたまに会えるので、皆さんも台湾の道教寺院に行ったら探してみて欲しい。
拝殿の両脇には階段があり、2階に上れるようだ。もちろん行ってみる。
2階には月下老人が祀られている。これは縁結びの神様である。そして外のテラスに出ると、そこは三体の巨像の足元だった。
間近で見上げる巨像の迫力は満点だ。足元に近寄ると踏みつぶされそうな気分になる。
聞けば、三傑(劉備、関羽、張飛)を祀る道教寺院は台湾では唯一だという。なぜこの寺院に三傑がいるのかといえば、昔はこの嘉義の街は桃城と呼ばれており、その桃城という名と三傑が契りを交わした桃園を絡めて三傑の像を造ったのだとか。ちなみに三傑像の完成は1981年である。完成の折には24日間の大法要が営まれたらしい。
改めて三傑の姿を見上げる。劉備、関羽、張飛。それぞれ単独でも凄まじい迫力だが、三体が揃うとより迫力が増す。
実は、関羽の巨像なら台湾のあちこちにあるのだが、やはりトリオの方がカッコイイ。
さらに上階には、仏教の釈迦、道教の太上道祖、儒教の孔子が並ぶ三教主殿が。ここでも各宗教のハイブリッド化が進んでいる。
3階の裏手から外に出てみる。拝殿や本殿の屋根が間近に見られる。龍の装飾が見事だ。
こうして見ていると道教の神々は剣や槍を持っていたり、馬に乗っている武人が多い事に気づく。
長く戦乱の歴史を繰り返した地で生まれた宗教なのだなあ、と改めて感じるのであった。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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