釜茹で、鞭打ち、石臼挽き…あの世の“責め苦”を完全再現! 台湾・大崗山超峰寺の「立体地獄」/小嶋独観
珍スポ巡って25年、すべてを知る男による台湾屈指の珍寺・奇祭紹介!
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珍スポ巡って25年、すべてを知る男による台湾屈指の珍寺・奇祭紹介!
前回紹介した超峰寺からバスを乗り継ぎ、バナナの産地として有名な旗山の街に来た。そこから数キロ北にある聚善堂というお寺を目指す。バナナの林が続く山道を進んでいくと、突然ぬっとチョコプラ松尾にそっくりな巨大な像が現れた。
濟公活仏と呼ばれる僧侶の巨像なのだ。濟公活仏は本名を道濟といい、今の浙江省に12世紀頃に実在した僧である。一説には五百羅漢の生まれ変わりとも称された高僧だった。しかし、普段の風体はいつも酔っぱらってツギハギだらけのボロい衣をまとっていたという。
衣に短冊のように四角い模様があるが、それがツギハギを表現しているのだ。
ところがこの僧は人気者で、古くから庶民に信仰されているのだ。ちなみに現在でもその人気は衰えず、数多くの映画やドラマに登場している。有名なのは香港映画『マッドモンク/魔界ドラゴンファイター』で、あの小林サッカーでお馴染みの周星馳(チャウ・シンチ―)が濟公を演じている。タイトルにマッドモンクとあるように、正統派のお坊さんではなかったようだ。
濟公は仏教の僧侶ではあるが、実際には道教でも信仰の対象にもなっている。酒飲みで汚い風体だが、一説には時の権力者に利用されないように敢えてエキセントリックな言動をしていた、とも言われている。そんな濟公像、階段の上に鎮座している。左手にマヨネーズみたいな酒徳利を持ち、右手には佛と書かれた扇を持っている。首からは巨大な数珠をかけ、烏帽子のような帽子をかぶり、何とも言えない微妙な表情で遠くを見つめている。
その高さは20メートル程だろうか。普段ダメダメなふりをしていたというエピソードに習ってダメ風なルックスのような気がする。
濟公像に見とれて気付くのが遅くなってしまったが、少し離れたところにこれまた大きな観音像が立っていた。
観音像は高さ10メートル以上はあろうか。花筒のような壺を左手に持ち、そこから水を垂らしているスタイル。アジアの仏教寺院でよく見かける観音像のスタイルだ。
両脇にはやや小振りの脇侍のような像が並んでいる。これも3~4メートルはあろう。
この2体の像も結構ユルい表情だ。
さらにその傍らには、これも巨大な関羽の像が。
関羽は御存じ三国志に登場する武将だが、軍を運営する銭勘定も上手かったという言い伝えにより、古くから商売の神様として大変人気がある。横浜中華街の関帝廟もこの関羽を祀っているのである。一般的に関羽は赤い顔で長い髭をたくわえ、手には青龍偃月刀という薙刀のような武器を持っているポーズが多い。ところが、ここの関羽像は左手に巻物を持ち、右手は長い髭を撫でている。そして巨大な馬に横坐りで乗っている。
関羽と言えば赤兎馬という赤い毛の名馬が思い浮かぶ。しかし、ここでは真っ黒い馬。うむ~。勇猛果敢な武神、というイメージとは程遠いぞ。しかも、赤兎馬とは違って名馬っぽくないし……。
トタン屋根の本堂に入ってみる。中にはおじさんが独りで暇そうに座っていた。台湾のお寺には、僧侶ではない管理人的な普通のおじさんが独りでいることが多い。
堂中には仏像と道教の神像が混ざって祀られていた。
台湾では仏教と道教が混在しており、その境目を見分けるのすら難しい。この寺もご多分に漏れず、仏教と道教の神像が当たり前のように並列していた。
中国語しか話せないおじさんは私に茶をふるまってくれた。これも台湾の田舎のお寺にいくとよくある事である。おじさんは全く言葉が通じないのに身振り手振りで「このお茶を飲んだら足腰や目に効くぞ!」と言っているようだった。さらに「1杯飲むと超元気! 2拝飲むとスーパー元気! 3杯飲んだら山の向こうまで飛んでいけるぞ!」と言っていた。言葉は全く判らないけど、身体全体を使ったハイテンションなジェスチャーでお茶の効能を説明してくれた。
所詮言葉など通じなくても、熱意があれば伝わるんだなー。と妙に納得してしまった。コレは世界を旅するうえで非常に重要な事に思える。
ちなみにこのお茶、超絶不味くて2杯目は無理でした……。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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