珍スポ巡って25年! 「珍寺」を極めた男が明かす「天啓が下った」瞬間と“5つの定義”/小嶋独観・珍寺大道場
日本全国の珍スポットを極めた小嶋独観の連載がいよいよスタート! 熱い想いとミステリーに満ちた施設や場所を続々紹介予定。まずは小嶋氏の来歴と基礎情報から学んでおこう!
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珍スポ巡って25年、すべてを知る男による全国屈指の“珍寺”紹介!
錦江湾の最奥部、霧島市の東九州自動車道沿いにとてつもない光景が広がっている。
山肌の所々に露出した岩にペイントがされていて、遠目から見ると山肌全体が巨大な龍がのたうち回っているように見えるのだ。その長さは約150m。
実はここ、神社でも寺院でもなく、黒酢の醸造所なのだ。確かに巨大龍の下には黒い甕がズラリと並んでいる。
ここの社長がある日、醸造所の裏山が龍に見えてしまった事から岩をペイントして龍が現れたのだ。
近くで見てみると巨大なだけでなく、目力が強く、異様な迫力だ。
他にも大きな神仏の石像が金色にペイントされて林立していて混乱に拍車がかかりまくっている。
山上からは海の向こうに桜島が見える。桜島のスケールにも負けないド迫力の巨大龍。それを造った社長もきっとさぞかしスケールの大きい人物なのだろう。
熊本県の西北端に荒尾観音と呼ばれる寺がある。
小高い丘の上に本堂があるのだが、その直下の崖に寄りかかるように巨大なコンクリ仏がズラリと並んでいるのだ。
像は座像で、高さは6~7mほど。どれも茶色に塗られており、強烈なインパクトを放っている。
しかも像同士がぴったりくっ付いていて、表情もかなりグイグイ迫ってくるので圧が半端ない。
そんな強烈なコンクリ仏が十数体も並んでいるのだ。特に閻魔大王と風神雷神の顔が恐ろしい。
さらに巨像群の間には本堂の直下を貫くトンネルがあり、そこを抜けると、さらにコンクリの七福神や神像が壁に沿ってズラリと並んでいるのだ。
荒尾といえば炭鉱、競馬、ウルトラマンランドと男のロマンに溢れた町(今は全部閉鎖)。この荒尾観音もまた男っぽさムンムンのメンズワールドだった。
関東最東端の銚子市犬吠埼。その近くに長九郎稲荷という神社がある。
海に面した小高い丘の上にあるこの神社、なんと鳥居が魚で出来ているのだ。
手前にあるのがサンマとイワシ、後ろには鯛が鳥居の笠木になっている。
銚子といえばサンマやイワシの水揚げで有名な港町だ。それに目出度い鯛のトリオと、何とも景気のいい鳥居なのだ。
この神社、350年の歴史を持つ。しかし、何ともインディーズ感に溢れているのだ。
そして「珪素神社」という別名まで名乗っている。珪素、つまりシリコンを崇めるキテレツな信仰と古い歴史と魚の鳥居、さらにプレハブの社殿の中にあった壮大な完成図。
全てがちぐはぐで、これらが一つに合致することはあり得るのだろうか? という疑問がいつまでも消えない仁尾であった。
北九州工業地帯の一画、苅田港を臨む山中の洞窟に内尾薬師と呼ばれる薬師如来像がある。
行基作ともいわれているこの仏像は残念ながら外からはよく見えないのだが、それでも周辺にはコンクリート製の小祠が並び、独特の信仰風景が繰り広げられている。
内尾薬師への道はダムの堤頂部を通っていくことになるのだが、そのダムの洪水吐に架かる橋のたもとに小さな棚があるのだ。
その棚を見てビックリ。ちびまるこちゃんの登場人物のような作風のインディーズ仏像がたくさん安置されているのだ。
何ともキュートな仏像群。実はこれらは全て四国八十八か所霊場の本尊だった。
作者はどなたか存じ上げないが、勝手にその心情を想像するに八十八か所の本尊を作りたくて作りたくて仕方がなかったのだろう。
技術も経験もない人が熱い情熱だけで作り上げた超力作なのだ。決して下手だと笑うなかれ。
軍都、呉。坂の多いこの街の山中に不思議な寺が存在している。その名は源宗坊寺。明治時代に稲田源宗坊という人物によって建立された寺だ。
実際、境内に足を踏み入れてみると明治時代に建立されたとは思えない程カラフルでポップなコンクリ仏が境内に点在している。その多くが源宗坊のデザインによるものらしい。
谷あいに位置する寺域ゆえこれまでに数々の台風や水害にあってきた。しかし、それでもこれだけの大型のコンクリ像が今もなお残っていること自体驚きである。
巨大な龍に乗った龍王や梵鐘を担いだ風神など意表を突いたコンクリ像が次から次と現れて度肝を抜かれる。
一番驚くのは高さ6mの不動明王だ。真っ黒な身体で巨大な目をしたこの像、将来的にはこの不動明王を胎内仏としてさらに巨大な仏像が建立されるのだという。
戦艦大和を生んだ呉の街らしい何とも豪快なハナシではないか。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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