人生を変える幸運は「顔見知り程度の人」が持ってくる…人とのご縁とグラフ理論/「この世界、何かがおかしい」

文=赤いカラス

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    異端の占い師・赤いカラス氏が、その著書にて開設する運命や開運の仕組みをご紹介。社会実験によれば、あなたは全人類の隣人である、といえるのだ。

    六次の隔たり

     あなたは大谷翔平さんと知り合いですか? たぶん、違いますよね。
     では、あなたは大谷翔平さんの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いですか?
     数学的に言えば、答えはおそらくYESです。

     六次の隔たり。社会的ネットワークの中では、平均して6回ほど紹介をたどれば、世界中の誰とでもつながることができる。
     1969年にアメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラムが実験で示し、後にグラフ理論(点と線のつながりを研究する数学)や大規模ネットワークの文脈でも検討されるようになった、人間関係のネットワークにおける最も有名な法則です。

     あなたと大谷翔平さんの間に、たった6人。あなたとローマ教皇の間にも、たった6人。あなたとアマゾン奥地の少数民族の長老の間にも、たった6人。
     80億人いる地球上で、数回の紹介を挟むだけで、あなたは文字通り誰にでも辿り着ける可能性がある。

     占い師として「ご縁」を語る仕事をしている私にとって、この法則は鳥肌ものです。なぜなら「ご縁」は偶然でもスピリチュアルでもなく、ネットワーク構造の数学的な必然かもしれないということを示しているからです。ちなみに私と、この本を手に取ってくださっている素晴らしいあなたとは、たぶん2人くらいの紹介をはさめば辿り着きます。現に、この本を出した出版社の先には私がいますし、なんならSNSでDMすれば、直通です。

     1969年、ミルグラムはこんな実験をしました。
     ネブラスカ州の住民296人に手紙を配り、「この手紙を、ボストンに住む特定の株式仲買人に届けてください。ただし、直接知っている人にしか転送してはいけません」と指示しました。参加者は「この人なら目的の人物に近そうだ」と思う知人を選んで、順番に手紙を回していきます。つまり、知り合いから知り合いへ、リレー形式で手紙を届けるゲームです。
     地理的にも社会的にも遠い。ネブラスカ州の中心部からボストンまでの距離は、直線で約2000~2300㎞。日本でいうと、ざっくり北海道から沖縄までの直線距離くらいでしょうか。
     何十人、下手したら何百人ものリレーが必要だろうと予想されていました。
     ところが、届いた手紙の平均経由数は、たった5.2人でした。
     たった5人の仲介で、アメリカの中西部の一般市民から、東海岸の株式仲買人まで届いた。
     この結果は当時、多くの人を驚かせました。世界って思ったより狭いじゃん! と。しかしミルグラムの実験はサンプル数が少なく、届かなかった手紙も多かったため、あくまで示唆に留まるレベルの研究結果にすぎませんでした。
     しかし、本当の衝撃は、21世紀に来ます。
     2016年、Facebook(現在のMeta)の研究チームが、当時のFacebookユーザー約15.9億人のデータを使って、六次の隔たりを大規模に検証しました。
     その結果。
     平均距離は3.57ステップ。
     6人どころか、Facebookユーザー同士なら、平均4ステップ弱でつながれると判明してしまったのです。ミルグラムの時代より、世界はさらに狭くなっていました。
     その後、Facebookの利用者はさらに増え、ネットワークはより密になっていきました。人が増えれば距離が広がりそうなものですが、ネットワークが密になればなるほどショートカットは増えるため、逆に縮んでいる。もっとも、Facebookの友達には一度も会っていない相手も含まれるので、ミルグラムの「本当の知り合い」より少し甘めの数字ではあります。それでも、世界が狭くなっている方向性そのものは変わりません。

     あなたと大谷翔平さんの間には、たった3~4人。
     もはや「知り合いの、知り合いの、知り合い」です。飲み会2回分くらいの距離しかない。想像するとちょっとワクワクしてきませんか。

    弱い関係こそ意外なつながりを生む

     さて、ここで数学の話をします。なぜ80億人もいるのに、たった数人でつながれるのか。直感的にはおかしい気がします。
     そこでグラフ理論という数学の分野で説明します。
     人間関係のネットワークをグラフとして描くとき、一人ひとりが「点」、人と人との関係が「線」になります。
     仮に、1人の人間の平均的な知り合いの数を150人としましょう。これはイギリスの人類学者ロビン・ダンバーが提唱した、人間の集団が社会的な関係を維持できる人数(ダンバー数)と呼ばれる目安です。

    1段目:あなたの直接の知り合い=150人
    2段目:知り合いの知り合い=150人×150人=2万2500人
    3段目:知り合いの知り合いの知り合い=150の3乗人=337万5000人
    4段目: 知り合いの知り合いの知り合いの知り合い=150の4乗人=5億625万人
    5段目: 知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い=150の5乗人=759億3750万人

     5段目で、地球の総人口の約9.5倍に達します。
     もちろんこれは単純計算で、実際には「あなたの友人Aと友人Bも友人同士」という重複があります。でも重複を考慮しても、6段階あれば数学的に地球の全人口をカバーするには十分すぎるんです。
     これが指数関数の暴力。150の5乗=759億。これが「六次の隔たり」の数学的な正体です。

     人間は、線形、つまり一次関数的に考えるのが得意ですが、指数関数的に考えるのが苦手です。
    「6人でしょ? 6人を間に挟む知り合いの知り合いの~って、うーん、なんとなく1000人くらいじゃないの?」と思ってしまう。150の6乗が11兆を超えるなんて、直感ではとても追いつかない。

     あなたの持っている人脈は、あなたが思っているよりもずっとずっと大きいのです。

     ここでもうひとつ、重要な理論を紹介します。
     1973年、社会学者のマーク・グラノヴェッターが「弱い紐帯の強さ」という論文を発表しました。

     人間関係には「強い紐帯」と「弱い紐帯」がある。強い紐帯は、家族、親友、同僚。頻繁に会い、深い信頼で結ばれている関係。弱い紐帯は、たまに会う知人、元同僚、友達の友達。年に一度くらいしか連絡しない関係。

     直感的には、強い紐帯のほうが価値がありそうです。
     でもグラノヴェッターの発見は逆でした。
     新しい情報や機会をもたらすのは、強い紐帯ではなく、弱い紐帯である。
     理由は明快でした。強い紐帯で結ばれた人たちは、あなたと同じコミュニティにいる。同じニュースを見て、同じ業界にいて、同じような人と付き合っている。つまり、あなたがすでに知っていることを知っている人たちです。
     一方、弱い紐帯でつながっている人は、あなたとは違うコミュニティにいる。違う業界、違う地域、違う趣味。だからこそ、あなたが知らない情報や、あなたの世界にはない機会を持っている。

     つまり、会いたい人に最短で辿り着く方法は、こうです。
     会いたい人の「近くにいそうな人」「似たようなコミュニティの人」に、まず会ってください。そういう人たちが集まるお店に行くのもおすすめです。
     直接会えなくていいです。4段階、5段階手前の人でいい。会いたい人への経路は、あなたのすぐ近くに、確実に存在しています。あとは実際に接続するかどうか。

    つながりやすい時代の相互影響力

     最後にもうひとつ、少し怖い話を。

     2008年、ハーバード大学のニコラス・クリスタキスとカリフォルニア大学のジェイムズ・ファウラーが、フラミンガム心臓研究のデータ(約5000人分、20年間)を分析し、こんな事実を発見しました。
     幸福は、「3次の隔たり」まで伝染するように見える。
     あなたが幸せだと、あなたの友人が幸せになる確率が15%上がる。
     友人の友人が10%上がる。
     友人の友人の友人が6%上がる。
     不機嫌や愚痴もまた、近くの人間関係に波及していく可能性があります。

     つまり、あなたの今日の機嫌は、あなたの知らない誰かの1日に、思った以上に影響しているかもしれないのです。
     六次の隔たりは「誰とでもつながれる」という希望の法則ですが、同時に「あなたの一挙手一投足がネットワーク全体に波及する」という責任の法則でもあります。
     ご縁とは、つながることだけではありません。つながったあとに、何を流すかが問われています。
     あなたのネットワークに、笑顔を流すか。愚痴を流すか。
     ご縁とは、出会いの奇跡ではなく、流したものが遠くまで届いてしまう仕組みなのかもしれません。

    参考
    社会学者マーク・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ」と、クリスタキス&ファウラーのネットワーク研究

    「この世界、何かがおかしい」(赤井カラス・著/サンクチュアリ出版)
    https://www.sanctuarybooks.jp/book/detail/1693

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