男女和合の餅”オブック”を食べる! 金剛地金山神社の伝統祭祀「子宝まつり」の危機/山梨奇譚
性器の形の餅をこね、食べることで子宝を祈願する。独特の「子宝まつり」を伝える山梨県の金剛地金山神社に現地YouTuberが行ってみたところ……。
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4本柱をつないだ謎の祭祀施設「お腰掛」。山梨県韮崎の周辺にしかない特異な社は、諏訪のミシャグジにもつながる古代信仰の現場だった!
日本全国には各地方、さらに各地域によって様々な信仰がある。
私が活動拠点とする山梨県、その北西部に位置する韮崎市には他地域ではなかなか見ることができない独特の祭祀施設が存在している。
それが「お腰掛(おこしかけ)」と称されるものである。
お腰掛は韮崎に存在すると言ったが、厳密にいうと韮崎市穂坂町というさらに狭いエリアと、隣接する北杜市・甲斐市の一部地域のみに限定され、祭祀施設はこのエリアに点在している。
今回は、韮崎北杜青年会議所が主催で行ったフォトコンテストでムー特別賞を受賞した「山神社(大山神社)」のお腰掛への取材を行った。
韮崎市といっても範囲がとても広いのだが、山神社は市街から30分ほど山を登った場所にある。到着してまず出迎えたのは、急勾配の石段と自然木を使った鳥居だった。
息を切らしながら石段を登るとまずは立派な神楽殿が出迎え、とても山の中とは思えない境内が広がっていた。
境内を見渡してもお腰掛けが見当たらなかったのだが、どうやらさらに奥にあるようで、そのまま奥へと歩みを進める。
すると現れたのは、またしても自然木を使った鳥居。神社は色々と巡ったことがあるが、このようなスタイルの鳥居はなかなか珍しい。これが建てられてからどのくらい時間が経っているのだろうか? それほど腐食も見られないところから考えると、地域の氏子がしっかりと手入れをしているのかもしれない。
そして鳥居をくぐった先に見えてきたのが、拝殿と、目的の『お腰掛』だった。
拝殿には天狗の一本歯下駄が奉納されていたのだが、これがまた巨大なもので驚きを隠せなかった。「なぜこんなに大きな下駄が?」と疑問に思ったのだが、それも後になってお腰掛の信仰と関係したようである。
さらに拝殿の脇には、お祭りに使われていたのであろう、巨大な天狗の面も横たわっていた。
そして拝殿の裏ーー下の写真では奥に見える木の櫓、祠のようなものが、今回の目的である「お腰掛」だ。
お腰掛は4本の柱を貫で繋いだような特異な形状をしており、山神社ではその中にイチイの木が奉納されていた。他の地域では中心に「石棒」が祀られているところもあるようである。
そしてその脇には『大山津見神』と書かれた大太刀、さらに背後にも錆びてはいるが大太刀が奉納されていた。
一体この特異な形状の祭祀施設はなんなのか? どのような信仰があったのだろうか?
今回の取材を含め、資料や史料での様々な記述から仮説が出てきたのでここに記そうと思う。
実はお腰掛については韮崎市誌でも「お腰掛と称す木の枠組みがあること」、そして「古い祭祀跡の名残りかそれにまつわる信仰だろう」といったことしか書かれていない。
韮崎の広報誌に載る山神社の解説では、「祭神となる大山津見神が大きすぎたため本殿に入ることができず、お腰掛があるだけ」と書かれていた。それに付随して、神社の由緒には「御神体は五丈五尺」とある。この五丈五尺をメートル換算すると16.5mとなるのだが、実はこの長さは諏訪大社の御柱、一之御柱と同じ長さである。
思えば、今回訪れた山神社を含むお腰掛を有する神社には本殿が存在しないが、諏訪大社も同様の形式を取っている。さらに山神社に関して言えば、周囲には二社、諏訪神社が鎮座していた。
そして山神社ではなく、同じく韮崎市穂坂の神明神社も同じくお腰掛がある。韮崎市誌では、「明治になって社名を神明神社に変更したが、もとは社宮神といい、村明細帳には年により山宮神、生宮神、または社記には斉宮神などと書かれている。」とあった。
この記述から「社宮神≒ミシャグジ」、つまり山神とミシャグジが習合したものであると考えることができる。
諏訪におけるミシャグジは道祖神・塞の神と合わせて祀られているのだが、山に登る修験者などが道祖神や塞の神として祀った可能性があるといえるかもしれない。山神社に天狗の面や一本歯下駄があったのも、修験道との由縁を示すものではないか? 御祭神である大山津見神(大山積神)は天狗をまとめる神ともされているのである。
山梨県というのは縄文文化が栄えた地でもある。
お腰掛のある神社は「穂坂」という場所に集中して見られるが、この周囲にある穂坂路(ほさかみち)というのは、かつて甲斐と信濃を結ぶ街道の一つだった。
韮崎市穂坂町には女夫石遺跡という遺跡があり、実際にここからは縄文土器や土偶、黒曜石などたくさん見つかっているのだ。
一説にミシャグジ信仰は縄文時代から続く信仰とも言われている。
その信仰が色濃く残る諏訪では、諏訪大社に本殿がなく4本の柱を立てているわけだが、本殿がないことも含め、「御柱」と「お腰掛」はかなり共通点があるように思える。
「お腰掛が何なのか?」ということに関して、はっきりとした答えが出るわけではない。ただ、ここまでの仮説から考えると、お腰掛とは縄文時代から続く信仰の名残も含まれていると考えることはできるだろう。
最後に余談だが、ほかの地域に「お腰掛」と似たものがないか調べたところ、ひとつそれらしいものが見つかった。
それが九州鹿児島県霧島の「霧島神宮古宮跡」である。
ここは日本神話の天孫降臨でも有名な瓊瓊杵尊を主祭神として祀っているが、その中央にお腰掛によく似た建造物があるのだ。天孫降臨神籬(ひもろぎ)斎場として現在でも祭祀がとりおこなれている。
(→参考サイト https://www.kyushu-jinja.com/kagoshima/kirishima-jingu_kogushi/ )
神籬は家を建てる地鎮祭の時などにも見かけるが、神様を迎え入れる仮設の依代。
なぜこのような祭祀施設が、遠く離れた九州と山梨の一部地域だけにあるのかは、まったく謎である。
山梨奇譚
山梨県の不思議な場所、変わった物、伝説・伝承などを紹介するYouTube「山梨奇譚」。ロケ動画を中心に、山梨の変わった魅力を発信する。
世界の歴史、神話、宗教を解説するYouTube「世界ミステリーch」も運営する。
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