UFOと現実社会が共鳴する! 歴史に残る傑作UFO映画オールタイムベスト(20世紀版)
「良いUFO映画とはUFOと関わりが深い映画である」ーー後編では20世紀に登場した必見のUFO映画5本をピックアップ! 配信で視聴できるリンク付きです。
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「未知との遭遇」から「情報開示の日」へ。この50年間、スピルバーグはUFOをどのように見てきたのか。そのリアリティと、予言書のような先見性を解読する。
1993年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督作品『ジュラシック・パーク』は、映画としての圧倒的な面白さとともに、観客に新しい体験をもたらした。それは、「生きて動いている恐竜を見る」という体験だ。
もちろん、本物の恐竜を見たわけではない。それでもスクリーンに現れたティラノサウルスやブラキオサウルスは、それまで図鑑や博物館の骨格標本でしか見た事がなかった恐竜を、「もし本当に目の前にいたら、こう見えるのだろう」と思わせるだけのリアリティを持っており、観客の度肝を抜いた。
そして、そのUFO版ともいえる映画を、スピルバーグはそれより16年前に作っている――それは1977年に公開された『未知との遭遇』だ。
UFOを実際に目撃したことのない、私を含むほとんどの人々が、この映画で初めて「UFOを目撃した」のだ。
夜の空を飛び交う謎の光を見上げ、巨大な母船が降りてくる光景を目撃し、そして、その扉の向こうから現れる地球外知的生命体と遭遇したのである。
スピルバーグはその後も、『E.T.』(1982年)、『メン・イン・ブラック』シリーズ(1997年~、製作総指揮)、テレビ・シリーズ『TAKEN』(2002年、製作総指揮)、『宇宙戦争』(2005年、監督・製作)、『SUPER 8/スーパーエイト』(2011年、製作)など、UFOや地球外生命との遭遇をメインのテーマとした作品を次々と生み出してきた。
そして約半世紀を経た2026年、その集大成と期待される監督最新作『ディスクロージャー・デイ』が、日本でも近日公開される。

映画『ディスクロージャーデイ』
公開日:10月1日(木)全国公開 公式サイト: http://disclosureday.jp
「未知との遭遇」から「情報開示の日」へ。この50年間、スピルバーグはUFOをどのように見てきたのだろう。
インディアナ州に暮らす平凡な電気技師ロイ・ニアリーは、ある夜、不思議な飛行物体と遭遇する。その物体が放つ強烈な光を浴びた彼は、それ以来、頭の中から離れない奇妙な山のような形を粘土や食べ物で取り憑かれたように再現するようになり、やがてワイオミング州のデビルズ・タワーへと導かれていく。そこで待っていたのは、政府が秘密裏に準備していた地球外知的生命とのコンタクトだった。
『未知との遭遇』が他のUFO系映画と比べて飛び抜けている点は、単にUFOが登場するだけのSFエンターテインメント映画ではないことだ。
作品には、当時のユーフォロジー、つまりUFO研究の知見が大量に取り込まれていた。タイトルの「第三種接近遭遇」自体が、米空軍のUFO調査機関「プロジェクト・ブルーブック」に科学顧問として参加した天文学者J・アレン・ハイネック博士が考案したUFOとの遭遇分類に由来する。ハイネック博士は映画のテクニカル・アドバイザーとなり、ラストでは本人もカメオ出演している。そしてスピルバーグは、ハイネックの著書で紹介された実際のUFOを作品のモチーフに使用した。
たとえば、映画序盤でパトカーがUFOを追いかけるシーンには、1966年にオハイオ州で警官たちが発光物体を約70マイルにわたって追跡した「ポーテージ郡UFO追跡事件」をモチーフにしていると思われる。また、UFOと遭遇したロイの車が停止し(EM効果)、顔に日焼けのような症状が残る描写は、1957年の「レヴェランドUFO事件」や、同年ニューメキシコ州で起きた「ジェームズ・ストークス事件」を思わせる。さらに映画に登場する宇宙人の姿も、有名な「ヒル夫妻事件」などハイネックらが収集した多数の第三種接近遭遇レポートをもとに組み立てられたものだった。
そんなリアリティに裏付けられていたからこそ、この映画には公開当時から奇妙な噂がつきまとった。
フランソワ・トリュフォー演じるUFO研究者ラコーム博士の通訳兼助手デヴィッド・ラフリン役で出演したボブ・バラバンが、撮影中につけていた日記(『Close Encounters of the Third Kind Diary』)の中で「『未知との遭遇』そのものが、将来の宇宙人との接触に備えて人類を”慣らす”ために作られている」――という噂が現場に流れていたと書き残している。つまり「政府が秘密裏に映画を支援し、人類が実際の遭遇を受け入れられるよう準備している」という説が、映画の完成前から存在していた事が伺われるのである。
この説は後にUFO陰謀論の世界でさらに発展する。
1980年代にはジョン・リアが、『未知との遭遇』や『E.T.』は政府によって密かに後押しされ、一般大衆に宇宙人という存在を徐々に受け入れさせる役割を担ったと主張した。1990年代にはミルトン・ウィリアム・クーパーやフィリップ・J・コーソーらによって、映画やテレビを利用して人々を将来のディスクロージャーへと慣らしている、という物語へと膨らんでいく。
ジョン・リア(John Lear)
米国のパイロットで、1980年代後半からUFOをめぐる政府陰謀説を盛んに唱えた人物。1987~88年にUFO・超常現象を扱うパソコン通信ネットワーク「ParaNet」に発表した「Lear Statement」では、『未知との遭遇』や『E.T.』が、宇宙人の存在を大衆に受け入れさせるため、政府内部の関係者によって密かに後押しされたと主張した。
ミルトン・ウィリアム・クーパー(Milton William Cooper)
米海軍勤務経験を持ち、政府によるUFO隠蔽などを主張した陰謀論者。1991年の著書『Behold a Pale Horse』では、映画やテレビを通じて宇宙人の存在を少しずつ身近なものにし、将来の情報公開を人々が受け入れやすくするという説を展開した。
フィリップ・J・コーソ(Philip J. Corso)
元米陸軍中佐。1997年の著書『The Day After Roswell』で、ロズウェル事件で回収された地球外技術が米軍によって民間産業へ移転され、現代技術の発展に利用されたと主張した。
もちろん、スピルバーグが政府から秘密裏に依頼されてその映画を作ったとする事実はない。それどころか製作側から協力を求められた米空軍・国防当局は、UFOが実在し政府と軍がその存在を隠蔽している印象を与えることが政策に反するとして、映画への協力を拒否していたことが記録されている。
ただし、政府が映画やテレビを使ってUFOに対する大衆の認識を操作するという発想そのものが、まったく根拠のない妄想だったわけでもない。
1953年にCIAが主催したロバートソン査問会では、UFOへの社会的関心を弱めるため、マスメディアや広告、学校、さらにはディズニーまで利用した「公教育(public education)」を提案していたのだ。ただし目的は宇宙人の存在に人々を慣らすことではなく、UFO報告の信憑性を低下させ、過熱する関心を鎮めることだった。
真相はともかく、『未知との遭遇』が政府のUFO教育映画ではないかとまで思わせたこと自体、この映画が人々に与えた「UFOを目撃した」という感覚の強さを物語っている。
その5年後、スピルバーグは『E.T.』で地球外生命との距離をさらに縮める。
『未知との遭遇』では宇宙人は巨大な母船の向こう側にいる神秘的な存在だった。ところがE.T.では子供の家に住み、菓子を食べ、自転車に乗り、やがて友人となる存在だ。この映画により宇宙人は「遠い星から来た存在」から「隣にいる存在」になった。
その後、製作総指揮として参加した『メン・イン・ブラック』では、宇宙人はすでに大量に地球へ入り込み、人間社会に紛れて暮らしている。しかも政府の秘密組織だけがその事実を知っている。というUFO陰謀論で語られてきた世界そのものを、巨大なハリウッド映画へと変貌させた。
さらにテレビシリーズ『TAKEN』では、ロズウェル事件、UFO墜落、コンタクティーの台頭、アブダクション、政府による隠蔽、エイリアン・ハイブリッドなど、第二次世界大戦後のアメリカUFO史で語られてきたモチーフを、三世代にわたる大河ドラマとして描いている。
『TAKEN』(2002年)は、 ロズウェル、コンタクティー、アブダクション、政府の隠蔽など、戦後50年のUFO史を3家族4世代の物語に織り込んだ、スピルバーグ製作総指揮の重要作。ダコタ・ファニングのナレーションも素晴らしい。現在、日本では主要サブスクで配信されていないのが残念だ。
一方、『宇宙戦争』ではE.T.とはうって変わって地球外生命は圧倒的な恐怖として現れる。つまりスピルバーグにとって宇宙人は、「善良なスペース・ブラザー」といった単純なものではなく、畏怖すべき未知であり、友人にもなれば、人間の日常を一瞬にして破壊する存在にもなる。
そして2011年には、スピルバーグが製作として関わった『SUPER 8/スーパーエイト』で、監督のJ・J・エイブラムスが、少年たち、軍の秘密、隠蔽された地球外生命という初期スピルバーグ映画の文法を受け継いだ作品をつくっている。
いつしかスピルバーグのUFO映画は、われわれが抱くUFOのイメージそのものを形づくり、それは次の世代へと受け継がれていったのだ。
1977年のインタビューを読むと、スピルバーグが若いころからUFOに強い関心を抱いていたことがわかる。自身を「不可知論者」と位置づけ、UFOの実在については明確な判断を避けながらも、目撃者たちの証言には真剣に耳を傾け、その多くが誠実なものだと受け止めていた。そして、そうした証言に触れたことが『未知との遭遇』を作る動機のひとつになったとも語っている。

▼スティーブン・スピルバーグ監督、『未知との遭遇』の撮影現場にて
(写真)https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/interviews/close-encounter-with-steven-spielberg
同時に、政府や空軍の秘密主義にも不信感を抱いていた。さらに彼が惹かれていたのは、単にUFOは実在するのかという問題だけではない。なぜ人々は空を見上げ、そこに未知の存在を求めるのか。なぜUFOを「信じたい」と思うのか。そうした人間の心理への興味もまた、『未知との遭遇』の出発点にあったようだ。
スピルバーグはUFOという問題を大きく語るときには慎重でありながら、個々の目撃事例について話し始めると、かなりビリーバー側へ傾いていく。筆者が少し面白いと思ったのはここだ。
例えば、彼は機密解除前にプロジェクト・ブルーブックのファイルにアクセスを試みたという。また、ヒル夫妻の事件について語る時も、同事件を詳細に調査したジョン・C・フラーの『中断された旅』を引き合いにだし、スターマップについて話し出したりと、相当な関心と情熱が伺える。
断定を避ける冷静さと、それでも未知の可能性に期待せずにはいられない好奇心。その一見相反する二つの姿勢が同居しているところに、スピルバーグのUFO観の特徴があるのかもしれない。そして、その曖昧さこそが、彼のUFOへの興味を今日まで失わせなかった理由のひとつにも思える。
そして約50年が過ぎた。

『ディスクロージャー・デイ』公開を前にした2026年6月、CBSのインタビューで79歳になったスピルバーグは、さらに踏み込んだ発言をしている。
これまで集めてきた状況証拠、見てきたドキュメンタリー、そして米議会で行われた証言などを総合すれば、彼らは地球に「来ていたし、いまもここにいる」と自分は考えている、と語ったのである。そして「もしかすると、ずっとここにいたのかもしれない」とも付け加えている。
かつて想像力によってUFOをスクリーンに出現させた青年は、半世紀後、本当に「彼ら」が存在する可能性をかなり真剣に考え始めたのだ。
そして、スピルバーグ自身の変化と並行するように、現実のUFOをめぐる状況も変化した。
かつてUFOは、目撃者が語り、研究家が調べ、政府が否定するものだった。しかし2017年以降、米軍関係者によるUAP証言が大手メディアで報じられ、やがて問題は米議会へ持ち込まれた。
2024年11月の下院公聴会「未確認異常現象:真実の解明」ではルイス・エリゾンドらが証言し、2025年9月には「UAPの透明性と内部告発者保護を通じて国民の信頼を回復する」と題した公聴会が開催された。そこにはジャーナリストのジョージ・ナップや、巨大な三角形物体を目撃したと証言する元空軍兵ディラン・ボーランドらも出席している。議題そのものが、UAPに関する政府の「透明性」と内部告発者の保護だった。
さらに2026年、米政府は「PURSUE」をスタートさせた。政府機関が保有する未解決UAP事例や歴史資料を探し出し、機密解除したうえで公開していく事業で、5月8日の第1弾から、8月7日までに5回の資料公開が行われている。
もちろん、これは「宇宙人の存在を政府が認めた」という意味ではない。PURSUE自身も、公開資料を「政府が観測現象の正体について決定的な判断を下せなかった未解決事例」と位置づけている。
それでも、1977年当時には「政府はUFOについて何かを隠している」とフィクションの中で描かれていたものが、いまや政府自身によるUAP資料の公開という現実の政治課題になったことは確かだ。
そして、PURSUE第3弾が公開された2026年6月12日に、『ディスクロージャー・デイ』は全米公開された。
もちろん両者に何らかの関係があるわけではない。だが、『未知との遭遇』の撮影中から「これは政府が人類を宇宙人に慣らすための映画ではないか」と噂されてきたスピルバーグである。約50年後、米政府が実際にUFO資料を次々と公開しているさなか、その監督が『ディスクロージャー・デイ』という映画を世に送り出したのは、ある種の必然かもしれない。
1977年、私たちは『未知との遭遇』でUFOを「目撃した」。それから約50年。今度スピルバーグが描くのは、UFOを目撃する瞬間ではない。その存在について、世界中の人々が同時に「知らされる日」だ。
遭遇(Encounter)から、開示(Disclosure)へ。それはスピルバーグのUFO映画が辿ってきた50年間であると同時に、現実のユーフォロジーそのものが辿ってきた半世紀なのかもしれない。
【参考】
Top secret: Steven Spielberg on the brink of the “Close Encounters” premiere
https://www.rogerebert.com/interviews/top-secret-steven-spielberg-on-the-brink-of-the-close-encounters-premiere
A close encounter with Steven Spielberg
https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/interviews/close-encounter-with-steven-spielberg
“Disclosure Day” director Steven Spielberg on aliens: “I absolutely think that they have been here, and they are here.”(映画『ディスクロージャー・デイ』の監督スティーブン・スピルバーグは、宇宙人について「彼らは間違いなく過去に存在し、現在も存在していると私は確信している」と語っている。)https://www.cbsnews.com/news/disclosure-day-director-steven-spielberg-on-alien-visitations
『ディスクロージャー・デイ』日本公式サイト「NEWS」
https://disclosureday.jp/news
秋月朗芳
2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」代表。同会で年一回発行している同人誌『UFO手帖』の編集長を務める。また最近『日曜版』という、オカルト/ポップカルチャー/テックを扱うニュースサイトの運営も始めている。
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