われわれの脳や記憶は宇宙の“揺らぎ”が生み出した泡沫にすぎない!? 「ボルツマン脳」議論の現在地
人は年齢に応じて人生経験を積み、相応の記憶を蓄積している。しかし先鋭的な思考実験は、われわれの脳や記憶が偶然に生まれてはすぐに跡形もなく消え去る泡沫のようなものだと示唆している。記憶と意識は根拠のない
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「嫌な記憶」を永久に消し去る方法が発明されていた! しかし、完璧に忘れることにはリスクも存在する。代わりにゲームで楽しくトラウマ回復!?
誰にでも忘れてしまいたい記憶の1つや2つはあるものだろう。米ボストン大学の神経科学教授であるスティーブ・ラミレス氏もその1人だ。同氏は博士課程の学生だった頃、かけがえのない親友を亡くした。その辛い記憶から逃れようとアルコールに依存し、仕事や日常生活に支障をきたした経験をもっている。

過酷な日々を乗り越え、親友の死を原動力に研究に邁進した同氏が見出したのは、辛い記憶をコントロールする方法だった。基礎となったのは2009年、カナダの研究者グループによって発表された論文。恐怖を呼び起こす脳細胞を特定し、その部分を破壊することで記憶が消去されたという、マウスを使った実験結果だ。
「それは画期的な論文でした」とラミレス氏は語る。以降、彼は別のアプローチで記憶のコントロールを試みた。破壊するのではなく、ポジティブな記憶に結びついた脳細胞を活性化させることで、マウスがもつ恐怖の記憶をやわらげることに成功。2022年には、ネガティブな記憶の想起と同時にポジティブな記憶を活性化させることによって、マウスの恐怖反応を長期的に取り除けることを示した。

げっ歯類での実験結果は、人間にも応用できる可能性が非常に高いと考えられている。しかし、「どのような危険な副作用が生じるかは、誰にも予測できない」とラミレス氏は慎重だ。
現在のところ、PTSD症状で見られるような辛い記憶のフラッシュバックを抑制するには、認知行動療法(CBT)、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)、ベンゾジアゼピン系薬剤やプロポフォールなどの薬物療法などが有効とされている。
一方、スウェーデン・ウプサラ大学の臨床心理学者であり、神経科学者でもあるエミリー・ホームズ氏らは、脳の視覚領域を「乗っ取る」ことでフラッシュバックを軽減する手法を開発。問題となる記憶を思い起こした後、有名なコンピューターゲーム『テトリス』を20分間プレイするという、驚くほどシンプルな方法だ。

「被験者が『テトリス』をプレイすると、フラッシュバックが起こる時と同じ脳の領域が活性化することを確認しました」とホームズ氏は語る。この手法によって、フラッシュバックの頻度が週平均14回から、1か月後には週1回にまで減少することを示した。
前述のラミレス氏もこの結果を「素晴らしい」と評している。ホームズ氏もラミレス氏も、記憶を完全に消去するよりも操作する方が望ましいとの立場だからだ。辛い記憶は一時的に押し殺す必要があるとしても、当人にとって学びや成長の原動力となる可能性もあり、それが消えずに残っていたことに感謝するケースも考えられる。今後、記憶操作のテクノロジーが一般化する前に、われわれは記憶の扱いに関するガイドラインを定めておく必要があるのではないか。
【参考】
https://www.sciencefocus.com/future-technology/erase-painful-memories
webムー編集部
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