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近年、急速に信憑性が高まっているかに思えた「ネッシー=巨大ウナギ説」。ここに来て、それを覆す数学専門家の理論が発表された! 探索の最前線を紐解く。
2019年、オタゴ大学(ニュージーランド)の遺伝学者ニール・ゲメル教授が、スコットランドのネス湖で環境DNAを基にした調査を行い、UMAネッシーの正体が「ヨーロッパウナギの巨大な個体」である可能性を示唆した。
しかし、数学者/データアナリストであるフロー・フォクソンは、この説を真っ向から否定している。ネッシーとして認識されるためにはウナギの体長が最低でも6メートル必要だが、ネス湖でウナギがここまで大きく育つ確率を計算した結果、ほとんどゼロに近いという答えが出た。ただ、1メートル程度のウナギはかなりの数が棲息していることが考えられるので、湖水からまとまった量のウナギのDNAが検出されたとしている。
では、ネッシーの正体は実際のところ何なのか?
まずは、ネッシーの歴史について簡単に振り返っておこう。ネッシーが話題になり始めたのは1933年頃からだ。“外科医の写真”と呼ばれる有名な写真が英『DAILY MAIL』紙に掲載された1934年4月以来、世界中で知られることになった。以来、約90年間にわたってさまざまな画像や映像が発表され、最近ではソナーを搭載した観光客船でネス湖をクルーズするツアーも開催されている。ちなみに、観光客船のソナーに奇妙な物体がとらえられることも珍しくない。
そして、前述のゲメル教授が2019年に行った現地調査では、ネス湖の250地点でサンプルを採取して環境DNAを抽出、その時点で棲息しているか、あるいはかつて棲息していた生物の特定が試みられた。最終的に15種類の魚類と3000タイプのバクテリアの特定に成功したが、プレシオサウルス型の生物の存在を示唆するデータは皆無だった。ただし、当時ゲメル教授は次のようなコメントを残している。
「我々のデータは個体のサイズを具体的に示すものではないが、ネス湖に巨大種のウナギが棲息している可能性を否定するものではない」
これは「たまたまウナギの巨大な個体を見た人がネッシーと思ったとしても不思議はない」というロジックだ。フォクソンがこのあたりに引っかかるものを感じたことは容易に想像できる。
ゲメル教授に対抗するためにフォクソンが採用した手法こそ、より理論的にわかりやすい数学的手法だった。ごくざっくり言ってしまえば、こういうことだ。
まずネス湖の過去の漁獲データを詳しく調べ、ネス湖には常に8000尾以上のウナギが棲息していることが分かった。この数字を基に考えると、体長1メートルの個体を見つける可能性は5万分の1の確率であることが明らかになった。さらに、体長が6メートル以上の個体となると、棲息している可能性はきわめて低くなる。「きわめて低い」という表現は「ほぼゼロ」という意味にほかならない。フォクソンによる計算の詳細はbioRxivというサイトで公開されている。
このように、ネッシー探索の最前線では遺伝学 VS 数学という学際的な対決機軸が浮き彫りになっている。
そして興味深いのは、フォクソンが「もしネッシーが存在するのであれば、それは巨大ウナギではない」と断言していることだ。数学的/データ分析手法で導き出された結論によって、「やはりネッシーの正体はプレシオサウルス型のレイクモンスターではないのか」という声が再び高まっているのだ。
ちなみにフォクソンは、全く同じ手法でビッグフットに関する考察も行っていて、こちらについては「クマかもしれない」という結論に達している。UMAファンの味方なのか敵なのかよくわからない人物だが、注目に値することは間違いない。次はぜひ、エイリアン関連の計算をしていただきたい。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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