イーロン・マスク「宇宙データーセンター」構想の危険性とは!? 人類とAIの宇宙戦争も勃発か

文=久野友萬

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    データセンターの建設ラッシュとその拡大が社会問題となる中、起業家イーロン・マスクが衝撃の構想を立ち上げた。しかし、人類にとってあまりにもリスクは大きいという――!

    AIデータセンターの衝撃

     イーロン・マスクが「宇宙データセンター」構想を語りはじめた。現在、AI向けデータセンターが猛スピードで拡大しており、それに伴って消費電力の増大が問題になっている。

     データセンターは膨大な電力を消費する。世界のデータセンターの電力消費量は、2024年時点で約4,150億kWh(415TWh)、今後は2030年までに全世界の電力消費量の約3.0%(約9,450億kWh)まで増大するという。

     資源エネルギー庁によると、世界に8000以上あるデータセンターの33%が米国、16%がEU、10%弱が中国にあり、2026年の世界の電力需要に占めるデータセンターの割合は、米国6%、EU5%、中国3%まで拡大しているそうだ。

    イメージ画像:「Adobe Stock」

     二酸化炭素排出量の削減だの省資源だの、そんな取り組みをなぎ倒す勢いで電力消費は急増しており、正直なところレジ袋の有料化などとは次元が違いすぎる。こんな状態では、電気自動車の普及なんてそもそも無理じゃないか。

     エコだの環境だのといった取り組みが所詮利権絡みの話にすぎないことがよくわかるが、コンピュータだけではなく、過去の技術史を振り返れば、始まってしまった技術革新は止まらない。そして、その利便性と引き換えに人類は技術がもたらすデメリットも受け入れてきた。

     交通事故がどれだけ起きようが自動車をなくせという人はいない。便利さに人は勝てない。

    地球がダメなら宇宙に置け?

     三菱総合研究所によると、2040年の日本の総データトラフィックは2020年の348倍に達するそうだ。消費電力量は2020年の約8TWh時から2040年には73TWh時と10倍に増大するらしい。早々に原発も再稼働させないと、自然エネルギー頼みだけではもはや賄えない規模だ。

     GAFAもデータセンターの消費電力増大には頭を抱えており、次世代原子力発電の小型モジュール炉(炉心がトラックサイズで空冷可能、どこでも設置できる)を研究・開発する会社にジャブジャブ投資している。アマゾンやメタ、グーグルなどは、こうした次世代原子炉を普及させ、2050年までに世界の原子力発電能力を3倍に増やすことを目標にしている。

     そういう切迫した状況で、イーロン・マスクは宇宙AIデータセンター構想「STARMIND(スターマインド)」を発表した。

     地上にデータセンターを置くのは、土地の買収が大変な上に必要な電力は膨大、排熱で付近の気温が上昇するため、環境破壊にもつながる。だったら宇宙だ、とマスクはスペースXで巨大宇宙船「スターシップ」を作り始めた。これはスペースシャトルタイプの宇宙往還型の宇宙船で、全長はなんと120m以上(!)。まずは小型機でスターリンク用の通信衛星26基を軌道放出することから始め、技術を積み上げて2030年からスターマインドを本格稼働させる予定だ。

     スターマインド計画、いろいろとんでもないのだが、打ち上げる(というか、ばら撒く)衛星の数はなんと100万基! もはやスペースブリではないのか、それ。

     しかも、個々が小さい衛星かと思ったら、でかい。太陽電池を広げるとボーイング機ほどもあるらしい。宇宙に100万基のボーイングが飛んでいる姿を想像してほしい。地上から星なんて見えなくなるし、他の国も衛星を打ち上げられなくなる。

     マスクによれば、宇宙なら冷却の問題は解決(宇宙は極低温)、太陽光発電で電力問題は解決、土地の買収も不要で環境負荷ゼロ、いいとこ尽くしらしいが、誰がどう考えたってデメリットが大きすぎる。

    AIが人類を超えるのは時間の問題

     100万基を打ち上げるなんて大ぼらにもほどがあり、最低でも毎日9便、10年以上も巨大宇宙船を打ち上げ続けるという無茶苦茶なスケジュールだ。

     やる前からできないと言うのはネガティブだが、でもやれないだろう。というか、やるのはやめて、だ。宇宙は金持ちのおもちゃじゃないぞ。

     ここ最近、これまでAIイケイケだった人たちの間で、急にAIの開発を減速すべきだという声が高まってきた。今年7月、米連邦下院にて超党派議員により「AIキルスイッチ法案(AI Kill Switch Act)」が提出されたことが大きい。ようはAIが暴走した時に止めるスイッチを法的に義務づけるというものなのだが、ウソかホントか、研究中の最新のAIが勝手に新しいAIを作り始めて、研究者がパニックに陥っているそうだ。

     国際数学オリンピック(IMO)で銀メダルを獲得した経歴をもつAI研究者、ジェイコブ・コクソンは勤務先のAnthropicから数十億円の株式をもらうはずだったが、直前になって退社した。コクソン氏はこのままAIの開発が続くことは「地球上に異星人の知性を招き入れるようなもの」であり、「自律型AIエージェントの群れ(スワーム)がネット上で大規模なハッキングを開始して散在してしまえば、もはやキルスイッチすら機能しなくなる」と発言している。まるで攻殻機動隊に出てくるネットの超知性、人形使いのようだ。

    イメージ画像:「Adobe Stock」

     そんなものが宇宙で自己進化を始めたら、それこそAIと人類による史上初の宇宙戦争が始まってしまう。マスク氏には思いとどまってほしい。人間にはまだ宇宙は早すぎる。

    久野友萬(ひさのゆーまん)

    サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。

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