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今月のテーマは「皿」にまつわる幽霊たち! なぜそうなったのかは後ほど明らかになることとして、皿の幽霊もよくぞこんなにというほど補遺々々されています。ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」だ!
鹿児島県の串木野というところに、ある資産家の屋敷がありました。
この家には代々伝わる10枚の高価な皿があり、主人はとても大切にしていました。
どれくらい大切かというと、「この皿を壊した者は殺す」と女中たちを本気で脅すほど。この言葉には女中たちも、さぞかし肝を冷やしたことでしょうし、皿を扱う時は大変緊張もしたでしょう。手は震え、過度なほど慎重になっていたはずです。
そんな時、もっとも起きてはならない事件が起きてしまいます
皿の1枚が割れてしまったのです。
割った者の名はフキ。この家で働く女中でした。もちろん不慮の事故です。
真面目で忠実な彼女は自分の失態を嘆き、とうとう耐えきれなくなって、井戸に身を投げてしまいました。
その後、夜が更けると必ず、フキの声が聞こえてくるようになりました。
ひとつ……ふたつ……みっつ……よっつ——と数える声が。
……ななつ……やっつ……ここのつ……。
そこまで数えると、また、ひとつ……ふたつ……と初めに戻って一から数えだします。
10枚ある皿の1枚を割ってしまったので、彼女は9枚までしか数えられないのです。
そんな哀しく、残酷で、恐ろしい声が夜ごと繰り返されるので、主人は耐えきれなかったのでしょう。驚く行動に出たのです。
その夜もまた、ひとつ……ふたつ……みっつ……よっつ……と、皿を数えるフキの声が聞こえてきました。
……ななつ……やっつ……ここのつ……とお。
その夜はなんと、10枚目が数えられたのです。
しかし、最後だけはフキの声ではありませんでした。10枚目を数えたのは、この家の主人です。
するとそれっきり、フキの皿数えの声は聞こえなくなりました。
「この皿を壊した者は殺す」——女中たちに放った自身の言葉を後悔したのか。あるいは、ただフキの亡魂に恐れをなしたのか。主人は彼女が身を投げた井戸を、この家の屋敷神として祀ったといいます。やがてこの井戸の上に草が生えだし、主人はこの草に女中フキの名に因んだ「フキ=蕗」という名をつけたそうです。
(串木野=現在は合併し、いちき串木野市)
今回のテーマは「皿」です。なぜかというと、本稿を執筆中に6月24日「UFОの日」を迎えたからです。UFО→フライング・ソーサー→皿という発想です。また7月には「幽霊の日」もありますので、皿で幽霊といえば「皿屋敷」——ということで、まずは鹿児島に伝わる「皿屋敷」系の怪談をご紹介したという次第です。
それにしても、いくら高価な物だとはいえ、たった1枚の皿で人の命が奪われるとは理不尽な話です。化けても出るでしょう。
しかし、主人の「10 (とお)」の合いの手で怪異が止まるとは驚きです。むしろ、幽霊を苛立たせる行為にも思えるのですが、どうも効き目があったようで、しっかり成仏したようです。それでいいのか、フキ。
「播州皿屋敷」「番町皿屋敷」で知られる「皿屋敷」系の怪談は日本中にあり、このようにヒロインの名前や結末の違う話が多々見つかります。各地の伝説にご興味がありましたら、伊藤篤『日本の皿屋敷伝説』(海鳥社)という一冊丸ごと皿屋敷の怪談の本もありますので、ぜひ。
次は昭和12年発行の郷土雑誌『高志路』に載った、皿(食器)にまつわる幽霊話です。この記事を書かれた小林イツさんは新潟県の方で、彼女が実家として過ごした本家の家で起きたという実話です。
この家で番頭をしていた半三郎という男性の母親は、家付きの世話人として台所まわりを任されていました。
ある時から体調が悪くなり、そのために皿や膳椀などの食器の整理ができていないことを本人はとても嘆いていました。その後も体調は回復することなく、むしろ病はひどくなっていきます。
そんな彼女が亡くなってしまった日の夜更けのことです。
食器のある部屋のほうから、ミシリ、ミシリと歩くような音が聞こえてきました。
続けて、ガチャリ、ガチャリと、皿や膳椀をかき回すような音が聞こえてきます。
そんなことが3日3晩続き、半三郎さんの母親の幽霊だと女中は震えあがってしまいました。生前、食器の片づけができなかったという心残りに引っぱられ、亡者となって家に戻ってきてしまったのでしょうか。当時、まだ子供だったイツさんは、怖くてお手洗いに行くこともできなかったそうです。
これを解決したのは、イツさんの祖母でした。
台所の世話人の後任となる人物をどこかからさがしてきたのです。そしてある晩、祖母は食器のある部屋に向かって、こう言いました。
「今度は跡代わりをこしらえたから、嬶(かかあ)よ、心配するでない」
するとその晩はネズミも騒がぬほど静かであったそうです。
番頭の母親は安心して旅立っていったのでしょう。とても律儀な幽霊のお話でした。
今年の始めに伊豆諸島の【海難法師】について書きました。
この妖怪にも次のような皿にまつわる伝承があります。
1月24日の晩になると【カイナンボウシ】というものが家々をまわって、このようにいうのだそうです。
「皿かせ、こげかせ、皿なきゃ人間の子をかせ」
皿は食器の皿、「こげ」も食物を入れる器のことです。ちょっと韻を踏んでラップみたいですがいっていることは大変怖いです。これが来るのを恐れ、油揚げをこしらえて戸外に置き、子供は早く寝たといいます。
このカイナンボウシが7歳になる子をさらったことがありました。
さらわれた子はゴロダエドンという道に釜をかぶせておかれていました。その子供は翌年までその道にいましたが斬り殺されてしまい、切り取られた股を捨てた山がモモオ山、顎を捨てた所がウワァゴットン山と呼ばれたそうです。こうしてバラバラにされてしまった子供の7つの部分を捨てた場所は【七つ山】といい、そこでは「何か」が出たと言われています。
なんてひどい話でしょう。もし、カイナンボウシに皿を渡していたら、子供はさらわれなかったのでしょうか。
(資料にはカイナンボーシ、カイナン法師の表記もあり)
私が【サラナゲ婆さん】という名を初めて確認したのは、平成3年発行『川崎市史 別編 民俗』でした。その「世間話」の項に神奈川県川崎市幸区小倉に伝わる話として、次のように書かれています。
〈サラナゲ婆さんは、いつも真竹の竹藪の中にいて、そこを通るとサラナゲ婆さんが出るといっていた。小倉では、六〇年ほど前まで、村の四つ角に公徳箱があって、ゴミなどはこの箱に捨てないと、サラナゲ婆さんが出て来て、皿を投げるといって、皆恐ろしがっていた。〉
皿を割ってしまったことが原因で現れる幽霊もあれば、思いっきり皿を投げてくるお婆さんもいるのがオバケの面白いところですね。フリスビーみたいに投げたのでしょうか。
公徳箱というものについて調べてみると、どうも大正末期ぐらいからあったものらしく、道に落ちている陶片、針金、金属小片といった、踏んだりすると危ないゴミを拾って捨てる箱であろうとのこと。割れた皿なども入っていたのでしょう。落ちている危ないゴミは拾いなさいという話なのに、割れたら危険なゴミになる皿を投げつけてくるなんて矛盾した行動をとる妖怪です。
このお婆さんのことがもっと知りたくなった私は、同資料に参考文献として記載のある『小倉の民俗』を読んでみました。
「公徳箱・サラナゲ婆さんの話」(後藤淑・採話)によると、公徳箱という箱が何のために置かれていたかは不明とのこと。この話をしてくれた小倉の住民は、公徳箱はまだ新しい時代のもので、サラナゲ婆さんは古い話だと思うから、本来は別のふたつの話が結びつけられてできた伝承なのではないか、と語ったそうです。
そうなると元のサラナゲ婆さんの伝説も気になるところですが、ここにきて、とてもショッキングなことが……。『小倉の民俗』のサラナゲ婆さんのページだけ、なぜか途中でなくなっているのです。印刷ミスやページ抜けではなく、話の途中でブツリと切れ、次のページから他の話題になっているのです。なんということでしょう……!
最後に、皿にまつわる短い妖怪話をもうひとつ。
皿を数えるのは、なにも人間のオバケだけではありません。
新潟県佐渡市真光寺では【皿かんじょうムジナ】というものが出たといいます。
これは道を通っている時に出遭う妖怪で、定まった場所で皿を数えるような音を聞かせたといいます。
数える声ではなく音なので、皿を重ねるカチャカチャという音だったのでしょうか。
【参考資料】
『川内地方を中心とせる郷土史と傳説』鹿児島県立川内中学校(1936)
小林イツ「親しく觸れた怪談(一)」『高志路』第三巻−第二号 通巻二十六号 高志社(1937)
『民俗採訪』昭和三十年度 民俗学研究会(1955)
『新潟県史 資料編23 民俗・文化財二 民俗編Ⅱ』新潟県(1984)
『小倉の民俗—用水に導かれた穀倉地帯—』川崎市教育委員会(1986)
『川崎市史 別編 民俗』川崎市(1991)
伊藤篤『日本の皿屋敷伝説』海鳥社(2002)
黒史郎『川崎怪談』竹書房(2022)
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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