”古代エジプト語の呪文”を音声で聴ける!「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が六本木で開催中 

文=杉浦みな子

    米国最大規模のエジプト美術コレクションを誇るブルックリン博物館から、約150点が日本に上陸中! 六本木に広がる古代エジプトの世界を見逃すな! サムネイル画像の展示物=《貴族の男性のレリーフ》前1292~前1075年頃。*東京展のみ出展。

    古代エジプトが六本木に出現 

     米国ブルックリン博物館が誇る古代エジプトコレクションから、選りすぐりの名品群を集めた展覧会「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が、東京・六本木ヒルズ森タワー52階の「森アーツセンターギャラリー」で開催中だ。期間は2025年1月25日(土)〜4月6日(日)。 

     監修を務めたのは、エジプト考古学者/名古屋大学 デジタル人文社会科学研究推進センター教授の河江肖剰(かわえゆきのり)氏。

     本展は、彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、そして人間やネコのミイラなどの遺物を通じ、高度な文化を創出した古代エジプトの人々の営みを紐解きつつ、最新技術を使ったピラミッドの研究成果まで目の当たりにできるイベント。映像や音声も交えた盛りだくさんの展示内容となっているので、概要をご紹介しよう。 

    古代エジプトの生活遺産から猫のミイラまで

     ブルックリン博物館はニューヨーク市ブルックリン区にあり、1895年に開館したアメリカ国内でも長い歴史を持つ博物館。ニューヨークではメトロポリタン美術館に次ぐ2番目に大きい美術博物館として、収蔵品は150万点を超え、モネやドガ、シスレー、ピサロ、ルノワール、クールベなど印象派の絵画や、浮世絵のコレクションも充実している。 

     なかでも古代エジプト美術コレクションは、米国で最大規模かつ質の高さで知られる同館最大の見どころ。彫刻、レリーフ、絵画、土器、パピルスなど1200点を超える貴重な作品を含み、世界的に注目されている。 

      今回の展覧会では、その中から選りすぐりの約150点を展示。エジプト展というと、どうしても歴代王であるファラオたちの偉業にスポットが当たりがちだが、本展ではまず古代エジプトの住環境、食生活、仕事事情、身だしなみ、出産や子育てなど、当時の人々の日常生活が垣間見える作品を多数陳列。謎の多い古代エジプト文明の「日常生活」を描きだす。 

    《動物紋の壺》前3300~前3100年頃。
    《貴族の男性のレリーフ》前1292~前1075年頃。*東京展のみ出展。
    会場での展示風景。書記のパレットと葦ペン、習書用の蝋板などのアイテム群。

     もちろん、古代エジプトで絶対的な権力を有したとされるファラオたちにまつわる展示も抜かりない。現地では先王朝時代からプトレマイオス朝時代まで、実に3000年続いた王朝の変遷を辿り、最新研究を元に巨大ピラミッドの建築方法や建てられた当初の姿を解き明かしていく。 

    《王の頭部》前2650~前2600年頃。 ※王の名前は失われているが、頭部の様式から、第3王朝から第4王朝への過渡期のものとされ、ギザの第ピラミッドを建造させたクフ王(またはフニ王、ネフェル王)ではないかと推察されている。
    《ラメセス2世の石碑》前1279~前1213年頃。
    スフィンクスの頭部レプリカと記念写真が撮れるフォトスポットも!

     そして多くのムー民にとっておなじみであろう、古代エジプト人のユニークな死生観にまつわる謎も紹介。古代エジプトでは、人は死後、来世で復活し永遠の命を得ることができると信じられていた。今回は人間のミイラ2体をはじめ、美しい副葬品の数々や葬儀のための道具、神々の姿をあらわしたレリーフなど、葬送儀礼に関する作品を展示している。 

    《神官ホル(ホルス)のカルトナージュとミイラ》前760~前558年頃。
    《<家の女主人>ウェレトワハセトの棺と内部のカルトナージュ》前1292~前1190年頃。
    いずれも、《ネコの棺とミイラ》前664~前332年。
    《ミイラの覆い布》前332~前30年。

    会場に響き渡る「古代エジプト語の呪文」

     特に注目なのが、ヒエログリフで記された古代エジプト語を「音声」で再現していることだ。ヒエログリフは子音しか表記されていないため、実際はどのように発音したかわからない言語だが、近年、それを解明する研究が進んでいる。 

     その研究を元に、会場では現存最古の葬送文書ともいわれる「ピラミッド・テキスト」を読み上げる音声が流れており、厳かな空間を演出している。いわば、古代エジプト語の呪文が音声で聴ける機会なので、ぜひ体験してほしい。 

    会場で音声化されている「ピラミッド・テキスト」の内容がこちら。音声を聴きながらヒエログリフで確認できる。
    《カノプス壺と蓋》(4体)
    《カノプス壺と蓋》(4体)前664~前525年またはそれ以降。
    グッズ売り場では、カノプス壺(ジャッカル)をモチーフにしたショルダーバッグも販売中。税込4400円。*状況により欠品している可能性があります。

     なお、東京展の公式アンバサダーにはアイドルグループ「timelesz」のメンバーである菊池風磨さんが就任。会場で有料貸出される「音声ガイド 特別版」のナビゲーターも務めているので、ファンの方は要チェックだ。 

     そのほか、六本木ヒルズ森タワー52階のカフェ「THE SUN&THE MOON(Cafe)」が、本展の開催期間限定で「特別展 古代エジプトカフェ」として営業していることにも注目。

     エジプト料理の代表的なコシャリやターメイヤ、ケバブなどが一度に楽しめるプレートメニュー、マハラベイヤやドライフルーツを使ったパフェ、カルカデ(ハイビスカスティー)などのメニューを用意しているので、ぜひ展覧会後に立ち寄りエジプトを味わってみてはいかがだろうか。 

    *作品はいずれもブルックリン博物館蔵

    <開催概要> 
    イベント:ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト 
    日程:2025年1月25日(土)〜4月6日(日) 
    会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階) 
    開館時間:10:00~18:00(金・土・祝前日は10:00~20:00) 
    ※入館は閉館の30分前まで ※会期中無休 
    https://egypt-brooklyn.exhibit.jp/

    杉浦みな子

    オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
    音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。

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