チョコにディップされて命が助かった話など/南山宏のちょっと不思議な話

文=南山宏 絵=下谷二助

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    「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2026年8月号、第508回目の内容です。

    チョコディップ

     米ペンシルベニア州にある有名な老舗菓子メーカー・RMパーマー社の製造工場が、2023年の春先に原因不明の大爆発事故で壊滅して、死者7人を出した時、女性工員のパトリシア・ボルヘスさん(50歳)が奇跡的に生き残れたのは、爆発で足元の床板が崩れて巨大なチョコレート液槽の中に真っ逆さまに転落したものの、全身チョコまみれになって、燃えあがった衣服の火をチョコ液が消してくれたおかげだった。

     9時間後、瓦礫の下から救出された時、パトリシアは火傷を少々負い、鎖骨を骨折し、かかとを挫いた以外には、心身ともにさしたる異常はきたさずにすんだ。

     パトリシアいわく――
    「ただ、さすがにこれからしばらくは、チョコを食べる気しないわね。ほんとは大好きなんだけど」

    騒霊家族

     インドはマドゥプールのカスベサリカーリ寺院の近くに住む2組の家族が、いわゆるポルターガイスト(騒霊)と思しき怪現象にここ2か月以上も悩まされつづけて、ほとほと困惑している。

     初めはホコン・チャクラボルティさん宅が、四六時中石ころや煉瓦や、時には空瓶の攻撃に曝されるようになったが、この悪質ないたずらの真犯人を見つけようとするあらゆる試みが失敗に帰した。

     そのうちこの怪現象はお隣りの親戚、スワパン・チャクラボルティ家にも起こるようになり、両家は不信と懐疑と恐怖のどん底に叩き込まれてしまった。

     目撃者たちの報告では、この石のミサイル群はいつも何もない空間に突如として実体化し、その場に偶然居合わせた無関係な隣人や通行者には見えないまま、突進して両家の家屋に激突するのだ。

     また、両家の住人たちの証言では、屋内のベッドの下とか冷蔵庫の中とかなどにも、しょっちゅう石や煉瓦の破片がいつのまにか入っているのが見つかるともいう。

     さらにはまた、両チャクラボルティ家のお隣りの無人の空き家にも、この怪現象は取り憑いたように見え、中にはだれもいるはずがないにもかかわらず、しょっちゅうガラスの割れるような怪音が聞こえてくるのだ。

     両家の家族は密教の呪術師を雇って、悪霊払いの儀式を執り行ってもらったが、かなりの額の謝礼を払ったにもかかわらず、最新情報に拠るところでは、まったく効果が挙がっていないそうだ。

    危険な遊戯

    「こんな危険な代物が子供の遊び場に埋もれていたとは――」

     工事請負業者は絶句した。

     英国ノーサンバーランド州ウーラーの「スコッツプレイパーク」の改修工事中に発見されたのは、第2次世界大戦の終結直後に応急的に地中に埋められ、そのまま忘れ去られてしまったとおぼしき2発の不発弾だった。

     ただちに陸軍爆弾処理班が出動して安全処理を施してから、念のため付近一帯を徹底調査したところ、なんとさらに合計172発、総量4・5キログラムもの不発弾が発見されたのだ!

     すべて小ぶりの爆弾で、どうやら第2次世界大戦中に英軍機の投下訓練で使用された演習用弾薬らしく、爆発力は弱いものの、それでもそれなりの殺傷力はある。

     管理が厳しい実戦用の弾薬・爆薬の類いなら、きちんと弾薬庫に差し戻されるから、決してこんな騒ぎになるはずはない。

     どうやら終戦後は無用になったので、大戦中に活躍した国土防衛義勇軍などが地中に埋め、そのまま忘れ去ってしまったらしい。

    煉瓦投げ式横断法

    カナダはバンクーバー市内の人気観光地グランビルアイランドのショッピング街の横断歩道で、近年多発する車両対通行人のニアミス事故に業を煮やした市の「視界安全維持委員会」は、このほど事故防止策の一環として〝歩行者優先煉瓦投げ式横断法〟なるユニークな対策を公式制定した。

     これは横断歩道の両側に多数の煉瓦を入れたバスケットを設置して、横断歩行者はそこから煉瓦を取って頭上に振りかざし、車の運転者を脅すというもの。

     もちろん煉瓦は本物ではなく、じつは茶褐色のゴム製の軽いものだという。それでも効果は覿面、ドライバーはびっくりして必ず車を急停止してくれるそうだ。

    烏のお気に入り

     オーストラリアのバーズビルで開催される権威あるプロゴルフトーナメント「アウトバック・クィーンズランド・マスターズ」で、想定外の問題が発生した。

     プレーが開始されたとたん、飛んできた1羽の烏が転がるボールをぱっと咥えて飛び去ったのだ!

     それを皮切りに以後トーナメントが進行中ずっと、仲間の烏たちが選手たちを脅やかしつづけた。

    「烏はまさに大問題です!」

     バーズビル・ゴルフクラブ副会長のスティーブン・パーセル氏はつくづく慨嘆する。

    「烏たちはどういう理由でか、ゴルフボールがお気に入りらしい。どこへ持っていくのかはわからないが、どこかにどっさり溜まってることだけは確かでしょうな」

    テレポート人間?

     デンマークの首都コペンハーゲン発のスカンジナビア航空機に搭乗して来米し、ロサンゼルス国際空港に降り立ったセルゲイ・オチガバ氏は、だが、同機のすべての乗務員が「乗っていたのは間違いない」と証言したにもかかわらず、海外旅行に必要な書類は、搭乗券もパスポートもビザもなぜか所持しておらず、同機に搭乗して旅行中であることを裏づける一切の記録が存在していなかった。

     FBI(連邦捜査局)の尋問にオチガバ氏はこう答えた。

    「どうしてこの飛行機に乗ったのか記憶がない。自分がどこにいるのかよくわからない。何がどうなってるのか理解できない……」

     空港当局もほとほと困り果ててこう声明を出すしかなかった。

    「CBP(税関国境警備局)がこのような異常なケースに遭遇したのは、本空港開設以来初であり、全関係者が面食らっている――」

     まさか世にも不思議な〝人体瞬間移動〟の新実例だったりして?

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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