ブラックホールは宇宙を記録し、観察している!? 量子力学で紐解く「情報問題」/久野友萬
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田畑誠(まこちん) 著
量子力学の概念を、ゆるーく解説
この標題にもかかわらず、本書は物理学の本ではない。「量子力学を使いたおせば、だれでも願望を実現し、人生をよりよく変革することができる」と説く実用書なのだ。
無論、「量子力学」とは何か、という一通りの解説もあり、物理学の歴史も語られるのだが、非常に親しみやすい文体のため、教科書よりもむしろ漫談に近い。
何しろ「コペンハーゲン解釈」で「世界は、あなたの望み通り」になるわ、「エヴェレットの多世界解釈」で「行きたい世界線にさっさと移動」できてしまうわ、「量子もつれ」は「最初っからみんな、もつれていた」(笑)わ、「ヒッグス粒子を味方に付ければ〈好きなこと〉がうまくいく」わ、「不確定性原理」にいたっては「あいまい、ゆるゆる、うっほ~い」なのである。
これまで講談社ブルーバックスなどの啓蒙書を読んで、一応は理解しているつもりになっていた量子力学のさまざまな概念を、このようにゆるーく解説されると、何とも不可思議な感覚に陥る。
著者の田畑誠(まこちん)氏は、元レーシングカートドライバーで、その後、設立した会社を成長させる過程で出会った「量子力学」の魅力にとり憑かれ、その研究と実践に没頭。インターネット上で量子力学に関する情報を発信し、大好評を博しているという。
「量子力学」で「夢を叶える」。一見わけのわからないコンセプトだが、面白い試みであることに間違いない。
(月刊ムー 2025年2月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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