なりすまし事件と富士山噴火の真相ーー漫画家「たつき諒」が未来予言を語る!/中村友紀
1996年に発売された漫画『私が見た未来』。東日本大震災の日を的中させたとして、インターネットの世界では大きな話題となった。その作者であるたつき諒氏が、20年の沈黙を破り、自らの予言や予知夢について解
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文=シークエンスはやとも 構成=倉本菜生 イラスト=ネルノダイスキ
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。2025年7月の日本壊滅予言について、流行ではなく待望論の視点で語ります。
波乱の2024年が終わり、ついに予言の年が始まりました。「2025年7月に日本が滅亡する」という噂。その火付け役となったのが、たつき諒さんの漫画『私が見た未来』です。
この作品はたつきさんの見た予知夢をもとに描かれた作品で、1999年の単行本の表紙に「大災害は2011年3月11日」と記されていました。これが東日本大震災を予言していたとして、2010年代後半からネットで注目を集めたのです。さらに、2021年の完全版で「本当の大災難は2025年7月5日にやってくる」と新たな予知夢が追加され、多くの人に衝撃を与えています。
でも予言が存在するだけでは、ここまで流行しないはずです。
では、なぜ広まっているのか? 今回はそれを紐解いていきます。
2025年に日本に危機が及ぶことは、哲学者のルドルフ・シュタイナーや超能力者のベラ・コチョフスカ、またYou Tubeでは数多のスピリチュアリストが唱えていて、イルミナティカードにも示唆されているといいます。
それらを集約すると、ひとつのストーリーが見えてきます。
日本で大災害が発生し、人口が大きく減少。その後、生き残った人たちが新たな「邪馬台国」を築き、世界をリードしていく。災害の内容が自然災害なのか隕石なのか、あるいは異星人なのかといった違いはありますが、基本的には「日本が一度滅び、再生して、世界のリーダーとなる」という話です。
このストーリー、僕は「少子化に対する危機感のメタファー」だと考えています。日本では長生きがよしとされる一方で、少子高齢化で現役世代の負担が増えつづけている。さらに少子化対策は現状、世界中で解決不可能な課題になってきています。だから「人が減らないと限界を迎える」と、なんとなく肌で感じ取っているんじゃないかと思うんです。それで、厄災後に残った人口で均衡を取るという物語が支持されているのかな、と。
しかも今回の予言は、日本に限定したものなんですよね。ノストラダムスの大予言やマヤ文明の予言とは、内容の質感もスケールも違う。これは、日本人の精神の限界と国民性が関係している気がします。
資本主義の中心地であるアメリカや、ヨーロッパのような階級社会と違い、日本には「平等で公平であるべき」という価値観が根づいています。ゆえに多様性を認めてマイノリティを受け入れようとしているし、格差による内乱も起きない。けど実際には、皆で認め合って平等に手を取り合おうなんて、無理がありますよね。
「平等でなければならないけど、きれいごとではどうにもならない」って現実に、気づきはじめたんじゃないか。そして口減らしを願うようになった。全体を把握できる人数にまで減らして、やり直そうって感覚なんでしょうね。真面目に滅亡したがっているんです。まるで「ユニバース25」そのものだと思いませんか?
動物学者ジョン・B・カルフーンが行った「ユニバース25」という実験では、理想的な環境を与えられたネズミ社会が最終的に崩壊し、全滅したというものです。今まさにわれわれは実験ネズミと同じような行動をしていて、滅亡するフェーズに入りつつあります。
そう考えると今回の予言は、僕たちが直面している「どうしようもない現実」や後ろ暗さを肯定してくれて、理屈づけて宿命として語ってくれている。
だって、もうお気づきかと思いますが、完全な滅亡ではなくて、どの説でも必ず生き残りと未来を提示しているんです。
日本は世界で唯一、少子高齢化問題の分母数の波をクリアする目途が見えている国です。だから人口が減っても、社会や経済が無理なく安定した状態、つまり縮小均衡を保て、世界を先導できるポテンシャルを持っている。
放っておいたら絶滅していくだけだから、希望のあるストーリーに一縷の望みをかけたい。そんな少子化への危機感と安心感の担保が重なっているのでしょう。
ところで、人間が「正しさ」を測る脳の領域と、「美しさ」を測る脳の領域は同じだといわれています。僕たちは現実を客観的に判断しているつもりでも、実際には「美しく正しい」と感じたものだけを受け入れてしまう傾向があるのです。だからこそ、世論を動かすには「美しい物語」が求められます。
今回の滅亡論がムーブメントになっているのも、その物語性が非常に美しく、完成度が高いからでしょう。型から外れる予言をした人は、駆逐されている可能性もありますね……。
ちなみに滅亡論が流行する背景には、「資本家にとって予言を否定するメリットがない」という事情も関係しています。「滅亡するかもしれない」と聞けば、人は備蓄に走ったり、やり残したことを片づけたりしますよね。駆け込み需要による経済効果を生むので、資本家たちはブームに乗ったほうが儲かる。だれも否定しないから、ムーブメントが拡大していくのです。
予言が流行る背景を考えていくと、これからの人類にとって一番大きなハードルは「個人主義になりつつある社会で、子孫を繁栄させる仕組みをどう変えるか」だと気づきます。結婚、妊娠、出産のすべてを、新しい形に作り変えないといけない。
従来の倫理観を超えて、種としての再生産を合理化できるか。そのために必要なもののひとつが、災厄による口減らしです。
生き残りはみずからを社会システムの一部とし、合理的繁殖を行う。牛や豚などの家畜と同じように、数を管理された状態を目指す、個人主義による生産性の機械化です。「サイコパスかよ!」って思うかもしれませんが、唯一の現実的な解決策ではないでしょうか。
ディストピアに見えるかもしれませんが、僕はデジタルネイティブ世代と関わることで、意外と悪い未来じゃないのかも、と感じるようになりました。
彼らはデジタルなものが自然環境の中にあるのが当たり前な世代。デジタル空間上で対人コミュニケーションが取れるし、VRアダルトビデオを使えば視覚的に肉感のある行為もできる。
そうなると少子化は進んでしまうので、セックス以外に楽しみがないような環境、つまり災害による終末世界が必要となる。
要するに2025年日本滅亡論は、次世代の幸福論の話なんですよ。滅亡に対して僕らがどう思うかは関係なく、生き残る若い人たちが幸せになれるか。今はその価値観が馴染むまでの待ち時間なのかもしれません。
(2025年 月刊ムー2月号)
シークエンスはやとも
1991年7月8日、東京生まれ。吉本興業所属の〝霊が視えすぎる〞芸人。芸能界から実業界、政財界にも通じる交友があり、世相の表も都市伝説も覗いている。主な著書に『近づいてはいけない いい人』(ヨシモトブックス)、『霊視ができるようになる本』(サンマーク出版)など。
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