高松・根香寺で「牛鬼に呼ばれた」話/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚
伝説のトリオコラムを再録! 事故物件住みます芸人・松原タニシと、オカルトコレクター田中俊行、そして高松の怪談バンドマンの恐怖新聞健太郎――。異色ユニットが遭遇した怪奇を公開する。 第1回の行脚先は、高
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文=松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎
怪奇ユニットが香川県の心霊スポット「中村トンネル」へ! お地蔵さんは、大事にしましょう。 (2020年5月22日記事を再編集)
タニシ 事故物件住みます芸人・松原タニシです。
田中 ポジティブポジティブ! オカルトコレクター・田中俊行です。
健太郎 四国の怪談は俺が守る、恐怖新聞健太郎です。
タニシ 怪談イベントもなかなかできない状況が続きますが、皆さん家でどうやって過ごしてますか?
田中 僕の大量の荷物でオカンの大切なタンスが塞がれてましたが、これを機にメチャ掃除してタンスが使えるようになりました。オカンも喜んでます。
タニシ それは良かったですね。
健太郎 僕は映画みたり漫画読んだり、色々物作ったりしてますね。
タニシ 例えば何を作ってるんですか?
健太郎 ”般若フィッツ”です。
タニシ 般若フィッツ?
健太郎 アメリカのハードコアパンクバンド「MISFITS」のバンドロゴを般若バージョンにして羽織りに描きました。
タニシ あ、見たことあるわ、このガイコツ!
田中 すげえなぁ!
健太郎 あと今フレディの爪とかも作ってます。
田中 クオリティー高っ!
タニシ まさかコロナが恐怖新聞健太郎にフレディの爪まで作らせてしまうとは……恐ろしい。
田中 タニシくん、実は俺もこれを機に始めようとしてることがあって。
タニシ 何ですか?
田中 刺繍。
タニシ 刺繍……ですか。
田中 うん、俺がんばるわ。
タニシ がんばってください。
タニシ さて、自粛生活も長いトンネルに入ってしまいましたが、トンネルといえば心霊スポットとして外せないですよね。東京の旧吹上トンネル、旧小峰トンネル、鎌倉の小坪トンネル、愛知の旧伊勢神トンネル、福岡の旧犬鳴トンネル……。
田中 関西なら京都の清滝トンネル、大阪の滝畑第三トンネル、姫路の相坂トンネルが有名やね。
健太郎 トンネルなら香川の「中村トンネル」が僕の地元ではだいぶヤバいです。
タニシ 中村トンネル、高松TOONICEの怪談ライブ終わりにみんなで行ったなー。
田中 行った行った。
タニシ 田中さんあのとき寝てたじゃないですか。
田中 いや、俺起きてたよ! 手掘りのトンネルでボコボコしてたんも覚えてるし。
タニシ ほんまですか? ちなみにあそこはどんな謂れがあったんでしたっけ?
健太郎 トンネル自体は素掘りの短いトンネルなんですが、色々な噂があって。その昔囚人達によって掘られたとか、トンネルで女性の姿が見えるだとか。
田中 あとあれやんね、“人柱として牛をトンネルに埋めた”って話あったよね。
タニシ 田中さんよく覚えてますね、寝てたはずやのに。
田中 だから起きてたって!
健太郎 他にもたくさん噂があるんですが、一番気味の悪い話が肝試しに中村トンネルを訪れた四人の若者の話で。
タニシ 是非とも詳しく。
健太郎 はい。まず肝試しに行ったのがA・B・C・Dの四人の若者なんですが、その中のD君はあまり乗り気ではありませんでした。しかし残りの三人に無理矢理連れて来られる形で来たんです。
しばらくはトンネルを散策してたんですが、付近にお地蔵さんを見つけたんですね。今はもう撤去されてなくなってるんですが、当時このお地蔵さんも実は”目が開く”とか”笑っていたら事故に遭う”とか色々な噂があったんです。
D君は「あんまり近づかん方がええんじゃない」と声をかけたんですが、A・B・Cの三人はあろうことかそのお地蔵さんに蹴りを入れたり持ってたジュースをかけたりして悪戯しだしたんです。
「祟れるもんなら、祟ってみぃ!」
A君がそんな事をいいながら地蔵に落書きを始めてました。
D君は「どうなっても知らんぞ……」と思いながらも、只々見てることしか出来なかったそうです。
そんな事があった数日後、A・B・Cの三人と連絡がつかなくなりました。
さらに数日経過したある日、警察からD君に電話がかかってきました。
「少しお話ししたい事があるんですが」
D君はそう言われて警察署まで行きました。
「この子ら、お友達ですよね?」
そう言って警察の人が写真を三枚出してきました。それはA・B・Cの三人の写真でした。
「はい、え? こいつらどうかしたんですか?」
そう聞くと、少し黙ってその警官は重い口調でこう言ったんです。
「申し上げにくいんですが、三人ともお亡くなりになりました」
D君は頭が真っ白になってしまって、言葉も出なかったそうです。
どうやら連絡が取れなかったあたりで家族も行方がわからず警察に相談したところ、四人で肝試しに行ったあの中村トンネル付近の崖に車で落ちていたらしく、車内には三人のバラバラになった遺体が見つかったそうです。
D君は”中村トンネル付近”と事故の凄惨さを聞いた時一瞬背筋が冷たくなりました。
“地蔵に悪戯したから祟られたんかな?”
そんな事を考えていると、今度は警察官がD君にやたらと質問を浴びせかけました。
“いついつ何時に何をしていたか?”とか”小さい頃はどんな映画や漫画が好きだったか?”とか、どうも事故とは関係のないD君自身の個人的な質問を多く聞かれたらしく、
「あの、何故こんな事きくんですか? 事故とは関係ないように思うんですけど」
D君が警察官にそういうと、「気を悪くしたなら申し訳ないです。ただ、この件はもしかすると事故じゃない可能性があるんです」と静かに答えたそうです。
「どういう事ですか?」
そう聞くとその警察官はゆっくり説明してくれました。
「三人の遺体の乗っていた車は崖の下で見つかりました。道も悪いので最初は事故だと思われました。しかし遺体の損傷状態も滑落事故にしては余りにも酷い状態な上、事故には欠かせないある痕跡がなかったんです。それは“ブレーキ痕”で、衝突事故にしろ滑落事故にしろ自殺にしろそういう時に必ず人間は反射的にブレーキを踏んでしまうものなんです。しかし今回の場合それが全く無い。普通こんな事はありえない。
なので警察の見立てではこれは”何者”かが遺体をバラバラに切り刻んだ後に車に詰め込み、その後崖下に落とした他殺、つまり”事件”としても捜査しています」
D君はそう告げられ、ますますゾッとしてしまいました。
やはり”地蔵に悪戯をした”から? その“何者か”はこの世の者なのか?
このような事が頭をよぎったそうです。
その後D君はすぐに解放されたらしいんですが、結局待てど暮らせど”事故”なのか”事件”なのか真相がわかることはなかったそうです。
D君はやはり中村トンネルの地蔵に悪戯をした三人が祟りにあってしまったのではないか、そう思えてならない。
そんな話を聞いた事があります。
タニシ これ究極の怪談ですよね。事実ならめっちゃ怖い。お地蔵さんはもうなくなってましたよね。
健太郎 はい、いろいろあって新立石トンネルの方へ移設されてますね。
田中 人柱になった牛の墓も移設されてるらしいで。
タニシ そうなんや。牛の話はやたら詳しいですよね田中さん。
田中 そやねん。
健太郎 実は僕自身もこの中村トンネルに嫌な出来事がありまして。5年くらい前に我々三人も中村トンネルに行きましたよね。
田中 覚えてるよ。確か木村さん(ニコニコ生放送ディレクター)も居てた。
タニシ 田中さん、それは3年前の方ですよ。僕ら2回行ってるから中村トンネル。
田中 そうか、記憶がごっちゃになってるわ。
健太郎 5年前の方ですね。田中さんとタニシさんが高松のイベントに来るようになってすぐぐらいです。その時に同行していた僕の友達のNちゃんという女の子が大変な事になったんです。
タニシ あの時もNさん様子変やったなぁ。取り憑かれたように「心霊スポット行きたい」って言い出して、現地着くと異様に怖がってたし。いや、行きたがってた人の怖がり方ちゃうやろうっていう。
健太郎 そうなんです。でも本当の異変が起きたのはその中村トンネルへ行った後なんです。その後Nちゃんは拒食症になったり、車で事故を起こして鼻から髄液が垂れて入院したり、不可解な事が多くなったんです。
タニシ やばかったですよね。僕もNさんの車に乗せてもらった時に、信号待ちしてて赤信号なのにスーッと発進しだして、急いで止めたのがありました。
健太郎 でも一番肝を冷やしたのが、ある日Nちゃんと、バンド仲間のYくんと僕の三人で遊ぼうて事になって、Yくんの家に集合する事にしたんです。待ち合わせ時間にYくん家に行くと家の前でNちゃんが先に来てました。ただ僕はNちゃんを見て”えっ⁉︎”と思ったんですよ……。何故かというとNちゃんの首にしっかりとロープの跡がついてたんです。
「それ、どうしたの?」ときいてみました。
すると、Nちゃん曰く、夜寝ていると突然”ある事に気付いた”らしいんです。
何に気付いたかというと“今なら死ねる”事に気付いてしまったらしいんです。
そしてその後どこにあったのかわからないロープを壁に掛けて首を通し躊躇することなくぶら下がったそうです。
Nちゃん首を吊った瞬間に”体が焼けるような熱さに襲われた”と言っていました。
幸い別室で寝てたお母さんに気づかれて助けてもらったそうなんですが、Nちゃん、その話を笑いながらするんですよね。
田中 こわ!
健太郎 何故あの時”今なら死ねる”と思ったのか今でもわからないと言っています。
幸いな事にNちゃんはその後も元気に過ごしていますし首の傷痕も綺麗に治っています。
ただ、やはり中村トンネルへ近づいてはいけないんだなと思った出来事でした。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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