沖縄の聖地・大神島を訪問! 秘祭ウガヤン拝所で感じた”海から来る神々”の息吹/うえまつそう
島まるごとが聖地という大神島を、怪談師うえまつそうが訪れた。奇岩を超えて吹き抜ける風に、神々の息吹を感じてーー。
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ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々(ようかいほいほい)」! 今回は、有名な一反木綿のような、ひらひらした怪異を補遺々々します。 (2020年3月25日記事)
妖怪に興味のない方でも、【一反木綿(いったんもめん)】という名前を聞いたことはあるのではないでしょうか。これは鹿児島県肝属郡高山町(現・肝付町)に伝わるもので、『大隅肝属郡方言集』では【イッタンモンメン】とされています。
一反ほどの長さの木綿のようなものが、ひらひらと飛んで、夜間に人を襲うというものです。
ここでいう一反とは布の大きさの単位のことで、成人ひとりの着る衣料に相当する量だといいます。そんなものが夜空をひらひらと飛んでいたら……なかなかの存在感ですね。
今回は、南の地域に伝わる、ひらひらした怪異をご紹介いたします。
『民俗採訪』には、鹿児島県曽於郡で採集された【ニタンバエ】という妖怪の話があります。ニタンバエは、二反ほどの反物(タンモン)の姿をした妖怪、あるいはそういうものが出る場所を指す名のようです。
これは空をひらひらとは飛びません。地面から、二反反物が生えるという怪異なのです。
これが出るので、そこではだれも家を建てなかったのだといいます。
「二反生え」という字を当てるのだと思われますが、資料を見ますと「バエ」は「はる(原)」じゃないだろうかという人もいれば、「はえる」は「積み重ねる」ことを意味するんだという人もいます。
また、同じ曽於郡の田床という場所では、ある家の門前に椿の木があって、そこに【一反もめん】が出たという記録があります。
沖縄県八重山郡の与那国島には、白い布が張る、という怪異があります。
与那国空港から久部良方面に向かいますと、かつて集落のあった地があり、その南方にある山岳の中腹にはミミイシ(三つ石)と呼ばれる三つの岩があります。これは女神だといわれています。このミミイシと、西方にある上里というところ、そして、遺跡のあるディティグダマという山、この三つを結ぶ線上にときどき、白い布が張ったといいます。
その日は凶日とされたそうで、白い布の張る日は、この三か所に入ってはいけないとお年寄りたちが子供に注意をしたといいます。
ですが、祖納(そない)という地域では逆に、白い布の張る怪異は歓迎されていました。島にサツマイモを導入した偉人の墓と宇良部岳を結ぶ線上に白い布が張るといわれ、これは豊作の年になる兆しであり、その日を吉日と考えたのだといいます。
柳田國男「妖怪名彙(四)」『民間伝承』四巻一号通巻三十七号
柳田國男編 野村傳四著『大隅肝属郡方言集』
「口承文芸」国学院大学民俗学研究会刊『民俗採訪』六十三年度
宮城政八郎『与那国物語』
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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