悪疫退散! 神仏探偵と疫病除けスポットを巡って霊的防御完了!?/石原まこちん・漫画ムーさんぽ

漫画=石原まこちん

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    緊急事態宣言にも至った2020年記事を再掲載。 目黒界隈の「悪疫除け」スポットを巡る「ムーさんぽ」、案内人は神仏探偵の本田不二雄さん! 外出自粛のなかでの寺社めぐりとは……? (2020年4月30日記事を再掲載)

    神仏探偵と悪疫除け寺社巡り

     未知のウイルスに対して、ムー的にすべきことといえば、一般生活での防疫に努めつつ、祈ること。そこで今回の「ムーさんぽ」は、神仏探偵・本田不二雄さんのご案内で、悪疫除けスポットの巡礼へ!

    目黒さんぽ1最終
    目黒さんぽ2最終
    目黒さんぽ3最終
    目黒さんぽ4最終

    取材後記~「密」しない取材スタイルにて

     というわけで、今回はまさかのGoogle Map、ストリートビューでの参拝となりました。データ上で過去の風景を眺めることは参拝とは程遠いのですが、こんな「接近しない」取材も今だけだし、漫画だからできること。これも2020年4月の現実、ルポです。事態が落ち着いたら、必ずや現地へ!

     そして! 今回の悪疫除けスポットについて、神仏探偵・本田さんからのメモをご紹介します。みなさんまも悪疫にご注意して、お過ごしください。

    神仏探偵・本田不二雄の目黒・悪疫除けスポット案内

    スポット①目黒不動瀧泉寺

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     まずは、お不動さん。不動明王です。バックにもの凄い炎を背負って、「お前に食わせるタンメンはねぇ!」(古い?)みたいな怖い顔をした仏尊。まちがってもイケメンではないですが、もとよりその姿はインド・ドラビダ人の奴隷がモデルといわれ、経典にも「姿は卑しく肥満して」などと書いてあります。観音などの菩薩は王侯貴族のクシャトリアの姿だというのに、なぜ不動さんはそれ? ですが、魔と対峙するのはこれぐらいでなくちゃ!! と思われたのはまちがいないでしょう。
     さて、目黒不動。瀧泉寺(りゅうせんじ)と言うのが正式名称です。その名の通り、本堂につづく石段の脇に〃滝〃があります。今は〃打たせ水〃ふう(失礼)ですが、「独鈷の滝」といい、参詣者の水垢離場になっていました。「願いが成就するよう身代わりとなって水を浴びて下さる石造のお不動様」もお立ちです。
     古来、この滝を浴びると病気が治癒するといわれ、今は飲むのはちょっとナンですが、霊験あらたかな水とされてきたんですね。聖地としての「場」の基(もとい)はまさにここです。
     さて、石段を上ってご本堂へ。重厚な扉の奥に不動明王立像がおわしますが、酉年開帳らしいですね。残念。縁起ではこうらしいですよ。
     ――平安初期の天台の名僧・円仁さんが師に連れられて故郷の下野(栃木県)から比叡山へ向かう途中、この地に立ち寄った夜のこと、面色青黒く、右手に降魔の剣を提げ、左手に縛の縄を持ち、とても恐ろしい形相をした神人が枕の上に立ちあらわれ、「我、この地に迹を垂れ、魔を伏し、国を鎮めんと思うなり。来って我を渇仰せん者には、諸々の願ひを成就させん」と告げ、目覚めたのちみずからその尊容を刻んで安置した。
     おおお、〃降魔の剣に縛の縄〃いいですねぇ。病魔や疫鬼をふん捕まえてたたっ斬るイメージ。仏教的には、お不動さんは衆生の迷いと煩悩を焼き尽くして断ち切る功徳をお持ちですが、一般ピープルには降魔のホトケです。
     ん? もっとダイレクトに新型コロナに打ち克つご利益が欲しい?
     まあまあ、まずは目黒不動さんと結縁(けちえん)しようじゃないですか。不安を打ち消すために、守護神をバックにつけるのも悪くはありません。そのご加護を受けるための真言は「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」(これを小咒しょうしゅといいます)
     このほか、大いなる御心でわれわれを災難から救ってくれる「慈救咒(じくしゅ)」というのもあって、それはちょい長いのですが、こんなものです。「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン」(意訳:すべての諸金剛に礼拝する。怒れる憤怒尊よ、砕破せよ。フーン、トラット、ハーン、マーン)
     秘仏だからそのイメージが湧かないという人には、ご本尊の御影をあらわしたお札があります。
     それに、何と言っても天台宗の古寺には、角大師のお札があります! これは、実在した天台宗の高僧で比叡山を中興した慈恵大師良源、通称元三(がんざん)大師に由来するのですが、この人の伝説がスゴイ。
     ざっくりいえば、疫病に苦しむ民衆のために、自ら鬼に変じて――むむむっと禅定の三昧境に入って疫病神を喰らう鬼神と神秘的合一をして――その姿を弟子に写させて護符にしたというものです。それがキャラ化してこうなったと。

    ①角大師 お札

     ちなみに、目黒不動のそれは、角大師のほかに「豆大師」の図案が合体していて、とりわけ最強です。豆とはイコール「魔滅」で、33体描かれていますが、これは良源が観音の化身といわれたためで、観音の三十三応現身(33の姿に変化し、あらゆるシーンで衆生を救済する)に対応したミニ大師像なんですね。

     せっかくですから、本堂の裏にもまわってみましょう。何とお堂に隠れるように、大日如来像がご鎮座しています。これは隠しているんじゃなくて、不動尊が大日如来の化身(教令輪身)であることを暗示してるんですね。「俺のケツ持ちは大日さんじゃけんのう」(菅原文太ふう)みたいな。
     ちなみに、神仏探偵的には、この裏山一帯は「目黒不動遺跡」として縄文・弥生時代の住居跡、土器等が発見されている要注目ポイント。武蔵野の台地の縁(の高台)には、何かがある! というわけで、お江戸の地霊スポットここにありなのです。

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    スポット②蛸薬師成就院

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     目黒不動から徒歩2分。「ありがたや 福を吸い寄せる たこ薬師」の看板とずらっと横並びの石仏に出迎えられます。もちろんたこ焼き屋ではなく、蛸薬師成就院という由緒あるお寺です。
     さきほどの目黒不動の開基、円仁さんが唐から帰国のおり、暴風のために守り本尊の薬師仏を海に捧げて祈ったところ、後日、その薬師仏がタコの上に乗って海岸に打ち上げられた――そんな衝撃の縁起を伝えています。だからたこ薬師。
     残念ながらその本尊は秘仏(毎年1月8日開帳)です。前立ち像がありますが、別にフツーに見えますね。で、こんなときは御影のお札ですよ。やっぱフツーっぽい? よく蓮台の下を見て下さい。ほら、タコが持ち上げてる!

    ②たこ薬師 御影

     コロナ退治はどうした? 何をおっしゃる。薬師如来は、東方浄瑠璃世界の教主で、12の大願を発し、瑠璃光をもって衆生の病苦を救うホトケ。医王仏ともいわれ、左手には薬壺をもってらっしゃる。如来(ホトケ)グループで唯一、霊験ご利益信仰で知られるグレートな存在で、頼れる護国のホトケで、国分寺の本尊はたいていお薬師さんで……あ、平安時代まで話が遡ってしまいました。
     そうそう、お札の授与所に、注目のアイテムがあります。
    「おなで石」。黒い石ころですが、薬師如来の真言「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」を唱えながら患部を石に撫でつけると、あらたかな効き目があるそうです。といっても、イボやタコ、魚の目、痔疾平癒のご利益がメインのようですが(小声)。

    ②たこ薬師成就院の御撫石(参考写真)

    スポット③五百羅漢寺

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     さてさて、またも歩いて2分で大注目のお寺です。
     奈良京都にも鎌倉にもない、東京にしかないお寺の筆頭、五百羅漢寺です。五百羅漢がおられるから五百羅漢寺。若干散逸および転居されたとはいえ、300体超の木彫像(そのほとんどが五百羅漢の像)がおわします。
     では、回廊状の羅漢堂へ(拝観料300円)。羅漢というのは、釈迦の弟子のこと。ホントは修行で悟った人(阿羅漢)をいうんですが、なんかこう、みんな苦しんでいるというか悩んでいるというか考え込んでいるというか。修行まっただ中の風情です。あなたもちゃんと悩んでますか?
     あ、これスゴイでしょう。羅怙羅(ラゴラ)尊者。何と、自分の腹を両手でガバッと開いて見せています。そしてその胎内には小仏像が……。これは何を意味しているのでしょう。「あなたの内にも仏心はある」ということでしょうか。

    ③羅怙羅尊者

     さて、この回廊の出口近くに、お目当てのお像があります。もうお分かりですね。「獏王」像です!

    ③獏王像

     どうですコレ。3つ目の怖いおっちゃんが目を剥いて睨んでますが、四本足で、足は牛の蹄。これは「人面にして三眼、牛身にして虎尾」の怪物なんですね。しかも、牛のような角は背中にあり、腹部にも目が3つ。キメラ(合成獣)にもホドがあります。悪夢を喰らうという獏とも異なるお姿で、獏というよりバク然と「白澤」を思わせるものです。
     実は、『嬉遊笑覧』という書物には「白澤は獏なり」とあり、両者は同一のモノとされてきたようです。白澤だとすれば、これはもう今回のテーマであるコロナ除けそのもの。昔から「その絵を持っておけば、災難や病魔から逃れられる」といわれていましたからね。しかもその立体像は、ワタクシの知る限り、岐阜の「くすりの博物館」とここのみ。
     あと、「件(くだん)」という霊獣とも共通しますが、そのあたりはメンドーなので省略。ただ以前、この像の取材をしたとき、話を聞いた若い坊さんが、こんな話をしてくれました。
    「以前、この像に私の姉が赤い前掛けを奉納したことがあって……その2日後に私がトラックにはねられる大事故に遭ったんですね。ところが、なぜか幸い軽い打ち身だけで済みました。うっすら覚えているのは、事故の瞬間、弾力のある、温もりのある何ものかがクッションになった感覚があり、あれはきっと……」
     みなまで申しますまい。ここはもう獏王像をスマホ待ち受けにしてご加護を願うほかないですね。
     さて、ここまで来て、本堂に寄らないわけにはいきません。正面には江戸ナイズ(江戸時代初期に大流行した黄檗禅スタイルの像容)されたお釈迦さんと脇侍菩薩、十大弟子ほかオールスターが居並びます。そして、左右ひな壇状の席には羅漢さんたち。
     その真ん中に座ってみましょう。すでに聞こえてきていますね。お釈迦さんの声が……。
     そう、本堂内では釈迦の説法の場面が再現されているんです。なんか不思議な感覚ですね。でも折角ですから、雰囲気に浸ってみましょう。ザワザワとした不安がすーっと鎮まっていくような……。
     ――人生における「苦」は、すべて無明(真理を知らない無知)から生じます。この無明から脱することで、人は心安らかに生きられるのです。南無釈迦如来――。
     はいっ、そんなわけで、お釈迦さんの功徳をいただきました。次です。

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    スポット④大圓寺

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     さて、しばらく目黒駅に向かって歩きましょう。目黒川を渡って、右に雅叙園が見えてきたら、急坂が待っています。その途中にあるのが大圓寺です。
     ここは、東京でも有数の見どころ満載、ご利益たくさんの寺。まずは、左手に並んだ五百羅漢像! こちらは石仏520体のフルメンバーです。日本国内のAKBグループのメンバー合計359人をしのぐ数です。年末の第九なみといっていいでしょう。そんななか、手前にへんな石仏が。そう「とろけ地蔵」。悩みを溶かしてしまうお地蔵さんです。

    ④とろけ地蔵(参考写真)

     さて、さほど広くない境内ですが、左にはかの「生身(しょうじん)釈迦如来像」(生きている釈尊を写したとされるお像/国重要文化財、鎌倉時代)を奉安する釈迦堂、正面にはかの天海大僧正があらわしたという「家康大黒天」を祀る大黒天堂、右にはかの「八百屋お七」ゆかりのお七地蔵を奉安する阿弥陀堂――。
     なかなかのお堂が集結してますが、なかでも今回は、子年ということで、大黒天にねんごろにお参りしましょう。どゆこと? 子(ネズミ)は、大黒天の神使・眷属ですね。神使ネズミが大活躍するということは、大黒天の功徳(ご利益)が行き渡るということです。台所で活躍されても困りますが、そういうことなんです。
     もとより、大圓寺は、江戸城の裏鬼門守護で、徳川家康をモデルとした大黒天をお祀りするという特異な由来をもちますから、出世開運のみならず天下泰平も祈念したいところです。真言は「オン・マカキャラヤ・ソワカ」です。

     さて、コロナ退治巡礼もこちらがゴール。最後にやっておきたいシメの行事です。
     すでに、大黒堂の前に異様な存在感を放つ金ぴかオブジェがおられますね。先ほどもお会いした薬師如来ですね。 ここで、真言「オン コロコロセンダリマトウギソワカ」を唱えながら、体の良くないところに金箔(500円で授与)を貼り、祈願しましょう。

    ④大圓寺 金箔薬師(参考写真)

     まあ、まじないっちゃあ、まじないです。
     でもこうやってお薬師さんを輝かせれば、その威光は増しますよね。重要なことは、金箔を奉納喜捨することでホトケと結縁した実感を得ることです。

     あなたは独りじゃない。
     お薬師さん、獏王さん、蛸薬師さん(薬師かぶりは気にしない)、元三大師さん、お不動さんとも結縁しました。心強いじゃないですか。守護神つけすぎて荷が重いぐらいです(苦笑)。そんなわけで、目黒でホトケさんと濃厚接触……もとい悪疫退散巡礼を終了致します。お疲れ様でした。
    (文=本田不二雄・神仏探偵)

    石原まこちん

    漫画家、都市伝説ウォッチャー。代表作「THE 3名様」のスタイルで「キン肉マン」のスピンオフ「THE超人様」、CIAが主役の「陰謀論THE3名様Q」などに世界を広げる。「ムー」で4コマ漫画「オカルとおさん」を連載中。

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