この世に存在しない異界駅「きさらぎ駅」と現代の神隠し/朝里樹
17年前にネットの住人をざわつかせた都市伝説「きさらぎ駅」が、いま、メディアで再び脚光を浴びている。怪奇愛好家の朝里樹氏がその魅力を考察した!
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大阪の博物館で開催中の「異界」にまつわる企画展に、ふしぎな体験談が続々と集まっているとの情報が……!
現在、大阪歴史博物館(大阪市)で特別企画展「異界彷徨—怪異・祈り・生と死—」が開催されている。
人々が古くから意識し続けてきた「異界」という場所。そこは人間が暮らしているこの場所とは異なるもうひとつの世界であり、天変地異や疫病といった人知の及ばない現象は、神や仏、あるいは天狗、妖怪といった「異界」に属するモノたちによって引き起こされるのだと考えられてきた。
生きるなかで襲われるさまざまな苦しみから逃れるため、そして死の恐怖をやわらげるために、人間は「異界」を想像し、さまざまな祭祀や民俗行事をおこなってきたのだ。
「異界彷徨」展では、祈り・祈願にかかわる民俗資料や、祭祀具やお墓の副葬品といった考古資料、そして古来の他界観をうかがい知ることのできる歴史資料、さらには神仏や妖怪の描かれた絵画などなど、「異界」にまつわるあらゆるジャンルの資料が網羅的に展示されている。
科学が発達した世界にくらす私たち現代人であっても、生きるなかで「異界」を意識する瞬間は必ず訪れるもの。本展は、人間にとっての「異界」とは? との重厚なテーマを多角的に考えることのできる貴重な場となっているのだ。
怪談や「呪物」がブームとなって久しい昨今、ぜひ観ておきたい企画展だ。
さて、そんな「異界彷徨」展では、来館者に異界にまつわるイメージや体験を書き残してもらう「異界投稿」という企画が実施されているのだが、ここに多数の「異界」体験、不思議なできごとの体験談が寄せられているという情報がとびこんできた。
企画展を担当する学芸員の俵さんによると、4月28日の同展開始から5月上旬までの時点で、集まった投稿はすでに100件近く、今後も増える見込みだという。
もともとこの投稿は、「最近どんなお祈りをしたか」あるいは「『異界』といったらどんなことを想像するか」など、現代人の「異界」にまつわる意識を知りたいという企画意図ではじめられたものだったが、フタをあけるとまさに不思議としかいいようのない体験談が少なからずあり、博物館側でも驚いたとか。
(俵さん)「『異界投稿』は、異界にまつわる話ならどんなことでも投稿してもらっていいというイメージではじめた企画です。なまえも『異界彷徨』にかけて『異界投稿』としたもので、「職場が異界や!」といったネタ的な投稿が多くなるのかなと思っていました。
ところが実際に書かれたものをみると、想像以上に多くの人がいわゆる神秘的な体験を投稿してくれていることに驚きました。
たとえば、家のなかで『まっくろくろすけ』を見たとか、羽の生えた天狗をみたことがあるとか、なかにはこの企画展を鑑賞中に、目の前の解説パネルが横にスライドするようなありえない動き方をした、というリアルタイムの不思議な体験を書いてくださった方もいました」
企画展の現場で怪現象に遭遇した人がいたとは……! 俵さんが個人的に印象深かった投稿としては、以下のようなものもあったという。
「とある日本海側の砂浜で車が動かなくなってしまい、友人ふたりとレッカーサービスを呼ぶことに。無事に車が動き、サービスの方にお礼を伝えていると、その方がひとこと、『あれ、もうひとりいらっしゃいましたよね?』ーー自分たち以外にはひとけもない夕方の砂浜だったので怖かった」(投稿をもとに概要を再編)
「異界」とは、日々の生活のなかに顔をのぞかせる、ごく身近に潜んでいるもの。そうした「異界」との交流はこの現代社会でも続いているのだーーというのが、「異界彷徨」展のテーマのひとつでもある。
投稿に寄せられたリアルタイムの声は、まさに「令和の民俗資料」として今後価値を持っていくのかもしれない。怪談イベントやテレビ番組などではなく、博物館の企画展に寄せられた投稿だというのも興味深いところだ。
記入用紙が絵馬型のデザインになっていることから「異界投稿」の展示パネルは「絵馬堂」と呼ばれているそうで、博物館では今後「絵馬堂」を増設してより多くの投稿をみてもらえるよう計画しているという。
これから6月26日の会期終了までに、どれだけの「異界」情報が集まるのだろうか。
特別企画展 「異界彷徨ー怪異・祈り・生と死ー」
会場:大阪歴史博物館 6階特別展示室(大阪市中央区)
会期:6月26日(月)まで/火曜日休館
料金:大人600円、高校・大学生400円
詳細は公式サイトにて https://ikai-houkou.com/
webムー編集部
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