<読者投稿>金色の仏のお陰で三途の川を渡れず、命拾いした私

イラストレーション=不二本蒼生

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    島岡 準/新潟県

     これは36歳のときのことである。
     それまでの仕事の激務と転職したての気苦労が重なり、体調を崩してしまった。
     職場で就業中、熱があるため早退したいと申しでたところ、当時の上司から叱責されたことを今でも鮮明に覚えている。
     ふらふら状態で事務所を出て、どうにか駐車場までたどりつき、運転して自宅へ帰ろうとしたとたん、車の中で意識を失いかけた。
     それでもやっとの思いで運転し、なんとかバイパスに乗ったものの、中央の白線が二重にも三重にも見える。かなり危険な状態で運転していたことだろう。

     帰宅して熱を測ったところ、なんと42 度もあった。
     同居する父親にお願いし、かかりつけのクリニックまで連れていってもらったのだが、ついていないことにあいにくの休診日。
     仕方なく行ったことのない別のクリニックへ飛びこんだ。
     ひとけのない診察室に入るとすぐに診察が始まり、結果が出るのは異様に早かった。
    「風邪ですね。薬を飲んで休んでください」
     ロクに診察もせずに医者はそういいはなった。
    “これほどまでに具合が悪いのに、本当に風邪程度なのかな。まさかヤブ医者ではないだろうな”
     私はそのときじつに嫌な予感がした。命の危機というのか、不運の連鎖というのか……。
     風邪とはとうてい思えないほど胸が苦しく、息が思うようにできない。自分は本当に大丈夫なのだろうか。不安でたまらない。

     異変はその夜に起きた。朦朧とする意識の中で異様な風景を目にすることになったのだ。
     真っ赤な空の下、緩やかに流れる川に引きよせられ、流れるようにして私は歩いていた。
     いよいよ岸辺までたどりついた私は、川を渡ろうとする。その川ははたして三途の川なのだろうか。私はまるで幻覚の世界を漂っているようだった。
     意識が途絶えようとしたその瞬間、頭上に金色の放射線状の光が出現し、突如、目が覚めた。
     その刹那、眼前に次から次へと金色に輝く仏様が現れ、1体ずつ左右の順に、サッサ、サッサと累々と並びはじめた。そうして最終的には川を渡るための道を塞いでしまったのだ。
     その数たるや100体、いや1000体、いや万体にも及ぶほどの膨大な数であった。
     どれほどの間、繰りかえされただろうか。あっという間のようでもあり、永劫続けられているようでもあり、そこには時間が存在していなかったように思う。まるで黄泉へと向かうべき道を力業で封じこめているようであった。

     意識が完全に戻っていた。つまり私は九死に一生を得たのである。
     その後、一睡もできぬまま、翌朝、私は急患として市内の病院へ担ぎこまれ、酸素ボンベのお世話になった。肺炎が重症化していたのだ。本当に危ないところだった。信仰心の希薄な私が仏による救済を体現した。
     三途の川を渡ることなく命拾いした私は、この日以来、生かさせていただいていると、日々、感謝せずにはいられない。

    (本投稿は月刊『ムー』2026年10月号より転載したものです)

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